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105話

 その後、俺はオズワルドやクォンにビシバシと課題の指導(と言えるのか)を受けた。


 おかげで何とか、期日までには終わる事ができたが。まあ、地獄の授業とは言える。まさにスパルタだった……。

 何せ、間違えたらオズワルドは笑顔で「僕の教えた事をもう忘れたんですか?」と宣うしな。クォンは面白がってケラケラと笑ってるだけだし。いや、普通は逆だろ!クォンが教えて、オズワルドが手伝う役割なはずだ。

 やはり、俺がリアをフッたからか?!

 ……落ち着け、俺。仕方ない、今日も授業や鍛錬など頑張ろう。頭を振って雑念を払ったのだった。


 ちなみに例の課題の提出期限は1週間後もとい、今日だ。俺は無事に提出が出来た。

 オズワルドやリアも難なく提出していたが。


「エリック様、これから課題があったら。僕と一緒にやりましょう」


「……そうだな、よろしく頼む」


 俺は内心でげっそりしながらも頷く。まー、オズワルドがそれだけに優秀と言う事だ。ため息をそっとついた。


 2学年になってから、しばらくは平穏な日が続いた。季節はゆっくりと過ぎ、初夏になった。


「リック様、こんにちは」


「リアか、よう!」


 リアが王宮で声をかけてきたが。周りには人がまばらだ。


「リック様、お久しぶりです。これから、わたくしの部屋に行きませんか?」 


「え、いいのか?」


「はい、リック様とたまにはゆっくりとお茶でもしたいと思いまして」


 俺は頷く。まあ、もうリアは異性としての意識はないと思うが。それでも、遠慮はしておくべきではある。そうは言ってもなあ。仕方ないと諦めて付いて行った。


 本当にリアは俺に手ずからお茶を淹れてくれた。「リアナさんにこっそり、教えてもらったんです」と言いながら、ポットの中のお湯をカップに注ぐ。茶こしには茶葉も入っている。

 ハーブティーらしく、独特ながらに甘さもある香りが部屋に揺蕩う。


「さ、リック様。リアナさんがブレンドしたハーブティーです。確か、アップルウッドにドクダミ、ジンジャーなどが入っているとか聞きました」


「ふうん、良い匂いだな」


 俺は目の前に置かれたカップを持ち、口元に運ぶ。甘酸っぱい中に少しの苦味、辛味が混じり合ったお茶だ。けど、飲むと最後にふわりと清涼感が残る。リアナのブレンドか。さすがといえるなあ。


「……リック様、わたくしは。いつまで婚約者でいられるのでしょう」


「え、リア?」


「わたくし、最近はそればかりを考えてしまうのです。リック様はどう思っておられますか?」


「うーむ、そうだなあ」


「邪魔ならそう言ってくださいまし、わたくしは。腹は括っていますの」


 俺は真面目に言ったリアを無言で見つめた。


「……邪魔だなんて思ってない、たださ。君を解放してやれない自身が情けないとは常々考えちまう。リア、婚約を解消したいのか?」


「いいえ、わたくしはリック様の隣にいたい。けど、怖いのです」


「……シェリア」


「あなたにわたくしは必要ないといつかは言われるのではないかと」


「そっか、俺が考え無しだったな。ごめん、君を迫い詰めてしまっていたようだ」


 俺がそう言ったら、シェリアは悲しげな表情になる。その瞳からは涙が溢れる。静かに彼女は泣き出した。


「わ、わたくし。エリック様の重荷になりたくなくて!」


「……うん、シェリアはよく頑張ってきたよ。俺もそれはよく知ってる」


 俺はそっと立ち上がるとシェリアの隣に行く。ただ、彼女の肩を抱いた。抱擁はラウルに譲ってやるか。そう考えながらも寄り添い、慰めたのだった。


 しばらくしてシェリアは目を真っ赤にさせながらも泣き止んだ。が、うとうとし始めたので慌ててメイドを呼ぶ。


「あ、殿下。いかがなさいましたか?」


「シェリアは体調が優れないみたいでな、ちょっと休ませてあげてくれ」


「分かりました」


 メイドもとい、シェリア付きのメイアは頷く。俺はメイアに任せると部屋を出た。後でクォンに要相談だな。頭を抱えたのだった。


 自室にてクォンを呼んだ。すぐに、現れたが。ニヤニヤと笑っているのはいただけない。


「……王子、あんたもやるな」


「からかってんのか」


「いーや、役得だなと思ってさ」


「クォン、軽口はそれくらいにしろ。あんたに相談したい事がある」


「相談?」


 頷きながら、対敵避けの防御結界や防音魔法を展開する。クォンは真顔になった。


「……クォン、今後は魔王の復活を中心に据えて調べてくれ」


「分かった、確かに王子の言う通りだな。最近はきな臭い動きも隣国にあるし」


「きな臭い?」


「ああ、隣国の皇太子が秘密裏にシェリアちゃんを付け狙っている。あの子を自身の妃にと画策しているようだ」


「……まだ、シェリアは10歳だぞ」


 俺は眉間をもみながら、声を絞り出した。怖気がしたからだが。まさか、隣国の皇太子がロリコンだったとは……。余計にシェリアを守らなければとは思った。仕方ない、ラウルとトーマス兄貴にも知らせとくか。クォンとさらに話を詰めたのだった。

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