35話
俺たちはその後王都に戻った。
俺とウィリアムス師、ジュリアスとエルにラウル、トーマス兄貴の六人で親父こと国王陛下の執務室に王都へ戻ってすぐに向かった。宰相が侍従と共に先導してくれる。
「……殿下。ご無事で良かったです。ウィリアムス殿もお疲れ様です」
「ああ。宰相。それでなんだが。陛下はおられるか?」
「はい。陛下は殿下方がお帰りになるのを今か今かと待っておられます」
そうかと言って俺は頷いた。宰相と侍従は先を歩く。俺たちも廊下を幾つか曲がり階段を上がった。そうしてようやく国王陛下の執務室の前にたどり着いた。
宰相がドアをノックすると中から返事があった。宰相自らがドアを開けてくれる。
「どうぞ。殿下。それに他の方々も」
俺が一番最初に中に入った。続いてラウルにトーマス兄貴、ウィリアムス師やジュリアス、エルも入る。
「……エリック。5日ぶりだな」
国王陛下は俺を見て声をかけてきた。俺は一礼をして答えた。
「はい。父上。お元気そうでなによりです」
「で。わざわざこちらへ来たんだ。何か相談したい事があるんだろう。言ってみなさい」
「はあ。実はちょっと魔獣狩りに行っていた時に夢を見まして」
俺が言うと陛下はちょっと驚いた表情になる。
「……夢?」
「はい。ここからは宰相と父上、俺たちだけで話したいので。侍従のウェルズ達は退席してもらいたいんです」
「わかった。ウェルズ、他の侍従、護衛の騎士達を退がらせなさい。ここからは宰相と余と。エリック達だけで話をする」
ウェルズという侍従は頷くと静かに他の者たちを伴って退席した。護衛の騎士達も執務室を出て行ったようだ。人の気配がなくなると俺とラウル、トーマス兄貴で防音、防御魔法を二重三重にかけた。
「……よし。エリック達の防音魔法などもかけられた事だし。話を聞こう。何があった?」
「はい。俺の夢の中にとある女性が現れて。彼女が教えてくれました」
「何を教えてくれたんだ?」
「この国の未来です」
「未来か。どんな未来が待っているとその女性は言ったん
だ?」
陛下の問いに俺はラウルの方を見て頷いた。深く息を吸うと答える。
「……十年後にフォルド国に魔王なるものが現れると。そして俺やオズワルド、ウィリー殿、カーティス殿、ラウル叔父上に。トーマス殿の合計して6人に魔王を退治してほしいと言っていました」
「なるほど。魔王がか」
「後、俺の婚約者のシェリア殿ですが。彼女こそが聖女であると聞きました」
「シェリア殿が聖女?!」
「……はい。私も聞いた時は驚きましたが。殿下のお話は本当ではないかと思います」
俺の説明を補足するようにラウルが言った。陛下はふうむと唸る。
「シェリア殿がなあ。で、まだあるんだろう?」
「はい。シェリア殿は魔王や魔族に打ち勝てる存在。そうであるが故に命を狙われているとか。早めに彼女を聖女として覚醒させる必要があると女性は言っていましたよ」
「……わかった。では明日にでもシェリア殿には王都の神殿に行ってもらおう。そして神官長に事情を説明して聖女としての鍛錬をつけてもらう必要があるな」
「ですね。父上、シェリア殿を守ってください。父上にはその力があります」
「エリック。なかなか言うな。じゃあ、神殿への送り迎えはお前がしろ。それくらいの許可は出すぞ」
いいんですかと言うと陛下はニヤッと笑った。
「……エリック。お前がシェリア殿に惚れてるのは私もわかっているんだぞ。これくらいは父親としてお安い御用だ」
「はあ。まあ、お礼は言いますが」
俺が言うとラウルの鋭い視線が突き刺さる。ラウルはシェリアちゃんに絶賛片想い中だ。悔しいだろうなとは思うが。俺だって譲れない。やっと想いを通じ合わせたんだ。簡単に盗られたらちょっと困る。
こうして俺が送り迎えをする事を条件にシェリアちゃんの神殿での修行が決まった。俺は新たな一歩を踏み出したのだった。




