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58話

  俺が6歳になった年も秋になり冬を今は迎えていた。


  もう11月も終わり12月に入ったが。王城も新年に向けての準備で大わらわだ。俺もシェリアちゃんも特訓や勉学などで忙しくてろくに会えずにいた。オズワルドやジュリアス、エルも俺の護衛として。またクォンもシェリアちゃんの護衛や情報収集などで忙しそうだ。

  去年と同じように雪が降り積もる。シェリアちゃんとラウル、オズワルド、トーマス兄貴と5人で雪合戦をした。シェリアちゃんは紅一点なので見学に回ってもらった。俺とトーマス兄貴チームとでラウルとオズワルドチームに分かれてやり始める。

  プロの野球選手も顔負けの豪速球をラウルが繰り出してきた。たぶん、時速80キロ以上は出ているぞ。オズワルドも負けずに雪玉を投げてくる。オズワルドも豪速球といえた。

  トーマス兄貴は思った以上のすばしっこさで避けている。俺は魔法で雪壁を作って雪玉攻撃を防いだ。


「……エリック。障壁を雪で作るなんて卑怯だぞ!」


「あんたも豪速球で投げてるだろうが。シェリアちゃんに当たったらどうすんだよ!!」


  2人で言い合いを始めてしまうが。オズワルドとトーマス兄貴は「また始まった」と言わんばかりの表情だった。


「……なあ。オズ。あの2人って仲が悪いのかよ」


「僕にもそこまではわからないよ。けど何かっていうとケンカしているよな」


「ああ。ラウルがエリックをライバル視しているし」


「ラウル様はもしかするとシェリア嬢のことが気になっているのかな」


「俺もそれは思う。まあ、簡単には渡さんが」


  こそこそと2人は話しているが。聞こえてるぞ。俺は仕方ないと思い、雪玉を新しく作った。ラウルのいる方に投げてやった。


「……ラウル。今日こそはあんたに勝つ。というか、腹いせで嫌がらせすんのはやめろよな!」


「ふん。大人しくくれていたら俺だって嫌がらせはしてねえよ。お前が悪い!」


「なんだと。俺は来たるべき時が来たらって言ったよな?!」


「俺にとってはいつでも構わんけどな。トロトロしているお前を見ていたらイラッてくるんだよ!」


「だーかーら。何度言やあわかるんだよ。解消できるかも今はわからないんだ。待っていてくれとしか言いようがねえんだ!」


  売り言葉に買い言葉だ。シェリアちゃんも心配そうにこちらを見てくる。


「……エリック。待つというのは意外と苦行だとわからないようだな」


「俺だってわかっているよ。ただ、今は時期じゃないだけだ」


  2人して睨み合う。口ゲンカは平行線になっている。不意にトーマス兄貴がこちらに雪を踏みしめながらやってきた。


「……いい加減にしろ。ラウル」


「トーマス?」


「……エリック君が困ってるだろうが。というか、お前に簡単にはまだくれてやる気はないぞ」


  兄貴が告げた言葉にラウルは目を少し見開いた。そして考え込んだ。


「……そうか。トーマスはまだと言いたいんだな」


「ああ。お前は急ぎ過ぎなんだよ。シェリアが年頃になってからにしろ」


  はっきり、シェリアちゃんの名を言ったせいで本人もさすがにわかったらしい。顔を一気に赤らめる。


「……なっ。兄様?!」


「すまん。シェリア。エリック君からは事情は聞いているんだ。ラウルにお前をいつかは託すということもな」


「わたくしをラウル様に。エリック様からは聞いていましたけど」


  シェリアちゃんはちょっと困り顔だ。その彼女をラウルは見つめた。目は口ほどに物を言うとことわざにもあるが。


「……シェリアさん。俺はいつかはと思っている。ただ、こんなに早くに言う事になるとはな」


「……ラウル様」


  シェリアちゃんは余計に困った顔をする。ラウルもなんとも言えない表情だ。トーマス兄貴は俺に近づく。ぽんと肩に手を置かれた。


「どんまいだな。エリック君」


「……兄貴」


「……まあ。あんたがうちの妹を大事にしてくれているのは知っている。それもいつかはラウルに取って代わるんだな。けど妹はあんたを忘れないだろうよ」


  兄貴の温かい言葉に俺はちょっと泣きそうになった。これだからトーマス兄貴を嫌えないんだよ。


「兄貴。俺はシェリアちゃんの兄貴があんたで良かったと思ってる」


「ははっ。俺もあんたが妹の婚約者で良かったと思ってるぜ。ただ、解消しなけりゃならんのが残念だ」


  兄貴は笑いつつも俺の肩に置いた手で軽く叩いてくれる。まるで小さな幼子をあやすようだが。不思議と嫌じゃない。


「エリック君。シェリアを忘れないでやってくれ。時折は手紙くらいはくれよな」


「……兄貴にか?」


「まあな。あんたが元気にしているくらいは知らせてやるからさ」


  俺は兄貴に小さく「ありがとう」と礼を言う。兄貴は肩から手を離す。そして背中を押してくれた。


「……行ってこいよ」


「ああ。行ってくる」


  俺はシェリアちゃんとラウルの元へと向かう。にっこりと笑ってシェリアちゃんの近寄った。


「……シェリアちゃん。外にいたら寒いし。中に入ろうか」


「……ええ。そうですわね」


  思ったより素直にシェリアちゃんが頷いた。悔しそうにラウルが睨みつけてくる。今は譲るつもりはない。まだ、俺はシェリアちゃんを手放す気はないんだ。タイムリミットがあっても俺はこの子を忘れる事はないだろう。だって好きなのだから。その気持ちを込めてシェリアちゃんの手を握ったのだった。

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