48話
使い魔を放った後に少ししてシェリアちゃんと父君のフィーラ公爵が神殿にやってきた。
シェリアちゃんはいいとしてフィーラ公爵は珍しく慌てたような表情をしていた。兄のトーマス兄貴は母君のシンディ様と待機中らしい。そう公爵は神殿に俺たちと合流した後告げる。
「……殿下。シェリアが聖女だとは聞きました。しかも200年ぶりの月光の聖女だとか。殿下も200年ぶりの光の神子だと伺いました。我が家に代々伝わる言い伝えによると。月光の聖女と光の神子が持つ神剣があるそうです」
「神剣?」
「はい。この二振りの剣は聖女と神子が心とその身を触れ合わせる事により最大限の力を発揮できるとか。ですがその方法までは詳しくは伝わっていないようでして」
成る程と俺は頷いた。そんな神剣があったとはな。けどゲームでは出てこなかったぞ。200年ぶりと言うのも意外で驚きを隠せなかった。
「……ふむ。その神剣というのはもしや。太陽剣と月光剣の事でしょうかな?」
神官長が片眉を上げながら言った。けっこう伝説には詳しいのな。仙人爺さんは。失礼な事を考えつつも俺はへえと声を上げている。
「ええ。太陽剣と月光剣の力を合わせて発揮できるのが奥義の陽月華という技です。後、この二振りの剣はある方法で一つの剣に変化できる。ただ、その方法がちょっと過激です」
「ああ。それはそうでしょうな。まだ6歳の殿下とシェリア様には刺激が強すぎますのう」
なんのこっちゃと思った。奥義というのはわかったが。二振りの剣を一つに融合させるのも。でもその方法が過激ってどういう事だ?
「……殿下。とりあえず、礼拝堂に着きましたぞ。シェリア様の封印が解けたらお話致しましょう」
「……わかりました」
俺は頷いた。そうして礼拝堂に入った。礼拝堂には既に高位の神官が2人程いる。どうしてかと視線で問えば爺さんは苦笑した。
「シェリア様の封印の方が厄介なのです。だから高位の神官にも来てもらいました。ちなみに2人は女性ですぞ」
え。俺はまたしても驚いてしまう。この2人が女性だと?!
見えないぞ。どう見たって男に見える!!
「……では。シェリア様。この神官達の近くに行ってくだされ」
「……わかりました。よろしくお願いしますわ」
シェリアちゃんが挨拶すると神官2人も目礼する。こうしてシェリアちゃんは近くに行く。
「シェリア様。私の杖に触れてください」
シェリアちゃんは言われた通りに片方の神官の杖に触れた。短い木製の黒っぽい杖だ。
「……それでは行きますね。月光神たるルーシア神に請い願う。かの者、シェリア・ルーナ・フィーラ。月光の聖女たる者なり。今、封印を解き給え!!」
「……我も封印を解く旨願う者なり。ルーシア神よ、聞き入れ給え!!」
2人が祝詞を唱えると礼拝堂の床に巨大な魔法陣が白く浮かび上がる。眩く光を放ち、俺は目を開けていられなくて閉じてしまう。しばらくして俺は目を開ける。だが、目の前の光景に唖然とした。シェリアちゃんが石床の上にうつ伏せに倒れていたからだ。
「……シェリアちゃん!!」
慌てて駆け寄る。彼女の体を夢中で抱き起こしたが。瞼は固く閉じられていて顔色も青白い。胸は上下しているので息はある。どうやら封印を解かれた時の俺と同じように気を失ったらしい。父君のフィーラ公爵も心配そうにこちらにやってきた。
「……殿下。娘は」
「……大丈夫のようだ。気を失っているだけのようです」
「そうですか。それは良かった」
ほうと公爵も息をつく。俺はどうしたものかと思った。すぐに神官長が気づいたようだ。俺の護衛のエルを呼びに行ってくれた。エルは少し経ってからやってくる。
「殿下。シェリア様は?」
「気を失っているようでな。良ければ、公爵家の馬車まで運んでくれないか?」
「……わかりました。僕で良ければやりましょう」
ありがとよと言ってシェリアちゃんの事をエルに頼む。エルは慎重にシェリアちゃんを抱き上げると馬車まで運んでくれる。フィーラ公爵が「ありがとうございます」と緊張しながら言ってきた。俺は「これくらいは婚約者として当たり前です」と答えた。それでもまだ心配そうな公爵に医者に診せる事ともう帰るように言った。何度もお礼を言いながら公爵はシェリアちゃんを自分の膝の上に乗せて「失礼します」と告げて帰って行ったのだった。




