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109話

 魔力切れから、無事に回復した俺は学園にオズワルドやクォンと3人で行った。


 今日も昼食を食堂でとる。オズワルドやクォンはよく食べるが。俺はまあ、普通かな。


「エリック様、シェリア様はどちらにいるかご存知ないんですか?」


「まあ、同じクラスの令嬢か。ラウル叔父上と一緒かもな」


「はあ、シェリア様も罪な方と言いますか」


 オズワルドはそう言いながら、プレートにあるスープを啜る。クォンは無言だ。俺もロールパンをちぎり、口の中に放り込む。3人3様で食事を進めたのだった。


 お昼休みが終わり、午後の授業が始まった。今は6時限目で算数だ。と言っても、元いた世界の日本でなら、小学2年か3年レベルだが。


「はい、今日はかけ算をやるぞ」


『はい!』


 先生が言うと、皆で返事をする。確か、今日は3の段をやるらしい。いやあ、懐かしいなあ。


「では、まずは。3✕1は?」


『3です!』


 こんな感じで授業は進んでいた。計算が終わると皆で1から9までを暗唱する。先生は次に、4の段へ進んだ。

 その後、終礼を報せる鐘が鳴った。6時限目の授業は終わったのだった。


 7時限目の授業も済み、放課後になる。俺は筆記用具や教科書などをカバンに入れ、下校の準備をしていた。オズワルドが先に済ませ、こちらにやって来た。


「エリック様、そろそろ行きましょう」


「分かった、待っててくれ」


 俺が言うと、オズワルドは頷く。急いで準備を終わらせる。忘れ物などがないかをさっさと確認した。一通りしたら、椅子から立ち上がる。


「すまん、行こうか」


「はい、停車場にクォンさんがいるはずです」


「そうなのか」


 返事をすると、オズワルドは笑う。


「クォンさん、僕には「エリック様が心配だ」とよく言っていますよ」


「アイツがそんな事を?」


「はい、僕と2人でいる時は怪我しないかとか。しょっちゅうです」


 オズワルドの言葉に戸惑ってしまった。俺に対してはからかう方が多いように思うが。ちょっと、半信半疑ながらも停車場に向かうのだった。


 クォンと合流すると、馬車に乗る。


「エリック様、今日もお疲れさんだな」


「ああ、クォンやオズワルドもな」


「最近、2人共に慣れてきた感じだな。俺も一安心だぜ」


 クォンはそう言ってカラカラと笑った。


「クォンさん、課題は出たんですか?」


「どっさり、出たなあ。オズ君はどーよ?」


「僕はまずまずですよ」


 2人は意外と和気あいあいと喋っていた。俺は仲が良いんならと安心していた。


「そーいや、エリック様。シェリアちゃんは元気か?」


「ううむ、元気だとは思うぞ。最近、あまり会わなくなったが」


「おいおい、たまには話ぐらいはしろよ」


「しようにもなあ、避けられてるんだよ」


「マジか、それじゃあ。仕方ないか」


 クォンが唸った。うん、本当にシェリアには避けられているように思う。何があったのかは分からんが。


「エリック様、僕やクォンさんの事はお気になさらず。たまにはシェリア様と一緒に過ごしてみては?」


「……そうだな、シェリアに明日声を掛けてみるよ」


「分かりました、じゃあ。明日はクォンさんと2人で食堂に行きます」


「ああ、そうしてくれ」


「わーった、オズ君も明日はよろしくな」


「はい」


 一通り、打ち合わせが終わると。オズワルドとクォンは他愛もない話を始めた。俺は馬車の窓から、景色を眺めた。


 王宮に帰り、課題をいつものようにやった。ドアがノックされ、返事をする。入ってきたのは何と、意外な人物だった。


「久しぶりやねえ、エリック君!」


「え、スズコ様?!」


「うん、陛下にお願いしてなあ。一昨日からいさせてもらっとるんよ」


 にこやかに笑いながら、スズコ様は俺の頭を撫でた。ちょっと、痩せたようには思うが。それ以外は変わらない。まあ、修道女に支給される制服を着てはいるがな。


「あ、先日はありがとうございました。おかげですっかり、元気になりまして」


「良かった、ちゃんとお薬は効いたみたいやね」


「はい、スズコ様やシェリアのおかげです」


 俺が言うと、スズコ様は笑顔から真顔になる。


「ラウル、元気にしとる?」


「ラウルですか、最近はあまり会っていなくて」


「そうなんか、あたしも手紙のやり取りしかせえへんしな。大丈夫かなって心配なんよ」


 スズコ様はそう言って、苦笑した。俺はどう言ったもんやらと考える。


「……また、学園に行ったら、俺から声を掛けてみますね」


「うん、そないしてもらえる?」


「分かりました」


 頷くとスズコ様は気を取り直すように笑った。


「まあ、真面目な話はこれくらいにしよか。エリック君」


「はい」


 再度、頷いた。スズコ様は俺の部屋の一人掛け用のソファーに座る。


「エリック君もちょっと見いひん間に大きいなったなあ」


「そりゃまあ、今年で10歳になりましたし」


「あら、背も伸びるはずやわ」


「はい、ラウルなんかもう、160以上になっていたようですよ」


「へえ、そうなん。ラウルも今が伸び盛りやしね」


 スズコ様は意外そうにする。確か、ラウルが10歳になって以降はあまり会えていなかったはずだ。しばらくは話に花を咲かせたのだった。

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