テイク2?
『まぁ、やり直して欲しいっていうか……もうここに来た時点でやり直しなんで。ホントごめんね説明不足で』
さらっと謎王さんは言った。
……絶対に説明する気は無かったろ?
「ええ? やり直しって何が? 佐嶋君と離れたり、忘れたりとか言うの? 」
おおおう。森山さんが狼狽えておる!
っていうか、そういうのは俺も勘弁して欲しい……。
「えええ!? 嫌よ! これまでの記憶を消されたりしたら。佐嶋君の事を知らずにバラバラにしちゃうかもしれない!」
うーん。
記憶を消された森山さんに、俺が消される訳ね……
「……俺の事はどうでもいいのか?」
ぼんやりと確認する吉田さんをガン無視して森山さんは謎王に叫ぶ。
「ねぇ! どおーなのよ? そのやり直しって?」
『……まぁまぁ、落ち着いて。デスナイトちゃん』
「むぅ」
唸りながら腕を組み、徹底抗戦の意志をあらわにする森山さん。
俺も、記憶とか消されて最初から……とかは、やだなー。
『さっきも言った通り。ここに来た時点でやり直しなのではあるが、君たちは一度ガチャから排出されてマリスちゃんの手元に届けられた存在だからー。いくら私でも君たちのデータを触ることは出来ないなぁ……マリスちゃん怒ると超怖いから』
後半は、なにかを思い出してしまったのか。謎王さんの声のビビり具合に真実が見えた。
……この一見、どこをどう攻略して倒すのか見当もつかないような、途方もない存在の謎王さんを倒している魔王さんの実力が計り知れないな。
「で?」
『デスナイトちゃん。私がやり直して欲しいのは、マリスちゃんに提供する予定だった11連ガチャをやり直して欲しいのよ』
「ほお?」
謎王さんの申し出が、どうでもいい簡単な事とでも思ったのだろうか。森山さんはいぶかし気に声をだす。
「……ああ。やっぱ森山氏がほかのガチャキャラを殺っちまったのはマズかったんだな」
「ですよねー」
俺も吉田さんも、魔王さんが運営に問い合わせるとか言っていた時点で。
いつかこんな日がくる事を予想していたのかもしれない。
そりゃー。11連ガチャとか言って、3個しか出てこなかったら運営に苦情言うよね……。
『そこでだ、デスナイトちゃんには悪いけれど。いくらムカついてもこれからやり直す状況で、何も、誰も殺したりして欲しく無いのよ』
「……んー? あー? 要するに社長の所に11匹で行けばいいんでしょ?」
『まぁ、そういう訳。再現とは言え、今回ははゴブリン君とかヴァンパイア君がいるけど気にしないで。さぁーいきますよー!』
と、一方的に謎王さんは宣言した。
『ハーイ! やり直し~ぃ!』
「おおっ!?」「ほう?」「えええええ?」
謎王さんが、あまり気持ち良いとは思えない声で高らかに宣言すると。
俺たちの目の前に、ホワンホワン~っと冗談みたいに小さな集落が現れた。
『じゃ、私はガチャ回す用意するから。後はヨロシク~』
そう言い残すと。謎王さんは俺たちの視界から掻き消えた。
目の前には、塀も堀も無い謎の集落がある。
……人の気配は無い。
建物は、ほんとうに粗末な丸太で組んだ掘っ立て小屋が集落の中心を囲むように10軒ほどあるだけだ。
「……これが、森山氏が言っていた村ってやつか?」
「そうそう。この村に入るとさ、なーんかムカつく馬鹿がいて。ついヤっちゃってさ、その後はバトルロイヤル? ってやつ?」
うん。だから、今度はそれはナシでお願いしますよ……。
「こ、今度は、謎王さんの言う通りでクールに行きましょう……ね?」
「まぁ、イイケド……」
「……やれやれだぜ。森山氏がたのむぞ」
「なによ吉田さん。大丈夫だって……たぶん」
うーん。そこはかとなく不安が……
「と、とにかく村で他の……みなさん? と会いましょう!」
案外、本当はみんな気の良いヤツばかりで。
このやり直しで俺たちは、11匹のナイスなモンスター軍団になれるかもしれない!
俺は、そんなことを無理やり考えるようにしながら村に向かって進んだ。




