43話
この回にて5歳編は終わりです。
あれから、さらに1カ月が経った。
俺は剣術と魔術の腕を上げてレベルも5くらいにはなっていた。シェリアちゃんもすごく腕を上げている。
レベルは6くらいではないだろうか。神官長--爺さんも太鼓判を押していた。俺は感心したがちょっと複雑でもある。同い年の女の子に先を越されるなんてな。拗ねたくなったのはいうまでもない。
今日も神官長のしごきは続く。この爺さん、本当に魔術バカだ。俺に教えている時は楽しそうだし。剣術も本当に神官かよと言いたくなるくらいの腕前なのだ。俺は付いていくのに精一杯だった。
「……殿下。他の事を考える暇はないはずですぞ。シェリア様を見習って打ち込んでくだされ」
「わかってるよ。うるせえ爺さんだ」
「ほう。師に対して減らず口を叩けるとは。良い根性をしていますな」
爺さんの周りの気温が低くなったような気がした。しまったと思った時にはもう遅い。爺さんは目をすっと細めるといきなり剣を俺の喉元に突きつけた。
「殿下。これはわしに対しての挑戦状と受け取りますぞ。覚悟はできているんでしょうな?」
「……うう。すみませんでした。挑戦状は突きつけていないのでご勘弁ください」
「……わかりました。けど二度目はありませんぞ。よく覚えておいてくだされ」
俺はこくりと頷いた。爺さんの表情が常のものに戻る。
「では。稽古を再開しましょう」
「はい」
その後、剣術の稽古は3時間は行われた。俺はもう終わる時にはヘロヘロだった……。
翌日、シェリアちゃんは風邪をひいたとかでお休みだった。代わりにトーマス兄貴がやってくる。俺と剣術の稽古をしたいとの事だ。
「……殿下。今日はよろしくお願いします」
「ええ。トーマス殿。こちらこそよろしくお願いします」
「ラウルも来る予定です。このたびは妹が行けなくてすみません」
「いえ。謝る必要はないですよ。お大事にと後で伝えてください」
「ありがとうございます」
トーマス兄貴と挨拶が終わると一緒に馬車に乗る。扉を閉めるとすぐに動き出す。俺はふとシェリアちゃんの容態が気になった。大丈夫かなと思う。
「……トーマス殿。妹君は風邪だと聞きましたが。熱はないのでしょうか?」
「ああ。ちょっと高熱が出ていて。咳と軽い関節痛があるそうです。医師から最低でも3日間は安静が必要だと言われました」
「そうですか。妹君が早くお元気になれるように祈ってます」
俺が言うと兄貴は苦笑した。
「……殿下にご心配いただき、妹は幸せですね」
「そうでしょうか」
兄貴はふっと笑うと俺の肩に手を置いた。
「ええ。シェリアは殿下との仲は諦めたと申していました。それでも私はお二人の幸せを願ってやみません」
「……俺は。どうしたらいいのか未だにわかりません。シェリア殿を守りたいと思ってはいるのですが」
「そう思っておられたのですね。殿下がシェリアを守りたいと思っているのなら。私は否やは言いませんよ」
兄貴は穏やかに微笑んで席に戻った。俺は照れくさくて俯く。
「殿下。もし妹と婚約を解消したとしても。私はあなたにお仕えしましょう。それは変わらない本心です」
「……ありがとう」
「今は先の事を考えるよりも魔獣や魔王の事を考えないといけません。私達はフォルド王国の存亡に関わる事柄に関わっているのですから」
俺は確かにその通りだと頷いた。兄貴も真面目な表情で頷く。
「殿下。せめて役目が果たせるまではシェリアの婚約者でいてください。そうでないと私や父が安心できませんから」
「そうですね。俺もそれは思います」
「ええ。余計な虫はつけたくありません。殿下には虫除けになっていただきたい」
「……できる限り努力します」
俺がOKすると兄貴はニヤッと笑った。ちょっと腹黒そうな笑い方だが。気にしたら終わりそうな気がするのでスルーした。そうして神殿に付いた後、俺はトーマス兄貴、ラウルと剣術の稽古に勤しんだ。以前よりもさらに腕を上げていた2人に大いに驚かされた。結局、惨敗に終わったが。それでも有意義な時間を過ごせたと思ったのだった。




