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20話

俺は今日もウィリアムス師と息子のオズワルドと稽古をする。


たまにウィリーも参加しているが。こいつは剣術に向いていなかった。ウィリアムス師に走りこみをやらされていたが。


鍛錬場を二周しただけでバテバテだった……。それにより、ウィリーは稽古はやらずに魔術を磨く方を勧められていた。


勧めた師に俺は心中でそれが正解と称賛を贈ったのは内緒だ。



ラウルが帰ってしまってから一カ月が過ぎた。この日にスズコ様から手紙が届いた。


<エリック君へ


元気にしていますか?あたしとラウルはイルミナ伯領にて元気にしています。


一カ月前は突然帰ってしまってエリック君を驚かせたし心配も掛けてしまっただろうと思い、暇を見て手紙を書いてみました。


実は一カ月前、ラウルの命が狙われる事件があったでしょう?


それからというもののラウルは夜中に魘されるようになってしまったんです。


一カ月間も続くものだからあたしも心配になってね。仕方なく、陛下にお願いして帰らせてもらったという訳なんです。


今も魘されている時があります。なのでちょっとの間は様子を見てからまた王宮に上がる事になりそうです。


朝や昼間も最近は怠そうにしています。エリック君も健康には気をつけてくださいね。


では。スズコ・イルミナ>


そう書いてあり俺はやっとラウルが体調を崩していたのに気づいた。けどあいつ、俺の前では平然とした顔してたぞ。


まあ、もしかしたらあいつも平気なふりをしていただけかもしれないが。


俺はふうと息をつく。今は昼間だがリアナはいない。昼食を取りに行っているからだ。


仕方なく、クォンを呼んだ。クォンは音もなく降り立った。


「……どうしたんだよ。王子様。俺を呼ぶなんて珍しいな」


「ちょっと聞きたい事があってな。クォン、ラウルが一カ月前に体調を崩していたことは気づいていたか?」


「ああ。それだったら気づいてたよ。情報収集がてらにラウルの部屋の近くを探ってみたけど。スズコさんや侍女が医者を呼んでいたしね」


「……そうか。医者を」


「まあ、叔父にあたるから気になっても仕方ないか。俺もあのめちゃ強い坊ちゃんが倒れるとは思わなかったよ」


クォンは本当に驚いたらしく真顔で言う。俺も正直驚いたが。


「じゃあ、王子様。今後はどうしたい?」


「そうだな。今後もシェリアちゃんの護衛を頼みたい。後、何か掴んだ情報があったら俺にも知らせろよ。親父に知らせるのもいいが」


「わかった。何だ、ばれてたか」


「それくらいは気づいてたよ。あんまり見くびらないでくれ」


「……わかったよ。そんなに怒るなって」


クォンに何故か頭を撫でられた。はっきり言って嫌だというより子ども扱いすんなって思いが強いが。


クォンは一頻り撫でるとじゃあなと言って天井裏に戻っていく。ぐしゃぐしゃになった髪を手櫛で整える。


そんな間にリアナから声が掛かった。俺は返事をすると寝室を出た。



昼食を食べてからリアナから今日は午後から休むように言われた。仕方なく言う通りにする。


何故かというと俺もつい一週間前に風邪を引いたからだ。バカほど風邪をひかないというが。そうでもなかったみたいだな。


その後、寝室に再び戻りリアナが側に付き添う形でベットに入る。


「……殿下。無理は禁物です。今日も剣術の稽古を中止にしようと思っていたんですよ」


「悪かったって。リアナは心配性だよな」


「殿下の場合は心配し過ぎで丁度いいくらいです」


ぴしゃりと言われてしまう。まあ、仕方ないか。


俺は瞼を閉じる。ふわりと額に冷たく柔らかな手が当てられる。リアナが熱を測っているらしい。


「……もう平熱っぽいですけど。油断は禁物ですね」


ぽそりと呟くと手を離した。その後でひんやりと冷たい物が額にもう一度当てられる。が、感触からすると手ではなくてタオルのようだ。


水で濡らしたタオルで冷やしているようだった。そういや、体にぞくぞくとした寒気がきていた。それでいて頭がひたすら熱い。


リアナがパタパタと小走りで寝室を出ていく。それを最後に俺の意識は途切れた。



「……エリック殿下は風邪がぶり返したようですね。だいぶ、高い熱が出ているようです。もしや、剣術の稽古の後、汗も拭かずにいましたね?」


「……すみません。私の不注意です。以後は気をつけるようにしますので」


そんな二人の男女の小声で話す声で目が覚めた。


「……うん。リアナ?」


俺がリアナの名を呼んだ。すると話す声は途切れて二人が慌てたようにこちらにやってくるのが気配でわかる。


「まあ。殿下、気がついたのですね!」


「おや。高熱で魘されておいででしたが。お目覚めになりましたね」


リアナが喜ぶと一緒にいた男性が冷静に告げる。あれ、この男性は……。


「殿下。こちらは御典医のルーカス先生ですよ」


「……そうか。あの。ルーカス先生、わざわざすみません」


「謝らなくてもいいですよ。それより、診察をしますので。リアナさん、ちょっと手伝いを頼めますか?」


「わかりました。お手伝いします」


ルーカス先生はリアナに声をかける。その後、診察が始まったのだった。



診察が終わるとルーカス先生は薬を置いて帰って行った。


『殿下は言葉通り風邪ですね。お薬を一週間分と解熱剤を出しておきますので。また、何かあればお呼びください』


そうして俺は再びベットの住人になった。リアナはお粥と果実水以外は食べさせてくれない。そんな生活が4日は続いたのだった。

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