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82話

今年初めての更新です。

 ラーリの町に着いた。


 俺は町に入ってからピリピリとした妖気みたいなものを肌で感じた。それはシェリアも同じだったようで俺の腰に回した腕に力がこもる。


「……エリック様」


「……ああ。気がついたか。シェリア」


「強い妖気を感じますわ。月光剣もしきりと震えていますの」


 やはりなと思った。シェリアはそれきり喋らなくなる。仕方ないと考えながら馬を進めたのだった。


 ラーリの町から北側に魔物の住まう泉があるとある老人に教えてもらう。なんでもそこから時折、大型の魔物が出没するらしい。俺や他のメンバーで確認をしに行く。


「……確か。北側はこっちだったな」


「そうらしいですね。エリック様。気をつけてください」


「わかった。皆も心してくれ」


 俺が呼びかけると騎士団の第一部隊やメンバー達から一斉に「はい!」と返答があった。驚きながらもテクテクと歩き出す。北側に近づくにつれて妖気というより瘴気が濃くなっていた。


「……ふむ。だいぶ、瘴気が強いな」


「ええ。なんというか嫌な感じです」


「シェリア。シンディー様の所に行ってくれ。何かいる」


 俺が低い声で言うとシェリアは黙って頷く。ゆっくりと後ろにいたシンディー様やフィーラ公爵の元に行った。代わりにジュリアスやラウルが来る。


「……確かに。何かいるな」


「ああ。ジュリやラウルも気をつけろ」


「……御意に」


 3人して頷き合うと鞘から剣を抜いた。俺は陽光剣に神力を込める。それが終わると同時に黒い靄の向こうからズシンズシンと大きな足音がした。


『……ニンゲンドモメ。トウトウ、ココマデキタカ』


 現れたのは巨大な石像だ。が、纏う空気が禍々しい。魔物の1種らしいな。


「……エリック。あれはストーンゴーレムだ。物理攻撃は効かんぞ」


「マジかよ。仕方ない。アイスバーン!」


「えっ。いきなり魔法攻撃ですか?!」


 ジュリアスが驚くのも構わずに氷の中級魔法を放った。割と効果があったのか石像――ストーンゴーレムの足元が凍りつく。


『……クッ。ニンゲンメッ!!』


 奴が悔しげに叫びながら腕を振り回す。が、足が動かないのでこちらにはダメージがない。俺はラウルやジュリアスに目配せをした。


「……食らえ。スノーブリザード!!」


「……ダイヤモンドダスト!!」


『クッ!』


 2人が同時に氷の上級、中級魔法を放った。前者がラウル、後者がジュリアスだ。ストーンゴーレムはカッチカチに凍りついてしまった。よし。とどめにシェリアと必殺技を決めないとな。そう思いながらシンディー様の元に行く。


「……あら。エリック様。シェリアに用がありますのね?」


「はい。そうです」


「シェリア。行きなさい。お前の出番よ」


 シンディー様が言うとシェリアが後ろから出てきた。俺が頷くとシェリアも表情を引き締める。互いに近づき、手を繋いだ。ストーンゴーレムに一歩ずつ近寄った。すぐ前まで来たら陽光剣の呪文を唱える。


「「我、光と月に祈らむ。かのストーンゴーレムを滅せよ!!」」


 シェリアとしっかり手を握り合った。俺はそうした上で片手で彼女の頰に触れる。ぐいと顔を寄せて急いでキスをした。間近に見えるシェリアは目を大きく見開いていたが。俺達からまばゆい光が迸りストーンゴーレムに降り注ぐ。

 ゴォーッと勢いよく燃え盛る音がして敵が消え去った。

……と思ったらさらに瘴気が強まったような気がする。俺はキスをやめるとシェリアの身体を抱きすくめながら大声をあげた。


「……皆。気をつけろ。スタンピードが起こるぞ!!」


 そう叫ぶと同時に無詠唱で結界を展開する。他の連中も同様に素早く対応していた。途端に大量の魔物の群れが奥から出てきた。俺はシェリアを守りながらも結界を一時的に解く。


「かの者を滅せよ。ファイアウォール!!」


 火魔法の中級魔術で辺りの魔物を焼き払う。悲鳴をあげる間もなく魔物が跡形もなく消える。だが、また魔物の大群が押し寄せてきた。切りがない。すると俺とシェリアの身体が宙に浮く。頭の中に声が響いた。


『……我が光の神子。魔物が湧く泉の事は知っているかや?』


「……アタラ神ですか。知ってはいますが」


『なら。そこはこの靄の奥にある。泉を月の聖女と共に封じるのじゃ。さすれば、スタンピードは収まる』


「成程。教えていただき、ありがとうございます」


『礼はいいぞえ。代わりに急いでおくれ。泉まではわらわの力で送る故』


 俺は「わかりました」と頷く。アタラ神の声は聞こえなくなる。代わりに俺とシェリアは宙を浮いたまま、靄の中を進む。要は空を飛んでいるのだが。シェリアは高い所は怖いのか震えて俺にしがみついた。それでも泉まで容赦なく進んでいく。靄が晴れてこんこんと黒い水が湧き出る泉が現れた。どうやらここが魔力の泉らしい。

 ふわりと俺とシェリアはその近くに舞い降りた。


『……封じ方を教える。まずは神子や聖女の剣を泉に突き立てよ。そして柄を握ったまま、陽月華の呪文を唱えるのじゃ。そうしたら封印ができる』


「わかりました。聖女にも伝えます」


『……そうしておくれ。わらわも健闘を祈っておるからの』


 大きく頷くとアタラ神の声はまたしなくなった。俺はシェリアに手短に説明する。そうして言われたように互いに剣を鞘から抜く。黒い泉に突き立てる。柄を握ったままで再び手を繋いだ。陽月華の呪文を唱えた。


「「美しき炎よ。かの者らを封じ給え!!」」


 すると二振りの剣や俺達の身体から金や銀、白と3色の美しく眩い光が迸る。辺りを明るく照らした。眩しくて目を閉じた。



挿絵(By みてみん)


 相互ユーザーさんのひだまりのねこ様に描いていただきました。ラウルになります。

 

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