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8周年記念 エリック王子と愉快な仲間たち

  俺が前世の記憶を思い出してから早くも4年が過ぎた。


  とりあえず、ウェルズ先生の課題をやっていたら。なんでか、あり得ない人がやってきた。ラウルのお袋さんのスズコ様である。リアナも驚いているらしく慌てていた。


「……久しぶりやな。エリック君」


「スズコ様?!」


 スズコ様はにっこりと笑う。俺は目を開いた。


「修道院のマザーシスターには許可をもらっとるんや。やから来れたんやけどな」


「そうなんですか。ラウルとは会えているんですか?」


「うん。月に三回くらいは会えてるよ。ラウルも背が高なって。もう私もすぐに追い越されそうやわ」 


 スズコ様は嬉しそうに話す。本当にラウルが可愛くてしょうがないという表情だ。


「……エリック君。今日から半月くらいは王城におるから。遊びに来てな」


「はい。また、行かせていただきますね」


 頷くとスズコ様は俺の頭を撫でた。女性の力なので痛くはないが。ちょっと微妙な心境だ。


「う〜ん。やっぱりラウルもええんやけど。エリック君の髪質が一番やね」


「……あの。俺も一応は男なんですが」


「それはわかっとるよ。けどエリック君の髪は硬過ぎず柔らか過ぎずで。ちょうどええんや」


 俺はそれには無言でいた。スズコ様、ショタコンの気があるな。そう思っているとスズコ様は俺の頭から手を離した。


「スズコ様?」


「……エリック君。ラウルやシェリアちゃんは元気にしとる?」


「……はい。二人とも病気はしてないようですよ」


 頷いて答えるとスズコ様は哀しげに笑った。


「やったらええんや。ちょっと聞いてみたくなっただけやから。気にせんでええよ」


「……はあ」


 スズコ様は俺を抱きしめてまた頭を撫でてくる。けど文句は言わずに大人しくしていた。その後、気がすんだのかスズコ様は客室に戻って行ったのだった。


 翌日、俺はラウルとシェリアちゃんに手紙でスズコ様が王城に滞在していると知らせた。ついでにオズワルドとウィリー、カーティスにもだ。アンジュにも言ったら「会いたい」と言ってきた。こうして皆でスズコ様に会いに行く事になったのだった。


 昼頃に王城の廊下にて俺とラウル、シェリアちゃんにオズワルド、ウィリー、カーティス、アンジュ、トーマス兄貴の八人が揃った。アンジュとシェリアちゃん以外は男ばかりだ。けどオズワルドはアンジュの事が気になるらしい。ちょっと顔が赤い。


「……やあ。久しぶりだな。エリック」


「ああ。久しぶり。叔父上」


「母上が王城に来ていると手紙にあったが。本当なのか?」


「本当だよ。昨日にいらしてね」


「そうか。世話をかけたな」


 ラウルはそう言うと苦笑した。トーマス兄貴もへえと言っている。


「……やるな。スズコ様」


「兄貴。スズコ様はちゃんと修道院のお偉いさんに許可はもらったって言ってたぞ」


「ふうん。マザーシスターからねえ。元王妃に甘々だな。普通は外に出してもらえねーだろ」


 兄貴はニヤッと笑いながら言った。おい。笑い方が悪役みてーだぞ。そう内心で突っ込む。


「……殿下。そろそろ行きましょうか」


「ん。そうだな」


 オズワルドが言ってきたので頷く。皆でぞろぞろとスズコ様の待つ客室へと行ったのだった。


「……あ。エリック君。来てくれたんやね!」


「はい。約束しましたから」


 そう言うとスズコ様は花が咲いたような笑みを浮かべた。こうして見ると三十代には見えないな。ましてや、十一歳になる息子がいるとは信じられない。若く見える。


「……ラウルにシェリアちゃん。久しぶりやねえ」


「……母上。久しぶりです」


 ラウルが言うとスズコ様は抱きしめようとした。けど寸ででラウルはにっこり笑顔でかわした。


「母上。エリック殿下やシェリア嬢達がおられるんです。我慢してください」


「いけずやわ。ちょっとぐらいええやん」


「駄目です」


 二人はしばし睨み合う。俺や他のメンバーは静観していた。シェリアちゃんはちょっと苦笑いしているが。


「ラウル様。それよりも早く中に入りましょう」


「……そうだな。オズワルド君の言う通りだ」


 オズワルドの勧めもあって俺達は部屋の中に入る事ができた。スズコ様は自分で九人分のお茶を淹れてくれる。ポットのお湯をカップに注ぐ。茶漉しに見た事のない茶葉を入れていた。それをカップに浸すと懐かしい香りが鼻腔にまで届く。


「スズコ様。これは緑茶ですか?」


「……そうや。東方の島国産のお茶っ葉が手に入ってな。一回、エリック君らに淹れたいと思ってたんやわ」


「そうなんですか。懐かしいですね」


 俺が言うとスズコ様は笑った。九人分の緑茶を淹れ終わると皆に振る舞う。俺とラウル、トーマス兄貴、シェリアちゃんは事情を知っているのでなる程と頷いた。オズワルドやウィリー、カーティス、アンジュは珍しそうにしている。茶器が全員に行き渡ると俺は手に取った。一口飲んだらすうと緑茶の香りが鼻を通っていった。少しの苦味とまろやかな甘みが口内に広がる。マジでうまい。


「……紅茶よりも爽やかな味ですわね」


「……はい。あたし、こんなに美味しいお茶を飲むのは初めてです」


 シェリアちゃんとアンジュが互いに感想を言い合っていた。ラウルと兄貴もゆっくりと味わいながら飲んでいるようだ。スズコ様はお口直しにと和菓子である羊かんとお大福も振る舞ってくれた。


「やっぱり和菓子はうまいなあ」


「ああ。このヨウカンは格別だ」


「エリック君もトーマス君も気に入ってくれたみたいやね」


 俺と兄貴が感想を言っていたらスズコ様は嬉しそうだ。その後、チョコ入りのたい焼きも食べさせてもらう。何でも今日はバレンタインデーをふと思い出したらしい。そこで手作りのチョコ入りのたい焼きを用意したとか。

 スズコ様にならって皆で「ハッピーバレンタイン!」と言っておいたのだった。

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