謎王
予想はしていたけれど。
まー。なんというか。
大抵のエンタメのアニメや映画、コミック、ゲームなどなどには、
必ず一人や二人や三人や四人は、イっちゃってるっていうか。
エキセントリックな外見と内面を持ち合わせて大活躍してくれる愉快なキャラとか鬱キャラとか鬼畜キャラとかがいるもので。
絶対に謎王はそういう枠の存在だと考えていた。
なにせ神さま的なポジションでありながら、謎王とかぞんざいなネーミング。
そして魔王さんに力の半分を奪われてそのまんまの人。
絶対にマトモでは無い。
「……まぁ、そうだろうと思っていたけどね」
つぶやく森山さんの声から。
俺と同じ思いらしい。
回廊の壁面に設置された大型モニターに映し出された謎王と思しき存在は。
どう見ても、落ち武者芸人としか表現できない。
男の外見など本当にどうでもいいのだが。
髪は落ち武者まんま。
姿は上半身裸の格闘家、黒いスパッツはいている。
で、裸の上半身にやけに豪華な作りの銀色の毛皮コートを身につけている。
以上。
あ、顔か。
顔は良く見ていないけど、酔っ払ったネアンデルタール人ってこんな感じだったのかな?
って感じかな……。
その落ち武者が、開口一番ハイテンションのオッサンボイスで言うのだ。
『ハァ~ぃ! プリマリ―ちゃん? この子達が困ったちゃんね?』
「……悪いけれど。リモコンとかない? この画像消したい」
困惑と嫌悪が7:3くらいで混合された声で森山さんがプリマリ―さんに伝える。
「リモコンは知らんが。謎王はいちおう神々の座を占める一柱。いちおうの敬意を持って接するべきだ。……と、いちおう言っておく」
一文に3回も「いちおう」を使いながらプリマリ―さんは森山さんと嗜める。
「……あ、えーと。はじめまして謎王……様? 私は魔王マリスカレン様に保護されている佐嶋というヴァンパイアです。そして、鎧の彼女は森山です」
『あー、うん。知ってる~。私が謎王だからよろしくね』
……う、うーん。
とにかく、絶対に名乗らないと思われた森山さんも合わせて紹介した。
これが礼を取ったとは思えないが。仕方がない。
せいぜい相手が機嫌を損ねないように祈ろう。
『でさ、でさ! 立ち話もなんだから。君たち、こっちで話さない? 私はマリスちゃんのお尻……じゃない、お城には入れないし』
「……神に呼ばれているぞ。どうするお前ら?」
皮肉気味にプリマリ―さんは俺たちに言う。
「拒否しても良いんでしょうか?」
「お勧めはしないな、現状はマリスカレン様に協力して頂いている」
『そうそう! 私はマリスちゃんに協力してるだよー! 大丈夫! 話すだけ、怖くないから。あ、プリマリ―もこっち来る?』
「……いや。私が回廊から動けないのはご存知でしょう。ここから動かないのが私の務め」
『あー。うん。知ってた』
「……はぁ。では転移門を開きますので受け入れお願いいたします」
プリマリ―さんはため息をつきながら回廊に転移門をシュっと出現させてた。
「えー? 行かなきゃダメなの?」
心底嫌そうな森山さんの声。俺も行きたくない……。
『いやー。悪いけれど。モリヤマだよね? 少なくとも君には絶対来てもらうよー。今の君たちの状況はモリヤマが関わっているからさー』
「え?」
「え? なによそれ?」
俺も森山さんも声を上げた。
……どうやら俺たちは落ち武者の話も聞かなければならないみたいだな。
「行ってみよう。森山さん」
「えー? 行くのぉ?」
なんらかの意味や理由があってこの世界に呼ばれたのか。
それとも単に運命の悪戯なのか。
知るべきことがあれば、知っておきたい。
あ! でも。
「俺たちが、勝手に城から出るようなゲートを使っていいのかな? 魔王様に怒られない?」
「安心しろ佐嶋よ。我はマリスカレン様の分体。大きく言えば、私が許したことはマリスカレン様も許される」
なんだかプリマリーさんは魔王さんみたいな口ぶりで俺に言った。
「それと身の安全は心配しなくていいぞ。謎王が本気でお前たちを消す気なら、最初からこの世界にお前たちはいない」
良くわからないプリマリ―さんのお言葉は、ひょっとして俺たちを安心させているつもりなのだろうか……。
とにかく俺と森山さんはプリマリーさんの作ったゲートから、謎王の所に向かう事にした。




