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森山さんが言うには

 ふと。森山さんを見ると。


 意外な事に気がついた。

 守護騎士がグラハムと名乗ってから。



 なんだろう。

 森山さんの気配が変ったような……。

 そう。森山さんが戦う前にこういう感じになる。

 と、言う事は森山さんは闘技場で一戦する気になっているという事か……。



 まいったな。古城デートはバトル付きらしい。

 



「……お二人は、この界に来て魔道は学ばれましたかな?」


 球体の騎士が俺たちに語り掛ける。


 魔導? 魔法の事か?





「いえ。まだ、と言うか。俺は、ぜんぜん戦えないし剣どころか魔法なんて」



「……ほう。そうは見えませんが」



「いや。マジで俺は雑魚です」




「ふむ。しかし、誰もが最初はそのようなものです」



「はぁ」



「佐嶋さん。貴方は自分自身の弱さから目を逸らしていない。見込みがありますよ」



 なんだか挨拶もそこそこに、この守護騎士のオッサンは教官って感じをバリバリ出している。

 いや、俺はただ森山さんと古城デートしたかっただけなのだが……。




「私も魔法とかぜんぜん使えないと思うな。使ったことないし!」


 

 

「ほうほう。森山さんもですか。では、今回は魔導の使用は控えてお相手しましょう」




 ああ。球体の守護騎士さんは俺たちが戦う前提で話している。

 まぁ、そういう 場所なんだろうけれど……。

 守護騎士さんも腕に自信があるんだろうけれど。俺はともかく森山さんはハチャメチャに強ぇえぞ!


 


「……ま、とりあえず。要は、この人と戦えばいいんだよね?」


 

 ヤル気なさそうな声をレオナさんに投げている割には、積極的な森山さん。



 レオナさんも心なしか微笑みに何かを期待するような表情も見れる。あえてこの場所に俺たちを連れてきました感がダダ洩れだ。




「正直に申し上げますと。モリヤマ様の剣の冴えがグラハムさんにどのように映るのか……楽しみです」



「フッ。まぁ、良いけれど。佐嶋君。入って」



 森山さんは胸甲ブレストプレートを開いて俺を招く。

 え? なに? また俺と森山さんの合体戦闘とかするのか?


 

 そう言えば森山さんはアドリブが多いので、俺も一つ一つに覚悟が必要だ。


 VSレオナさん戦の時には、俺は頭蓋骨を砕かれている。次は何を砕かれるのだろうか……。




「グラハムさん。佐嶋君は戦闘は苦手だから私の中で見学して欲しいのだけれど良いかな?」



「ええ。構いませんよ、佐嶋さんもその方が為になるでしょう」

 



 守護騎士のオッサンが野太い声で快諾したので。俺は覚悟を決めて森山さんの中に入った。



 森山さんの鎧の中は気の遠くなるような深い闇。彼女によって胸甲ブレストプレートが閉じられると深淵の中で俺は浮いているのか落下し続けているのかわからない感覚に襲われた。

 

 このまま一時間も放置されていたら、精神に異常をきたす人もいるのではないか……そんな気もする。



「佐嶋君。まずは相手をよく見て」




 森山さんの声が聞こえると。俺の視界は森山さんのそれとリンクするように切り替わる。


 森山さんとの視界共有モードはこれで二度目だが。これってすでに魔法なんじゃないか?

 とか、俺は思う。まぁ、よくわからないので今はとりあえず森山さんの言う事に集中しよう。


 えーと。相手をよく見るっと。



「デカいな」



「そうだね。でも、それが重要じゃなくて。相手のくらい……姿勢だね。立ち方、構え方、呼吸、目の動きとかを瞬時に感じて相手の雰囲気を見るの」



「ふむふむ。で、なんで守護騎士さんは襲ってこないんだ?」





「それは。グラハムさんが、いま私たちがこうやってアレコレ話しながらやっている事を察して待っているんだよ」



「思いやりか?」




「そうだね。でも、それだけじゃない。戦いには察する事がとても大事。相手の意図や行動が前もって予測できると便利だよね?」



「うん」


 それは俺でもわかる。相手が右の拳でパンチをしてくるとわかっていれば、いくら俺でも下がったり相手の左側に回り込んだりする。格闘などの経験があれば、さらに選択肢が多いだろう。


 相手が何をするかを事前に判れば、結果はどうあれ対処もそれだけ楽になる。

 そう言えば、大天使との戦いの前に炎の魔法を俺は事前に感知した気がするのに。なぜ、冒険者とかの戦いのときに魔法の予告みたいなのが無かったのだろうか?


 そんな俺の疑問は森山さんにはわかるはずもなく。森山さんは話し続ける。


「そういう。……思いやりとかの日常生活上での『察する』も戦闘での『察する』も全部合わせて私の家では『観法かんぽう』と言うの」



「ふーむ」


 森山さんは、なにやら不思議なご家庭の産まれなのだろうか?

 俺の実家でカンポウと言えば、漢方薬とかが変換候補の筆頭だ。次点が艦砲とかかな……。



「観法はアレコレ頭の中で考えるじゃなくて、瞬時に鮮明に現れて身体の動きと連動するようにしていくように身につけていく」



「えええ?」


 

「大ジョブ。最初からは無理だから、はじめは意識してOK」



「わかった。意識する……。うーん。相手は丸いから、高速で転がって体当たりとかしてくるんじゃないか? ゲームっぽく?」



「うはは。私は、そうは思わないけれど。そうそう。そんな感じで予測するのも観法」




 なんだか森山さんの声が優しい。

 ずっと剣道やっていたみたいな事を彼女から聞いていたから。やっぱり関係するの話が好きなのかな。 




「そそ、最初は。そんな感じで良いの。漫然と見るのではなくて、明らかに見ようとするの。これからの戦いで、私の腕や足が吹き飛ばされても。あるがままを見る、そして勝利のために最適な動きをするために見続ける……」



「ええ?」


 なんだ。怖い話になって来たぞ。




「大丈夫。佐嶋君は痛くない。でも、痛みがあったとしても。恐怖があったとしても。命ある限り戦う。その戦いを最後まで、より良い内容にしていくのが観法なの」



「うーん。まぁ、なんだかわかった気がする」





「フフフ。今回は鎧の中で私とグラハムさんの戦いを見て。慣れないうちは、なぜそうなのか? どうしてなのか? とか考えながら見ると面白いかも。そのうち考えなくなるけれど……」



「そういうもの?」


「そういうもの。さて、相手をだいぶ待たせてるから始めるよ」



「わかった。OKだ」



 

 森山さんは、すこし左足を前に出して両手で大剣グレートソード構えた。

 剣先は天空を突くように立てて右手側に寄せる。なんだか野球のバットを構えるみたいな感じだ。


 

「……お待たせです。いつでもどうぞ」


 

 森山さんが守護騎士に告げた。 


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