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108話

 俺はまたも、シェリアと2人で神官長に魔法の鍛錬を受けていた。


 俺が光属性の魔術、シェリアは聖属性の魔術を中心的に習う。とりあえず、攻撃系も教えてもらったが。何せ、神官長はめっちゃスパルタだ。

 ビシバシしごかれたぞ。おかげで魔術の腕は爆上がりしたがな。武芸の方もウィリアムス師や息子で元護衛騎士のジュリアスから、習っている。


「……エリック様、他の事を考えているとは。良い度胸ですな!」


「ちっ、爺さんもなかなかだがな!」


「ほう、10歳の小僧には言われたくないのう!」


「……減らず口はお互い様ってか?!」


「言うのう、なら。小僧、これを受けてみよ!!」


 神官長もとい、仙人爺さんは強力な雷撃を放つ。ちなみに、爺さんは長剣で放ってきやがった。なんつー、ジジィだ!!

 俺はとっさに結界を展開する。シェリアも囲めるレベルにはだが。雷撃は凄まじい轟音や閃光、地響きを放ちながら、礼拝堂に満ちた。


「……くっ、爺さん!!手加減くらいしろよ?!」


「……申し訳ない、お2人共。調子に乗ってしまいました」


「たくっ、シェリアが怪我したらどうしてくれんだよ」


 俺は本当に申し訳なさそうにする爺さんを睨む。反省はしてくれているだろうが。


「……リック様、わたくしは大丈夫です」


「まあ、お前が無事ならいいんだが」


「リック様が守ってくださいましたから、ありがとうございます」


 俺にシェリアは満面の笑みで礼を述べる。仕方ないなあとため息をつく。


「いや、礼を言われる程じゃねーよ」


「……小僧、女の子に礼を言われたら。どういたしましてくらいは言え」


「ふん、元を正せば。爺さんが悪いんだろうが」


「言うのお、小僧。そんなにもっと、しごかれたいか?」


 げ、ジジィが暗黒オーラを出し始めやがった!ちっ、面倒な事に。俺は内心で盛大に舌打ちをした。この後、シェリアは早めに帰してもらえたが。俺はヘロヘロになるまでしごかれたのだった。


 翌朝、俺は盛大な筋肉痛と魔力切れにより、寝込んでしまう。高熱や酷い目まい、倦怠感やらが出てベッドの住人になっていた。


「……エリック様、スズコ様から贈り物が届きましたよ」


「え、贈り物?」


「はい、確か。聖属性の魔法付与がなされた魔道具と、薬草や市販薬などですね」


 リアナはそう言って、俺が半身を起こすのを手伝う。礼を言って、贈り物に添えられていた手紙を受け取る。内容はこうだった。


<エリック君へ


 元気にしてる?


 やっと、聖属性の魔法付与が施された魔道具が完成したんやわ。


 3つは作れたから、エリック君にプレゼントするわ。


 ペンダントにカメオ、タイピンの形にしとるから、使いやすいと思うで。


 まあ、エリック君が体調不良やとはシェリアちゃんが伝達魔法で朝一に教えてくれてな。


 急いで、魔力切れに効く薬草や市販薬、湿布薬とかも詰め込んだんやけど。


 後、エリック君が好きな緑茶の茶葉に生姜湯、フルーツも入れといたから。


 ゆっくり、養生してや!


 敬愛するお孫さんへ


 スズコ・イルミナ>


 日本語で書いてあり、俺は笑ってしまう。スズコさん、やっぱり姐御だよなあ。リアナに体調が良くなったら、返事を書くと言った。是非にそうしたら良いとリアナは頷いてくれたのだった。


 スズコさんがくれた生姜湯や薬草、湿布薬などに医師が処方した薬の効果のおかげか。2日後には魔力切れがかなり改善された。


「リック様、だいぶ元気になってきましたね」


「ああ、お見舞いに来てくれてありがとな、シェリア」


「はい、今日は母様と一緒に作った上級ポーションや経口補水液を持ってきました。味はちょっと苦いかもしれませんけど」


「え、経口補水液も作ってくれたのか?」


「はい、以前にリック様が作ってくださったでしょ?作り方をスズコ様に教えていただきました」


 シェリアはそう言って、水筒を差し出す。蓋を開け、サイドテーブルに置いてあるマグカップに注ぐ。俺は手に取り、一口含んだ。飲み込んだ時にふわりとレモンやミントの清涼感溢れる香りや味が口内や鼻腔を抜ける。うん、苦味はちょっとあるが。これは飲みやすい。


「シェリア、美味い。この経口補水液、飲みやすいと思うが」


「良かった、美味いと言ってもらえて。これはリック様に差し上げます」


「うん、ありがとう。有り難くいただくよ」


 シェリアは嬉しそうに笑う。俺もつられて口角が上がったのが自身でも分かる。その後もぽつぽつと話したのだった。


 5日後にはすっかり、体調は回復していた。おや……陛下や王妃殿下からは「もうちょっと、体調管理にも気を使え!」と叱られた。仙人爺さんも「この間はすみませんでした」と謝罪の手紙が届いたが。俺は返事を送った。

「こちらも色々と失礼しました」とは書いておいたが。また、スズコさんやシェリアの母君のシンディー様にもお礼の手紙を送った。

 本当に両親からの忠告は身に沁みた。懲りたと言うか。けど、挑発してきた爺さんにも悪いとこはあるよな。俺はやれやれと思いながら、スズコさん、シェリアからもらった魔道具のペンダントのトップを撫でたのだった。


 

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