50話
久しぶりの更新です。
俺はその後シェリアちゃんと一緒に陽月華や陽光剣を繰り出す練習を続けた。
最初は嫌がっていた彼女も国のために必要とわかってからは自分からやるようになっている。陽月華は手を繋ぎながら出せるようにはなった。それから肝心の太陽剣と月光剣だが。これは神殿の地下に封印--保管されていた。俺らはそれらの封印を解いて剣を入手しないといけない。神官長--爺さんからもそう言われていた。神子や聖女としての封印を解かれてから半月は経過していたのだった。
「……エリック様。今日はとうとう剣を取りに行く日ですわね」
「ああ。そうだな。よろしくな。シェリアちゃん」
2人してそう言いあう。付き添いのジュリアスとラウル、トーマス兄貴、オズワルドにカーティス、ウィリー、エルとクォン。総勢で10人だ。このメンバーで神殿の地下にある迷宮の奥を目指す。そのために地下迷宮に繋がる扉の前に皆で佇む。先頭には神官長である仙人爺さんがいる。爺さんは扉の封印を解くために祝詞を唱えた。
「……今、封印を解き給え。我、請い願わむ。かの者達、剣を受け取らむ!!」
そう唱え終わると扉はぎいっと重い音を立てながら開いた。さすがに神官の長なだけはある。感心しながら思うとシェリアちゃんが俺の手をぎゅっと握ってきた。それに頷く事で答えた。シェリアちゃんも不安らしい。
「扉の封印は解きましたぞ。これで地下迷宮に入れます」
「……ありがとうございます。神官長」
「……お礼には及びませぬ。健闘を祈っております。殿下」
爺さんは恭しく一礼をする。俺も頷いて応じた。他のメンバーも一礼をした。その後、ゆっくりと扉は開いて俺たちは地下へと向かったのだった。
地下迷宮には壁に等間隔で松明が灯されていた。おかげで進みやすい。エルとジュリアスが先頭でクォンが最後尾だ。他は子供ばかりで俺は大丈夫だろうかと不安になる。けど剣を取ってこない事には先は進まないのだ。仕方ないと歩きながら思った。
「……エリック様。何かいます」
「本当だな。いるな」
シェリアちゃんの言葉に頷いた。 ぎゃおおという怪獣みたいな雄叫びが聞こえた。まずい。魔物だ。ジュリアスとエル、クォンが無言で剣を鞘から抜く。クォンは専門が暗器なのだが。剣術の心得もあると以前に言っていた。ジュリアス達に劣らず、構え方は一丁前の騎士そのものだ。
「……殿下。こいつはキメラです!」
ジュリアスがそう大声で言い放つ。俺は剣の代わりに魔術をいつでも放てるように構えた。胸元から小さな杖も取り出す。が、魔物--キメラは口からビームを繰り出した。それが地下迷宮の壁に当たりパキパキと凍りつかせた。え。いわゆるポ○モンのオーロラビームかよ?!
「くっ。殿下、攻撃がこちらに来ます!!」
「……わかっ」
キメラのビームが俺に当たりピキピキッと足から凍りつく。針に刺されるような痛みと麻痺していく感覚にぶるっと体が震えた。
「……きゃあ!エリック様!!」
シェリアちゃんが半泣きで俺に近寄った。必死で回復魔法をかけようとする。けど俺は完全に頭まで凍りついた。そこで意識は途切れるのだった……。
わたくしは完全に凍ってしまったエリック様に泣きながら近寄る。その時、頭の中に不意に不思議な声が響いた。
『月の聖女。そなたは光の神子を助けたいのだな?』
「……はい」
『ならば。我に祈るのじゃ。我は太陽神アタラ。陽月華の呪文を教える故』
「陽月華の呪文ですか?」
『……美しき炎よ。我が敵を倒せと』
わたくしは必死でそれを声に乗せた。
「……美しき炎よ。我が敵、キメラを倒し給え!」
「……シェリア様!?」
ジュリアスさんの問う声が遠くに聞こえる。わたくしからごおっと黄色と橙色が混じった炎が巻き起こった。それはキメラに向かい、取り囲む。
『……ぎゃああ!!』
断末魔の悲鳴があがった。メラメラと炎はキメラを煉獄に引きずり込んだ。しばらく経ってキメラは跡形もなく消えた。わたくしはふらふらとエリック様に近づく。
「炎よ。かの者を癒し給え」
呪文としては滅茶苦茶だけど。今はエリック様の凍結をなんとかしたかった。炎とともに彼の頬に手を当てた。ひんやりと冷たさが伝わる。けれどしゅうと音がして氷が少しずつ溶けていく。全部溶けてしまうとわたくしはへたりこみそうになる。それでもエリック様の顔を両手で包み込んだ。気がついたら自分から接吻を彼の唇にしていた。無我夢中で自分の癒しの力を送り込んだ。
「……ん」
エリック様の声がして我に返った。わ、わたくしは何をしているの。けどエリック様の体から白と金の眩い光が立ち昇る。それはわたくしの体を包み込んだ。不思議と暖かくてエリック様に包み込まれている感じだった。エリック様はゆっくりと目を開けた。唇を離すと彼の綺麗な青の瞳がわたくしを捉えた。
「……シェリアちゃん?」
「エリック様。よかった。目が覚めたのね」
わたくしはへたり込んでしまった。エリック様は慌てて手を差し伸べてくれる。泣きながらそれを握りしめたのだった。




