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74話

   新年が明けて俺は7歳から8歳になった。


 シェリアやオズワルドも同様だ。親父は28歳、お袋が25歳になったらしい。ウィリアムス師から聞いた。同母弟であるエレンは7歳だ。

 異母弟であるケビンが6歳、末の異母妹のシュリナは5歳だとか。また、護衛であるジュリアスは26歳でエルが28歳、クォンが16歳とも聞いた。


『……早いわねえ。ラウル君やトーマス君も11歳かあ』


「……久しぶりだな。矢恵さん」


『本当よね。最近はずっとエリック君の中で寝ていたわ』


 矢恵さんはそう言いながら苦笑いした。俺はリアナが淹れてくれていたミルクティーを口に含んだ。


「矢恵さん。何か用があって出てきたんじゃないのか?」


『実はそうなのよ。エリック君、後少ししたら。スタンピードが起きるわ。それに備えておいてくれって太陽神や月光神がおっしゃっているの』


「……え。スタンピードだって!?」


 俺はあまりの事にミルクティーが入ったカップを落としそうになった。慌ててソーサーに戻す。カチャンと思いの外大きな音が部屋に響いた。


『そうよ。後1ヶ月もしたら。先代聖女が作った結界に大きな綻びができる。それは徐々に国中に広がっていくわ。シェリアちゃんと一緒にフォルド国内の結界を張り直しに行かないとダメね』


「マジかよ。シェリアも一緒だと。兄貴やフィーラ公爵、シンディー様にも同行を頼むか」


『……その方がいいわね。後は。ラウル君達にも同行を頼んでみたら?』


「一応は言ってみるよ。ジュリアス達にも伝えておかないとな」


『うん。クォン君にもね』


 矢恵さんに言われてすぐに飲み終えた後のカップをソーサーに置き、ソファーから立ち上がる。矢恵さんは俺の中に戻ると『くれぐれも気をつけてね』と言う。頷くとリアナを呼んだのだった。


 クォンにジュリアス、エルがやってきた。俺は3人が来るとすぐに防音に外敵排除の魔法を無詠唱でかける。エルが念の為にと認識除害の魔法もかけた。

 俺は3人にソファーを勧める。そうしたらジュリアスがリアナが置いていったティーセットが乗ったワゴンに近づく。意外にも手慣れた様子でお茶の用意を始めた。


「……エル、クォン。リアナから聞いたと思うが。大事な話があってな。それで呼んだんだ」


「……はあ。私達に大事な話ですか」


「実は今日に矢恵さんが出てきてな。彼女はこう言った。『後1ヶ月もしたらスタンピードが起こる』とな。だからシェリアにも同行してもらう必要がある」


 スタンピード――魔物の大量発生が起こる。それを聞いたエルとクォンは厳しい表情になった。ジュリアスもお茶の用意をしていた手を一時的に止める。


「……成程。それでまずは我らを呼んだのですね。確かにその方が安全です」


「まあ、そうだな。後ですぐに陛下にも知らせようと思う。皆もそのつもりでいてくれ」


「「御意に」」


 エルとクォンが座ったままで軽く頭を下げた。俺は鷹揚に頷く。そうしたらジュリアスがトレーを両手で持ってこちらに戻ってくる。


「……殿下。エルにクォンも。お茶でも飲みながら話し合いましょう」


「ジュリアスさん。俺達にのんびり茶を飲む暇があるわけないだろうに」


「それでもだよ。殿下、矢恵殿が出てこられたらお疲れでしょう。まずはハーブティーでも召し上がって下さい」


「……ありがとよ。そうさせてもらう」


「殿下まで。わかったよ。お茶に付き合いますかね」


 クォンは仕方ないと言わんばかりにため息をつく。エルは苦笑している。ジュリアスも一人掛けのソファーに落ち着いた。そうした上で話を詰めたのだった。


 その後、ジュリアスは親父――陛下に詳しい話をするために部屋を出ていく。エルも仕事に戻った。クォンだけが残る。


「……殿下。お嬢の事だがな」


「ああ。どうした?」


「最近はお袋さんに聖魔術や治癒関連の魔法を習っているらしいな。兄貴さんに相変わらず、体術や剣術を習っているし」


 成程と頷いた。クォンは使い魔に見させた事だがなと付け加える。


「お嬢の神力。かなり以前よりも強まっているみたいだ。殿下もだがな」


「ふうむ。まあ、国のためにはその方がいいんだが」


「確かにな。けど。お嬢が無理をしないか心配だ」


 クォンはそう言うと両腕を組んだ。考え込むような素振りで驚く。普段では滅多に見せないのもあるが。


「殿下。スタンピードが起こったら絶対に太陽剣を離すなよ。お嬢を守るためにも」


「ああ。忠告ありがとよ。肝に銘じとく」


「そのつもりでいてくれ。でないと俺達だけじゃ守りきれない」


 クォンがいつになく真面目に言うので頷いた。こいつの勘は案外当たる。それは3歳からの付き合いがあるからわかっていた。


「確かにな。クォンの忠告は本当に心しておくよ」


「……ああ。じゃあ、そろそろ戻るぜ」


「……うん。ゆっくり休んでくれ」


 そう言うとクォンはにっと笑った。頭をくしゃくしゃと撫でられる。一通りしてからクォンは部屋を去っていった。俺は見送った。

 少し経ってからリアナが戻ってきて湯浴みの支度をしてもらう。ちょっと疲れが出たのかほうと息をついたのだった。



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