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97話

 俺はオズと二人でしばらく、談笑していた。


 けど、学園の生徒達がだいぶ集まり始める。仕方なく、口を閉ざした。最初に学園長の祝辞から始まり、生徒会長の祝辞と入学式は滞りなく進む。最後に新入生代表の祝辞になった。階段を上がり、フィーラ公爵令嬢もとい、シェリアが壇上に上がる。俺は内心で彼女を応援しながら、見つめた。


「……えっと、我々新入生は王立学園に入学するのを今まで目標にしてきました。皆様に幸多からん事を願っています!」


「「おおっ!!」」


 シェリアは生徒達の幸福などを願う言葉で、祝辞を締めくくる。俺やオズを筆頭に歓声と拍手が大講堂の中に響き渡った。


 入学式は無事に終わる。俺とオズ、クォンは大講堂を出て教室に移動した。途中まで、三人でいたが。中等部の校舎は遠いので、初等部のある渡り廊下で分かれた。オズと二人だけでひたすら歩く。しばらくして、初等部の校舎にやって来る。昇降口から、中に入った。


「なあ、オズ」


「どうかしましたか、エリック様」


「教室までは意外と距離があるな」


「そうですね」


 廊下を歩き、階段を上がった。畜生、こういう事なら上級生の後を付いて行くんだった。仕方なく、オズと二人で一年Bクラスの教室に急いだ。


 何とか、予鈴がなる前に教室に入る事ができた。確か、シェリアはAクラスだったかな。筆記の試験と実技試験の成績でクラスが決まるシステムに学園はなっている。オズや俺は筆記試験は良かったんだが。実技試験は中の上のはずだ。なので、Bクラスになってしまった。まあ、一年間で努力してばん回するしかない。俺とオズは席について、予鈴が鳴るのを待った。


「……では、私がこれから皆さんの担任をするマーリア・シンフォニアと言います。よろしくお願いしますね!」


「「はい!!」」


 教室に入って、自己紹介してきた若い女性が俺のクラスの担任の先生だ。暗めの赤髪に、淡い翡翠のような瞳の綺麗な美人さんだが。なかなかに、テキパキしてそうに見える。


「元気なお返事ですね、これから明日から始まる授業について書かれた用紙を配ります。皆さんでまんべんなく渡し合ってくださいね」


 シンフォニア先生の一言でクラスが動き出す。先生は一番前の席の子に、人数分の用紙を渡していく。前の子から、一枚ずつ取っては後ろに回していった。俺の席にまで行き渡る頃には全員に配り終えたようだった。


「はい、皆さん。用紙はちゃんと目を通しておいてね、明日からは授業も行われます。忘れ物などには気をつけてください」


「「はーい!」」


 皆が再度、返事をする。シンフォニア先生は説明を続けた。


 自己紹介の時間になる。割と、オズワルドは堂々としていたが。俺の番になった。


「……えっと、俺はエリック・フォルドと言います。これから、一年間は皆さんと切磋琢磨し合いたいと思います。よろしく!」


「はい、元気な自己紹介でしたね。次!」


「……僕は……」


 俺が終わると、窓側から二列目で一番前の男子が自己紹介を始めた。実はシンフォニア先生、廊下側の席の子からさせていた。真ん中まで来たら、窓側の一番前の子からといった感じだろうか。なかなかに効率的と言える。

 自己紹介が終わると、シンフォニア先生は言った。


「はい、今日はここまでにします。皆さん、帰る準備をしてくださいね!」


「「はい、さようなら!!」」


 先生もよく通る声で「さようなら!」と返答した。これにて、学園に登校の初日は終わったのだった。


 帰る仕度を整えて、オズと一緒に教室を出た。

 停車場にまで行くと、既にクォンが待ち構えていた。


「よー、エリック様にオズ君。やっと、終わったな」


「ああ、俺達はさっきに終わったところだ」


「へえ、そっか。ま、今は馬車に乗ろうぜ。積もる話はそれからだ」


 クォンの言葉通り、馬車の準備は終わっているらしい。ダンがにっこりと笑う。


「エリック様、クォンさんにオズさんも。乗ってください」


「分かった」


 頷くと、ダンが扉を開けた。先にクォンやオズが乗り、最後に俺になる。全員が席に腰掛けた。クォンが御者席側だったので、馬車の壁面をコンコンと片手で叩く。それが合図となり、馬車はゆっくりと走り出す。俺は意外と疲れていたのか、座席のクッションに凭れ掛かった。


 王城に着き、三人で自室に向かう。途中でジュリアスやエルと合流した。


「お帰りなさいませ、殿下。学園はいかがでしたか?」


「いや、結構学園って広いのな。入学式の後、迷子になりかけた」


「そうでしたか、やはり。オズが一緒で良かったでしょう」


「ああ、本当にな。オズが同い年で助かった」


「そうですね」


 ジュリアスと他愛もない話をしながら、廊下を歩く。


「オズ、明日からよろしくな。クォンも」


「おーよ、俺も頑張らないとなあ」


「はい、僕の方からも。よろしくお願いします!」


 先がクォン、後にオズが返事をしてくれた。三人でニカッと笑い合った。ジュリアスやエルは微笑ましげに見守る。五人でしばらくは賑やかに語らうのだった。

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