リーダーは俺だ!
「お? ヤんのが? ゴラっ!?」
周囲を圧するようなモッカスの威圧を春風でも受けるかのような風情で、デスナイトの森山さんは巨人との距離を詰めていく。
恐れる様子もなく平然と近づいてくる森山さんを警戒して巨人は俺の身長ほどもあるスパイク付きの棍棒を構えて威嚇する。
「……やれやれ。また、コイツを殴らないといけないとはねー」
つまらなさそう言いながら鞘に収めた大剣を突き出すような構えに森山さんが取る。
すると、なにか危険を感じたのかモッカスはバックステップで距離をとった。巨体が爆ぜるように後退する様子は可笑しくもあった。
意外に機敏に動けるんだねー。
森山さんの倍くらいの巨体が身軽に動くのは、普通はなかなか脅威なのかも知れない。
腹は出ているが、確かに腕や足は筋骨隆々って感じだし……。
初対面の人たちにトップを張る宣言できるくらいの力量はあるのかも?
とは言え……。
「なんだぁ? おめーっ! おおっ!?」
モッカスは、その力量なみに森山さんとの実力差を感じ取ったのだろうか。
脂汗を流しながら意味不明な叫びをあげていた。
フランシアに来てからアレコレあった俺にとっても、この程度のイカれた巨人は特に恐れるに足らなかった。
俺が相手したとしても、空に飛んでから魔銃で射撃すれば終わりだろう。
「……今度は殺さないから安心してねー」
やる気のない声で、森山さんは鞘に収まったままの大剣を身長差からか突き上げるように繰り出した。
その剣先は、モッカスの鳩尾あたりにするすると伸びるように吸い込まれ。
「うぅぐっ……」
……そして、一撃を喰らったモッカスは駅の構内でもんじゃ焼きを吐き出すオッサンみたいな悶え声をあげて片膝をついた。
うーん?
後ろから見ていても、森山さんの攻撃はゆっくりと目で追えるくらいの速度だったのに。
なーんで、モッカスは黙ってもらっちまっているのだろうか?
「不思議? 不思議? 目で見えても回避できないとか? 不思議?」
巨大な棍棒を取り落として、悶絶する巨人をみて森山さんは上機嫌のようだった
彼女がドSだとは、ふんわり気がついていたけれど。改めて目の当たりにすると俺は複雑な気持ちだ。
そのSっぷりが、いつか俺に炸裂しない事を祈ろう……。
「あっれー? このデカいの。膝付いて気絶しちゃったよ……幻魔剣の感想を聞きたかったのに……」
幻魔剣。
謎ワードが飛び出したが、これを聞くと話が長くなりそうな予感がしたので俺はスルーした。
……たぶん、最初の一撃は目にも見えない高速で打ち出され。
相手の知覚がダメージを感じる前に、同じ軌道でゆっくりと再攻撃するとか。
どうせ、そんな無茶苦茶な回答が飛び出てくるオチだろう。
「んじゃ! そういう事で、私と佐嶋君が隊長って事で! みんなオケーィ?」
勇ましく大剣を空にかざして、森山さんが宣言する。
その他のモンスターさんたちはあっけにとられているが、戦意や敵意は感じられず……。
え? 事実上このまま森山さんの独裁を認める形になるのかこれは……。
おいおいおい。
なんで俺と森山さんで、モンスター率いなければいけないのよ。
こういう状況を誰かがまとめないと、とは俺も思うが。なにしろ面倒な上に、全員が女子でもない以前にモンスターとか無理だろう。
森山さんも、他人と関わるとデートの時間が削られるって事に考えがいっていないと思う。
すぐに面倒になって放り出すに決まっている。
……うーん。どうしよう。
あ、そういえば。リーダーと言えば……。
「いやいや。森山さん、間違い間違い」
「え? なんで佐嶋君?」
「だって、俺たちは副隊長じゃないか」
「え? あ、そんなのだったね」
「それに俺たちには、立派……じゃないけれど、リーダー……っぽいのがいるじゃない!」
私たちは、副隊長。
つまりリーダーは俺たちじゃない訳で。
「つまり俺様?」
モッカスとの軽い戦いに巻き込まれないように引っ込んでいた吉田さんが、出番とばかりにノソノソ出てきた。
「ええ……まぁ。吉田さん……かな?」
改めて吉田さんを見て後悔しつつも、面倒さ加減を考えると吉田さんに押し付けておこう。
……たぶん、新顔のモンスターさんの中にはマシな人いるだろうから。その人に運営は委託して。
吉田さんが名目上のトップとかで落ち着くとかなのかな……。
「ええー? いいの佐嶋君それで?」
「う、うん。 まぁ、そのほうが……いいのかなー」
「ウホっ! マカセトケ佐嶋氏! このゴブリン吉田がこいつらを精鋭ゴブリンにしてやるぜ!」
とかヤル気あふれる吉田さんを見ると。
……不安で。しかたない。




