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回廊での話



 プリマリ―さんはうつむき加減に床を見つめるように話し続ける。


「……生あるものは基本的に争いを止められん。木々や花々も光を求め生ける場所を奪い合うように、我々もまた争う定め」



「……はぁ」




 俺も森山さんも何となくプライマリーさんの語り部的な雰囲気に呑まれたのか、聞き役に徹する流れだった。




「そしてこの世界フランシアを形作った二帝七王にも相克やいさかいがある」



 この二帝七王ってのは。まえに魔王さんが言っていた。冥王とか覇王とか謎王とかなのだろう。

 でも、そう言えば。二帝ってなんだろう。この二人? は別格って事かな。

 あとで誰かに聞いてみよう。




「そして二帝七王の争いは、必ず覇王が口火となるがことわり



 ……これは、なにかこのままだと誰かに翻訳してもらわないと意味がわからない事になるかも?





「これってアレなの? ゲームスタートの最初の一回は強制的に見せられるムービーみたいな感じ?」


 いちおうプリマリ―さんに気を使ってか、森山さんが俺に小声で話しかける。


「ようは、神さまの戦争はいつも覇王って人がスタートさせるルールってことでしょ?」





 語り出したらプライマリーさんなんかトランス状態っていうか、しゃべりが止まらない。




「かの日。覇王は謎王と共にフランシアに13度目の覇を唱えるを掲げ、覇王は竜を従え謎王は異界から下僕しもべを呼び出さん」




 ふんふん。ありがち、ありがち。


 でも13度目の覇ってなんだ? 覇王さんは12回は世界制覇したことあるってこと?

 それとも13回目の世界統一タイトルマッチに挑戦したってこと?


 まぁ、どーでもいいか。そのうち判るだろう。




「覇王、謎王の両王に対して異を唱えたのは魔王と冥王。二帝と他の王たちは静観となった……」




「二対二のタッグマッチだったわけね」


 

 森山さんは争いの話は好きらしい。かなり乗り気でプライマリーさんの話を聞いている。

 と言うか、人の話をまともに聞いている森山さんは珍しいかもしれない……。




「魔王は配下の魔神たちを率い、冥王は死者の軍勢をもって戦に臨んだ。激しき戦いの末に、まず魔王が謎王を打ち倒した。約定に基づき魔王は謎王の力のなかばを手中にし、その力を持って魔王は覇王をも封じた」




「……そんなルールなら、最初に一勝した方が断然有利じゃん」


「魔王さんが二勝先取っていうか、二人とも倒したんならもう決着ですよね?」




「……しかし、そうはならなんだ」



「ほう?」



 森山さんがガチャりと音をたて、首をかしげる。なんかカワイイ。

 首をかしげるデスナイトカワイイ!




「本来、倒れた覇王の力は倒した魔王マリスカレン様に向かうはずだったが。どういう訳か、その力を冥王が受け取った……詳細は謎だ」



「謎ねぇ……」


 

 なんとなく呆れ気味に森山さんが受ける。

 魔王さんを、倒したモンスターのドロップアイテムを横取りされた人みたいな感じに思っているのだろうか。

 



「……ともかく。勝者が、敗者の力の半ばを奪い。そして返還の条件として次の平穏を誓わせるのが習わしだったのだが、為されなかった」



「冥王が、覇王の力を横取りして。しかも返さなかった?」



「……形としてはそうだ。そして魔王であるマリスカレン様も、謎王に奪った力を返還すれば意図の不明な冥王との不測の事態に対応できなくなる可能性があった」




「あー。なるほど? でもそれって習わしとかってどうなるの? 社長もギルティになっちゃう的な?」



「……我にもわからぬ。ただ二帝と他の諸王は静観のまま時が流れている。謎王は、名目上はマリスカレン様に協力する姿勢だ……まぁ、力の返還を希望している為だろうが」




「冥王さんと魔王さんは話したのでしょうか? ……その、ルールを守った処理をしてもらえるように冥王さんに話すとか……」



 天使戦でも名前が出てきた冥王。

 なんか、どうやら魔王さんとは現在は敵対なのかな? でも、昔は仲間だったみたいな?


 ……あれ? でも冥王は死者の軍勢とか率いていたとか言うのに。なぜに天使とかが部下にいるんだ?

 確認したい事が、どんどん増えていく。

 

 そして俺の問いに。

 プリマリ―さんは歯切れの悪い調子で答えてくれた。

 なにか痛いところらしい。


「……我が生み出される前に、マリスカレン様と冥王は話し合ったようだが……覇王の力は戻らず、覇王も行方知れず。そしてマリスカレン様は謎王から得た力の一部を使い、我々家令スティアートどもを作り出した」




「んで、それと私や佐嶋君との関係ってなんなの?」




「……それについては謎王から直接聞くがいい」



 そう言うとプリマリ―さんは顔を上げ、回廊の壁面に掲げてあるモニターのような黒い板切れを指差した。

 

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