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15話

俺とラウルが襲撃された事件から一年近くが過ぎた。


年も取り俺が4歳、ラウルが8歳となっていた。ちなみにケビンも2歳でシュリナが1歳だとジュリアスが言っていたが。これから、この2人には今後は会えないな。


俺は未だにラウルと剣術の稽古を続けているが。勝てた試しがない。何でだ??


4歳になって3歳の時より10センチは伸びた。身長がだが。今、100センチ、1メートルくらいになっている。くう、ラウルは俺より35センチも高い。悔しくて涙が出ちゃう……。


はっ、俺は男だ。なのに、何で某アニメの主人公(スポーツのバレーボールの女子選手だったか)みてえな事を思ったりしてるんだ、俺はー!!


アホな事を考えていたら奇妙なものを見るような目でクォンが俺の部屋にいた。


「……王子様。あんた、何を百面相してんだよ」


「……びっくりしたあ。クォンかよ。いや、ちょっとラウルの事を考えていたら悔しくなってさ」


「はあ??」


クォンは結構失礼な反応をした。まあ、仕方ないか。


「だってさあ。俺は背がちっこいまんまなのに。ラウルの方が伸びるの早えし。結構頑張って牛乳や野菜や魚介類をせっせと食ってんのに。なんでなんだよ!!」


「んな事を俺に言われてもな……」


クォンはぽりぽりと頬を指で()く。まあ、言ったこと自体はただの愚痴だが。


「クォン。あんたやラウルはいいよな。成長期で。俺はまだまだこれからだとか親父に言われるし」


「王子様。あんた、結構気にする性質(たち)なのな。まあ、仕方ないんじゃないの。4歳だったら8歳の奴に立ち向かっても勝てないのは自然の道理だしな」


クォンが冷たい。でも奴の言う通りし仕方ないよな。


「……それはそうと。王子様。あんたの婚約者のお姫様。結構可愛い子じゃん。さっき、そのラウルとかいう奴と一緒に遊んでるの見かけたぜ」


「そうか。まあ、ラウルが遊び相手だったら大丈夫だろ」


「え。あんた、嫌じゃねーの。自分の婚約者だぜ。他の男と仲良くしてて悔しくなんねーのかよ」


俺は寂しげに笑いながら首を横に振った。


「いいんだ。ラウルとは約束した。いずれ、時が来たら婚約者を彼に託すとな」


「……何だそれ。あんた、それでも男かよ」


「仕方ないだろ。俺はシェリアちゃんを守れる程には強くない。ラウルの方が適任だ」


「かーっ。見てらんねえ。エリック王子だったか。ちょっとこっちに来い!!」


いきなり、怒鳴りつけられてびくりと肩が震えてしまう。クォンは俺の腕を掴むとひょいと米俵みたく肩に担ぎ上げた。


「……ちょっ。何すんだ、クォン?!」


「エリック。あんたは女心って奴をわかってねえ。シェリアちゃんだったか。その子がどう思ってんのかくらいは聞いたって遅くないだろ。身を退くのはそれからだ」


「クォン……」


「行くぞ。しっかり掴まってろ。落ちないようには支えてやるから」


「ええっ。どこ行く気だ?!」


クォンは何も言わずに人並み外れた跳躍力で木の枝に飛び移った。ざざっと葉が擦れる音がする。目に止まらない速さで彼は俺を担いだまま、王宮の壁や塀などを駆け抜けた。


そうしてクォンが止まったのは王宮の裏庭らしき場所だった。ざっと僅かな音を立ててクォンは地面にしゅたっと着地する。


「ふう。ラウルとシェリアちゃんは確かここにいたはずだ。まだ、遊んでると思うぞ。行ってこいよ」


「……え。ああ、わかった」


俺は言われた通りにラウルとシェリアちゃんがいるらしい場所へ向かった。


小さな子供のはしゃぐ声がこちらにまで届く。目を凝らしてみるとラウルとシェリアちゃんが一緒に遊んでるのが見えた。


俺がゆっくりと近寄ると最初に気がついたのはシェリアちゃんだった。


「……あ。これはエリック殿下。お久しぶりです」


「ああ。久しぶりだな。シェリア殿」


シェリアちゃんはまた綺麗なカテーシーをして挨拶をしてくれた。俺も鷹揚に頷いて目礼をする。


「……何だ。エリック殿下。いらしたんですか」


「ああ。ちょっと叔父上とシェリア殿がこちらにいると聞いて。一緒に遊んでたんだったら俺も混ぜてもらえませんか?」


「まあ。わたくしとですの?」


「ああ。いいだろうか?」


「……殿下はわたくしの婚約者様ですものね。いいですわ。一緒に遊びましょう」


シェリアちゃんが俺が婚約者だという事を知っていてくれた。嬉しくなる。


ラウルは忌々しいとばかりに眉をひそめたが。俺はそれは無視してシェリアちゃんに頭を上げるように言う。そして彼女の紙を撫ででやる。


おおっ、意外とサラサラして手触りが非常に良いぞ。それにほんのりと花のような甘い香りがする。


ドキドキした。ああ、俺ってシェリアちゃんに自分から触れた事がなかったよな。今まで冷たくしてごめん。


気がつくとシェリアちゃんのちっちゃな体を抱きしめていた。幼児なのに抱きしめるとは俺ってとんだおませなガキもいいとこだぞ。


あー、ラウルの冷たい視線が痛い。それでも俺はシェリアちゃんを離せなかったーー。

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