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32話

  俺が皆と一緒に森を進むと魔獣が現れた。


  「……ブリザードレックスか。これは厄介ですね」


  ブリザードレックスは氷属性の俺の元いた世界でいうティラノサウルスみたいな魔獣だ。大きな頭にナイフのような牙、短い前足や強靭な後ろ足には鋭いかぎ爪。俺は本物を目の当たりにしてビビった。鱗の色は青い。

  ウィリアムス師とジュリアス、エル、兄貴とラウルが戦闘体勢に入る。大人三人は剣を構え、兄貴とラウル年少組はいつでも魔法を繰り出せるように杖を出した。俺も杖を出す。

  ブリザードレックスがその大きな口から氷のビームを出した。お前はゴ○ラか!そうツッコミたくなった。が、ウィリアムス師やジュリアスはこのビームを受ける前に大きく跳躍して避けた。

  ラウルとトーマス兄貴はとっさに結界を展開して俺や自分たちの身を守る。とりあえず、俺は炎魔法で初級のファイアボールをブリザードレックスに放ってみた。効くわけないかと思ったが。じゅうと焼ける音がしてブリザードレックスの尻尾に当たっていた。そこは溶けていてこいつの尻尾は半分くらいは無くなっていた。


「……初めてにしてはやるな。が、油断はするなよ!」


  ラウルが注意をしてくる。俺は再び杖を構えて防御魔法を繰り出す。尻尾を溶かされたブリザードレックスは機嫌が悪くなったようでグオオっと雄叫びをあげた。そうして氷どころか青白いビームを放った。これ、ポ○モンの冷凍ビームじゃねーか!

  そうしてビームが当たった木や草、地面が一瞬にして凍りつく。パキパキと木や草に霜柱が立ち、樹氷らしき物もできていた。俺は仕方ないと炎魔法で中級のファイアエンブレムをブリザードレックスにお見舞いする。


「……かの者を焼き尽くせ!ファイアエンブレム!」


  初級魔法であれば、無詠唱でいけた俺だが。中級は呪文を唱えないといけない。仕方なく唱えてブリザードレックスに放つ。炎の無数の剣がブリザードレックスに降り注いだ。断末魔といえる叫びを奴はあげる。その隙にウィリアムス師とジュリアス、エルの三人が剣で斬りかかった。ウィリアムス師は眉間の辺りを袈裟斬りにした。ジュリアスが硬い鱗ではあるが背中を縦一文字に、エルは尻尾を根元からばっさりと斬っていた。

  三人のチームプレイによりブリザードレックスはあっけなく倒れた。ドサッと音が辺りに響く。俺は初めての戦闘にドッドッと心臓がうるさく鳴っていた。その場にへたり込んだ。


「……エリック。もうブリザードレックスは倒せた。お前、けっこうやるじゃないか」


「あ、ああ。ありがとう。叔父上」


  ラウルは俺に手を差し伸べた。ぐっと力を入れて立ち上がらせてくれる。クォンも出てきて親指をぐっと立てていた。俺は代わりに頷いておいたのだった。



  その後、ブリザードレックスは煙を上げて消えてしまう。が、氷の鱗と牙、爪、肉がその場に現れた。ここは乙女ゲームの世界だった。俺の耳に女性の声も届いた。


『ピロピロリーン!おめでとうございます。エリックは経験値を50もらいました!レベルが5から6に上がりました--!』


  微妙なナレーションだ。俺、魔法しか出してないぞ。そう思いながらも俺は鱗などが転がる場所に行く。そして爪を拾い上げた。


「……殿下。爪を気に入りましたか。とりあえず、肉はエントランスボックスにしまいます。いいでしょうか?」


  ウィリアムス師が問いかけた。俺は頷いた。すると肉だけが白い光を放って消えた。エントランスボックスに師がしまい込んだらしい。ジュリアスとエル、クォンにもよくやったと褒めてもらえた。トーマス兄貴も俺の頭をくしゃりと撫でてくる。顔は笑っていた。俺たちはさらに森の奥深くを目指すために歩くのを再開したのだった。

ポ○モンが出てきましたが。エリックの前世の矢恵さんはポ○モンのゲームをプレイした経験があります。

それこそ、赤とか緑の頃からです。

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