表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

80/118

77話

 シェリアのためにと厨房を借りて作った経口補水液を持って自室に戻った。


 応接間や寝室はメイド達が走り回っている。てんてこ舞いの大騒ぎと言えるだろう。指示を出していたリアナがすぐに気づいてこちらにやってきた。


「……殿下。戻っていらしたのですね。ケイコウホスイエキは出来ましたか?」


「ああ。ちゃんと作って持ってきた。今はジュリアスに持ってもらっているんだが」


「そうですか。ジュリアス様、ありがとうございます」


「……いえ。恐縮です」


「では。そちらのトレーをお貸しください」


「はい。お願いします」


 ジュリアスからリアナはトレーを受け取った。急ぎ足で寝室へ行く。俺も後を付いていった。ジュリアスは廊下へと出たらしい。パタンとドアが閉まる音が聞こえた。寝室に入ると側にメイドの1人がいる。ベッドに俺は近づいた。リアナはサイドテーブルの上にトレーを置く。


「……シェリア様。殿下が果実水を持ってきてくださいましたよ」


「……かじつすい?」


「はい。お飲みになりますか?」


「のみたい」


「ではコップに入れますね。ちょっとお待ちください」


 リアナがサイドテーブルにある水差しからコップに経口補水液を注ぐ。半分くらいまでそうすると他のメイドに目配せをする。メイドは頷いてすぐにベッドのすぐ近くまでやってきた。シェリアの半身を起き上がりやすいように手助けをする。上半身を起こしたシェリアにリアナがコップを手渡す。まだ、シェリアは頭がぼうとしているらしい。目がとろんとしてしまっている。それでもゆっくりとコップを口元に持っていき、中身を飲み始めた。が、ちょっと眉をしかめる。


「……すっぱいわ」


「……悪い。レモン汁を入れ過ぎたかも」


「……ごめんなさい。ちゃんとのみます」


 俺が謝るとシェリアは涙ぐむ。謝りながらまた飲んだ。味についてはやはり酸っぱいのか眉をしかめたままだったが。喉は渇いていたらしくコップ半分程をゆっくりではあっても飲み干してしまう。よく見たら枕の上に氷のうが置かれていた。当たり前だが熱を下げるには効果的だ。その後、スープもメイドが持ってきてくれてシェリアに勧めたのだった。


 半日が過ぎたが。まだシェリアの熱が下がらない。額に触れて確かめるも若干下がったくらいだし。医師にも来てもらって診察をしてもらった。


『……これは。風邪ですね。今まで無理をなさったのもあるでしょう。風邪薬と中級ポーション、解熱剤を出しておきますので。今日から3、4日間くらいは安静になさってください』


 医師(宮廷侍医)はそう言って3種類の薬を処方してくれた。シェリアに薬を飲ませて様子を見ていたが。リアナの勧めで解熱剤も飲んでくれと言ってみた。渋々、飲んでくれたが。思いっきり苦そうな表情をしていた。

 シェリアは眠たくなってきたのか解熱剤を飲んで1時間後には寝ていた。リアナ達が汗を拭いたり着替えをこまめにしてくれたりと甲斐甲斐しく世話をしていた。

 俺も授業や武芸の稽古などの合間に様子を見に行ったし。こうして3日が過ぎていた。


「……ふむ。すっかり熱も下がりましたね。お薬も飲みきったとか。もう大丈夫ですよ」


「ありがとうございます。ライム先生」


「いえいえ。お礼は王子におっしゃってください。本当に頑張っておられましたから」


 医師――ライム先生は30代半ばくらいの穏やかな男性だ。灰色の髪に同色の瞳の外見だが。医師としての腕は確かな人なんだよな。


「王子。シェリア嬢が無事に回復なさって良かったですよ。3日前は大変でしたからね」


「……そうですね。ライム先生の診断のおかげでもありますが」


「私はお薬を出しただけです。では。また何かあったらお呼びください。失礼します」


 俺はシェリアと共にお辞儀をした。ライム先生はにこりと笑いながら寝室を去っていった。


 シェリアが風邪をひいてから5日が経っていた。だいぶ体調は良くなり剣術や聖女としての修行に復帰している。俺もほっと胸を撫で下ろす。既に昨日にフィーラ公爵邸へ帰っていた。ご両親やトーマス兄貴は王宮にシェリアが滞在していた間、気が気じゃなかったらしい。なので帰宅した際は父君や兄貴は俺に怒り母君はおもむろに抱きしめてきて泣いていたとクォンから教えてもらった。まあ、後でご両親には俺から説明と謝罪を述べた手紙を送ったが。シェリアにも手紙とちょっとしたプレゼントを贈った。ちなみに彼女は意外と可愛い小物が好きだから白猫と黒猫が寄り添いあった置物をチョイスしてみたが。

 後でシェリアから「ありがとうございます。今はお部屋に飾ってあります」とお礼の言葉が手紙にあった。嬉しくて飛び上がったのは言うまでもない。


「……エリック。シェリア殿が風邪をひいたって本当か?」


「ああ。つい、1週間くらい前にな」


 王宮の俺の私室にてラウルと今後の相談をしている中でそう訊ねられた。頷くとラウルはふむと考え込んだ。


「トーマスから聞いてはいたんだが。大丈夫だったのか?」


「……実は王宮に風邪が治るまで滞在してもらったんだ。今はすっかり良くなったから自宅に戻ってもらったがな」


「ふうん。ならひとまずは安心だな。エリックには礼を言うよ。トーマスからも頼まれてたんだ」


 ラウルは珍しく俺に軽く頭を下げた。驚いたが平静を装う。


「礼には及ばないよ。兄貴には今後は気をつけてやってくれと伝えてもらえたら有り難い」


「わかった。伝えておくよ」


 ラウルは了承してくれる。また相談を再開したのだった。挿絵(By みてみん)

本編とは関係ないですが。ハロウィンの時期なのでそれっぽいイラストをおまけに載せてみます。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ