グラハムさん転がる
森山さんの準備完了の声を受けて、グラハムさんが斧槍を構えた。
切先が俺たちの喉元を狙っている。
「では、参りますぞ!」
守護騎士グラハムは体型からは想像できなかった素早い足運びで鋭い突きを繰り出してくる。
巨漢は動きが遅い。
そういう先入観は止めた方が良いのかもしれない。ああ、そう言えば相撲とか見てると直進する速度は早いよね!
踏み込みによる加速にグラハムさんの重量が乗った斧槍の切先が、真っ直ぐに森山さんの兜を狙って伸びてくる。
「ほい!」
ちょっと可愛い声で森山さんが、構えた大剣を飛んでくる斧槍の切先に打ち下ろす。
激しい金属音と共に、斧槍の切先は軌道を大きく逸らされ森山さんの左下に流れる。
そして、逸らされつつも伸びてくる斧槍を森山さんは身体を右に流して回避す。
と、そのままグラハムさんに向かって踏み込んで右肩からの体当たりをグラハムさんにブチ当てた。
グシャっ!! と鎧と鎧が音を立てて衝突する。
すごい勢いでスっ飛んで闘技場の地面に転がるグラハムさん……。
「……」
森山さんは追撃はせずに、無言で大剣を中段に構えなおす。
「ふ……フフッ。な、なかなか。そう。なかなか、ヤリますな!」
明らかに、なにか狼狽えたような声をグラハムさんは絞り出す。
森山さんの一撃に衝撃を受けているようだ。
鎧を着たまま地面に転がったグラハムさんは、素早くうつ伏せになってから器用に起き上がる。
ふーん。鎧を着たまま転がっても、けっこう早く立てるんだな。
最も、うつ伏せになったところを上から攻撃をかぶせられたら終わりだから。
転がらないに越したことは無いのだが……。
わからん。グラハムさんが弱いのか?
それとも森山さんが強すぎるのか。いまいち地味な攻防なので俺には何とも言えないが。
唯一のギャラリーのレオナさんは大満足のようだ。
「おー! すごいすごい森山様! すごーい!」
「いやいや。それほどでも」
なんかドヤ顔ならぬドヤ声を含ませたように森山さんが手を振ってレオナさんに応える。
……この二人は、仲良しになるかもしれないなー。
など。俺がちょっとほっこりするのも束の間。
ヨロヨロとグラハムさんが俺たちに近寄ってくきた。
「な……なるほど。なるほど……マリスカレン様がお選びになっただけはございますね」
なんかグラハムさんは、余計なヤル気スイッチが入ってしまったのか。
打ち震えるような深い声は、戦意にあふれている気がする……。
本当にどーなってしまうんだ? 俺たちの古城巡りデートは。




