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41話

  俺は神殿の奥にある鍛錬場に着くとシェリアちゃんに言った。


「……シェリアちゃん。あの爺さんは曲者ではあるけど。魔術や剣術はかなりの腕だ。俺も見習わないとって思うんだ」


「はい。神官長様はすごい方だと思います。わたくしも聖女としてもっと頑張ります」


「無理はしないようにな」


  俺はそう言ってシェリアちゃんの手を離した。もう、向こうには爺さんが待ち構えている。爺さんは俺とシェリアちゃんに気づくとこちらにやってきた。


「……殿下、シェリア様。これから修行をまたしましょう。良いですかな?」


「はい。今日もよろしくお願いします」


  シェリアちゃんが元気よく返答する。俺も頷いた。


「うむ。良いお返事ですな。では動きやすい服装に着替えてきてください」


「……では一旦失礼します」


  俺とシェリアちゃんは一礼をして神殿の一室へ神官に案内された。シェリアちゃんは自邸から持ってきたらしいドレスに着替えるらしい。この部屋に待機していたらしいメイドや侍女達が一斉にシェリアちゃんの身支度を手伝う。俺は続き部屋にて付いてきていた侍従に手伝われながら着替えた。先に身支度はできたので続き部屋を出る。が、シェリアちゃんを待った方がいい事にふと気付いた。仕方なく廊下で彼女を待ったのだった。



「……エリック様。遅くなってごめんなさい」


  慌ててシェリアちゃんが部屋を出てきた。だが着ているのは薄いピンク色の可愛らしい感じのドレスだった。


「……シェリアちゃん。今から魔術と短剣の稽古なのに。何でドレスを着ているんだ?」


「母様の提案でこれからはドレスで稽古を受けるようにと言われました。何でもお茶会や夜会などでエリック様を守るにはこの格好ででも戦えるのが重要だとか」


「そうか。でも俺も男だから。シェリアちゃんを守ると約束しただろ。ドレスで戦うのはあくまで最後の手段だと思うことにしたい」


  そう言うとシェリアちゃんは先ほどの事を思い出したらしい。ちょっと顔や耳が赤いが。気にしないようにする。


「……あの。そろそろ行きましょう。神官長様をお待たせするわけにもいきませんわ」


「そうだな。行こうか」


  俺は頷くとシェリアちゃんに腕を差し出した。そっとシェリアちゃんは俺の腕に手を添える。こうして彼女をエスコートしたのだった。


「……おや。シェリア様。今日はドレスですか。仕方ありませんな。母君のシンディ様から話は聞いております。これからは神殿の巫女や女性騎士に武術を習ってくだされ。魔術は引き続きわしがお教えします」


「すみません。母がご迷惑をおかけします」


「気にしなくていいですぞ。シンディ様の言う事も正しくはあります。むしろ、気づかなかったわしにも悪い所はあります故」


  爺さんが言うとシェリアちゃんはどうしたらという表情になる。俺は頷いてみせた。するとシェリアちゃんは決意したらしく同じように頷いてくる。


「……神官長様に悪い所はありませんわ。でも決まった事ですから。改めてよろしくお願いします」


「ええ。では早速、巫女と女性騎士を呼んできましょう」


  爺さんはそう言うと一旦鍛錬場を出て行ったのだった。



  その後、爺さんが連れてきたのは2人の背の高い女性だった。左側は白い貫頭衣状の巫女の正装を着ていて巫女だとわかる。右側はジュリアス達と同じような赤い詰襟の騎士の軍服を着ていた。髪を高い位置で一纏めにしていてすぐに騎士だと気付いた。


「シェリア様。左側が神殿の巫女で名をスーザンと言います。右側が聖騎士のウィンディです。2人とも武術と魔術に関しては優秀ですので。今日からはこの2人に習うといいでしょう」


「……ありがとうございます。あの。初めまして。シェリア・フィーラと申します。以後お見知りおきを」


  シェリアちゃんは自己紹介をした後綺麗なカテーシーをする。スーザンは巫女特有の一礼をしてウィンディは騎士用の敬礼でそれぞれ答えた。


「よろしくお願いします。シェリア様。あたしはスーザン・フランと申します。以後お見知りおきを」


「私は聖騎士のウィンディ・カルトンです。シェリア様。これからよろしくお願いします」


  2人の挨拶が終わるとシェリアちゃんは少し離れた場所に移動する。俺も爺さんと一緒に魔術と剣術の稽古を始めた。ウィンディとスーザンの稽古を見たかったが。時間はなかったので諦める事にしたのだった。

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