【side 奪われるために動く者たち】
冒険者パーティ『フレイロード』のメンバーと、今回の依頼主であるクレイカノーンはエングラノスト帝国の帝都にある冒険者ギルド『ティンクトラ』に集まっていた。
「あーーっ! もう! 占ってもらったアリエルさんの言う通りにしたけれド。なんかモヤモヤする!」
紫焔のエリエリが不満気に言う。
「ああ。なんか納得いかないよな。消化不良と言うか……攻撃の姿勢を見せながらも攻撃してはいけないとかふつうナシだよな」
聖騎士のショウもエリエリに同意する。
そんな消化不良気味な二人の言を、憔悴しきった顔でクレイカノーンがつないだ。
「……仕方ないのです。転生者のアリエルさんが、あの魔物を一人でも倒せば魔王マリスカレンが顕現するというのですから」
「むー。レオナさんも助けられなかったし!」
「彼女の姿も見ることが出来ませんでした……汚されずレオナが眠ってくれていることを祈るばかりです」
「クレイカノーンさん。その件についてのアリエルさんの見解はどうだったんですか?」
「魔王の影でなにも見えず……とのことです。」
「……」
いつになく真剣な面持ちで沈黙しているもう一人の『フレイロード』の聖騎士クレシャを気にしながら依頼人のクレイカノーンが尋ねた。
「それでショウさん。相手はやはり転生者ですか? あと力量なども気になります」
「ええ。それは間違いないでしょう。モリヤマさんとか、サジマ君とか呼び合っていました。相手は転生者で確定かと。あと力量は……正直不明です」
「……少なくともー。死の騎士は、訓練された足運びをもっていました。ヴァンパイアとゴブリンは不明ですー」
ショウの発言を引き継ぐようにクレシャが沈黙を破って語り始めた。
「そうそう。そういうの、前衛の人たちってサ。たまに相手の動きとかで強さとか見たいなのがわかるみたいなこと言うけれど。その感覚ってアテになるノ?」
「魔法はー。そう、極端に言えば相手の魔力がわからなくても。目に見える形で発現する術式から相手の具体的な力がわかるときもありますよねー」
「うん。 私だって、もし相手が百万紫電とか詠唱しはじめたらちょっと警戒して対策するヨ 熱もやばいからネ」
「格闘や武器戦闘だとー。魔法戦より戦闘している者の距離が近い場合が多いのでー。技の形で相手の力量が発揮されれるより前に、自然と相手をよく観察します~。そういう回数が多くなると、何となくわかるのですー」
「ふーん? じゃ、あのデスナイは強いの?」
「吹っ飛ばされておいてこういうのも何だけれど。俺はデスナイの動きはそんなに速いとは思わなかった。相手の攻撃ははっきり見えていたのに、かわしようが無くてもらっちまった感じだ」
「……いや、ショウさーん。それが、技なんですよー」
「あ。あれは何かの技なんだな。体当たりと変なパンチみたいなかと思ったけれど……。俺は剣の技とかなんとなく使うけれど。訓練はしたことないからな」
冒険者は、モンスターや動物などとの戦闘は数多く経験するが。剣技などの訓練を修めた存在と戦うことは少ない。
人型のモンスターも多く存在するが、系統だった技術の継承の結果である武術をモンスターが使うことは稀だ。
「……それで、あのデスナイは俺の事を素人とか言ってたのか?」
転生前は、ただの高校生であったショウとは違い。元々はエングラノスト帝国の騎士であったクレシャは。幼少時から剣技をはじめとした武術を経験している。
武術の基礎の知識や経験はショウやエリエリなどとは比較にならない。
それであっても転生者であるショウと、クレシャが戦えば最初から最後までクレシャの優勢で戦いが推移するだろう。
しかし、クレシャがかつての人であったころのままであったならば、最後に立っているのはショウである。
それはクレシャ自身が一番理解していた。
それだけ転生者たちの持つ、神の祝福による強化は凄まじいものがあった。
以前はフランシア産まれの者たちはその神がかった力を羨み、ときには妬みすらしたが。
いつか、どうしようもない差を認識し共に力を合わせることを選択している現状がある。
「まぁー。そうなんですかねー。私に言わせると、敵もかなり酷いと思うのですがー。特にヴァンパイアとかはあからさまに戦闘にビビってましたよー」
「私の魔法に対する反応も遅かった! 攻撃を当てて傷付けないように! って預言じゃなかったラ。私は奴らを焼き尽くしてたヨ。おめーらがシロウトだゼ! って感じ」
「まぁ、そうは言っても。一人でも相手を倒せば魔王が登場でしたから……。今回は相手の力量は、保留ですかね?」
ため息をつきながらクレイカノーンが締めくくる。
「まぁ、相手が転生者であることがはっきりしただけでも良しとしますか」
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