30話
シェリアちゃんは俺と想いが通じ合ってから、以前よりも王宮に来るようになった。
俺はラウルと共に王宮の外に出てフォルド国の西部にある森に向かう事になった。なぜかと言うとそろそろ、魔獣、魔物と言える物達と戦う練習をした方が良いとウィリアムス師が判断したからだった。なので今日は剣術やウェルズ先生の授業は午前中に終わらせた。剣や他の荷物の準備があるからだ。それについては護衛騎士のジュリアスやエル、クォンらに聞いてしていく。
シェリアちゃんは心配して俺に母君と一緒に作ったという光の神の加護があるというペンダントを手渡してくれた。後、防御魔法が幾重にもかけられた指輪もだが。通称を光のペンダントと防御の指輪と呼ぶらしい。
「……エリック様。この二つしか作れなくってごめんなさい」
「え。防御の指輪もシェリアちゃんお手製なのか?」
「お手製とまではいきませんけど。父様や兄様と一緒に作りました」
シェリアちゃんの言葉に俺はじいんとなる。そしてトーマス兄貴や父君のフィーラ公爵も指輪作りに参加したのにもだ。母君のシンディ様にもだが。
「ありがとう。シェリアちゃんや公爵家の方々で俺用のペンダントや指輪を作ってくれて。大事に使うよ」
「良かった。エリック様が喜んでくれて。でも無理はしないでくださいね」
シェリアちゃんはほっとしたらしく緊張でひきつっていた表情を緩めた。俺は彼女の近くまで来て頭を撫でる。
「……シェリアちゃん。俺は頑張るよ。だから無事に帰ってくるのを祈っていてほしいな」
「はい。エリック様が無事に帰ってくるのを祈っていますわ」
シェリアちゃんが心なしか赤くなっていた。まあ、そりゃそうか。エリックのこの顔はかなりの美形だからな。シェリアちゃんの方が数倍美人だが。それでも好意を持たれているから余計に向こうにしてみれば、恥ずかしいかもしれない。それでもやめられなかった。理由は可愛いからだ。
「シェリアちゃん。結婚できる年齢になったら君とは別れなければいけないけど。今は恋人のままでもいいだろうか?」
「……エリック様。わたくしはこのままあなたといたい。でも。わかってます。腹はくくっています」
「ごめんな」
5歳児とはいえない会話を俺たちはする。将来は約束できない。俺はシェリアちゃんの頬を撫でた。額にキスをした。これくらいは許してほしい。シェリアちゃんはすごく驚いていたが。後でラウルやトーマス兄貴にシェリアちゃんの顔が来た当初よりも赤くなっていた事についてとっちめられた。兄貴に締め上げられたのは言うまでもない。シスコンだなと思ったのは内緒にしたのだった。
翌日、俺とラウル、トーマス兄貴、ウィリアムス師、ジュリアスやエル、影の護衛としてクォン7人で西部の森に出発した。俺はまだちっこいのでウィリアムス師の馬に乗っけてもらっている。ラウルはジュリアスの馬、トーマス兄貴はエルの馬にという感じだ。皆、後ろに乗っけてもらっていた。
王宮を出て今は人気のない街道をパカラパカラと進んでいた。空は青く晴れ渡っている。小鳥がぴちちと鳴き、風や日差しも穏やかだ。天気は良好だが。トーマス兄貴とラウルは昨日のことで機嫌が悪い。大人達は普通だが。
「……ラウル殿。もうちょっとそのブスッとした顔。どうにかしてくれませんかね」
「……放っといてくれ。エリックの奴が悪いんだ」
「くくっ。そんなにエリック殿下とシェリア様が仲良くしているのが気に入りませんか?」
「気に入らないな。あいつ、俺にはシェリア殿の事をよろしく頼むとか言っていたくせに」
「まあまあ。落ち着いてくださいよ。将来はどうなるかわかりませんから」
ジュリアスが微笑ましいといわんばかりに笑った。俺はふうとため息をつく。叔父上はめっちゃ根に持ってるな。仕方ないかと思う。ラウルはシェリアちゃんの事、本当に好きになっているようだからな。俺は空を見上げたのだった。




