67話
翌朝、ちょっと寝不足気味で目が覚めた。
シェリアと同じテントの中で一晩を過ごしちまったよ。まずいぞ。背後からまたあの冷気を感じる。フ、フィーラ公爵だ。ぎぎと音を立てそうな感じで振り返った。や、やばい。
「……シェリア。起きなさい。朝だぞ」
「……ん。父様?」
テントの入口が開けられてフィーラ公爵の渋い声が耳に届いた。シェリアが瞼を開けてもそもそと半身を起こす。
「で・ん・か。シェリアと一緒に休むとは。良い度胸をしていますね」
「……こ、公爵。おはようございます」
「ええ。おはようございます。シェリア、朝食ができているから。来なさい」
公爵が声をかけるとシェリアは頷いた。寝袋から出て片付けをする。そうした後で公爵と一緒に行ってしまう。うー、俺の阿呆。なんでシェリアが寝た後にすぐテントを出なかったんだよ〜。後悔しても先に立たず。仕方なく毛布を片付けたのだった。
近くの泉で顔を洗ったりして俺は皆のいる所に向かう。だが、フィーラ公爵の視線が痛い。シンディー様も。シェリアはちょっと申し訳なさそうだ。親父は苦笑いだが。気を使ったのか、ジュリアスがこちらにやってきた。
「……殿下。今日は雑穀粥です。乾パンもありますよ」
「……ありがとよ。早く王城に帰りてえよ」
「もうちょっとの我慢ですよ。ブリザードキメラを倒せたらすぐに帰りましょう」
ジュリアスが慰めてくれた。俺は素直に良い奴だと思う。エルも良い奴だが。いかんせん、一癖はある。クォンもだ。その中でジュリアスは真っ当だと言える。オズワルドの兄貴が彼で良かった。
「……あの。殿下?」
「いや。何でもない。それより粥を貸してくれ。腹減った」
「あ、ああ。わかりました」
ジュリアスから雑穀粥を受け取り木匙も貸してもらう。一口食べるが。あー、今日もまずい。けどもう一杯と言える味だ。薄っすらと塩味だが。我慢して食べた。乾パンも同様だ。十分もしない内に雑穀粥の器は空になった。乾パンも完食したのだった。
朝食が終わると今度は片付けがある。俺はエルや親父と3人で鍋を洗ったり焚き火の後始末をした。皆の食器を近くの川でざざっと洗い、布で水気を拭く。そうした上で麻袋に入れた。シンディー様やシェリアは女性なので川で顔を洗ったりしに行ったらしい。それを考えながらもテントに行き、自分の荷物の整理をした。
「……よし。もういいな」
一人で呟きながらも麻袋の紐をきゅっと締めた。肩に担いで出るとフィーラ公爵と親父が話し合いをしているようだ。ジュリアスとエル、クォンも近くで何事かを話しているらしい。5人ともに真面目な表情だ。
「……陛下。殿下とシェリアの奥義についてなんですが」
「……ああ。エリック達が使う陽光剣だな」
「はい。私が思うに殿下は良いのですが。シェリアが恥ずかしがるのではと心配でして」
「それは私もわかる。公爵が言いたいのは聖女と神子が互いに触れ合わないと。発動しないから困るという事だろう」
「そうです。まあ、シェリアは吹っ切れてはいるようですが。それでも公衆の面前でするのはかなり勇気がいるでしょうね」
フィーラ公爵はそう言うとため息をついた。父としてかなり複雑らしい。そりゃそうだろうな。自分としては気持ちはわからなくもない。俺も娘がいたら。または妹を嫁にやるとなったら複雑になるだろうな。そう思いながらラウルやトーマス兄貴の元に行った。
ラウルとトーマス兄貴は短剣の手入れをしていた。近くではオズワルドとウィリー、カーティスが荷物の整理をしている。
「……あ。エリックか。どうしたんだ?」
「……よう。シェリアとシンディー様はまだ戻って来ないなと思ってな」
「ああ。母上とシェリアなら沐浴中だろう。2人とも湯浴みをしたいとか言っていたからな」
俺とラウルはトーマス兄貴の爆弾発言に固まった。も、沐浴だって?!
「……ト、トーマス。いくら何でもそれは開け透けすぎるだろう」
「悪い悪い。ちょっと母上とシェリアの話が偶然聞こえてさ。それでわかっただけだよ」
心なしかラウルの顔や耳が赤い。俺も同じようになっているだろう。聞こえたのかオズワルド達もこちらを見ていた。
「あーにーき。オズワルド達にも聞こえているだろう。もうちょっと声を小さめにしてくれ」
「わかったよ。けどエリック君」
「何だよ」
「……ちょっと気になりはしないか。もし良かったら案内するぜ」
「……兄貴。んな事したら俺がシンディー様に秒殺されるぞ。覗きは犯罪だからな」
そう言うと兄貴はにやりと笑った。近くのラウルも兄貴を睨んでいる。
「ト・マ・ー・ス。お前はアホか」
「何だよー。ラウルも気にならねーのかよ」
「……なるわけないだろ。俺が覗きなんてしていたら母上に殴られる」
俺はなる程と思った。スズコ様が聞いたら兄貴は本気でグーで殴られるな。俺やラウルも。いやー、シンディー様にもタコ殴りされそうだ。んなアホな事を考えていたら。ザクザクと足音が聞こえた。振り返ったら呆れたような表情をしたシンディー様とシェリアが佇んでいたのだった。




