さらば大天使……永遠に。
俺は、話がややこしくなる前に先手を打つことにした。
「あ、あのー。400年前は男性って本当ですか?」
俺は、普通こんな失礼なことを初対面の女性(?)に言ったりはしない!
しかし。
天使さんがファンタジー物にありがちな。どっかの有名人と主人公がクリソツみたいなフラグ打ってきたので。これは無視したい。
こういう伏線みたいなの活かされると、あとあとさらに面倒になる気がする。
「め、冥王様! わたくしです! 召喚委員会の大天使ミカエラでございます! お助け下さい! 魔王の配下に襲われているのです! どうか御助力を!」
……んな事は、聞いていないのだが。
なんだか天使さん。もとい大天使ミカエラさんは、どうやら俺を冥王さまという人物と勘違いしているらしい。
わかる。
その冥王とかも、なんかのトンデモ存在なんだろう?
しかし今は、そんな事に興味はない。
「……もう一度だけ聞く」
「え?」
「ミカエラさん? って400年前は男性って……本当ですか?」
「……あ、はい。昔はたしかにそうでしたけれど……でも。それは委員会で、召喚担当者は女性神格であるか、あるいは対象を錯覚させる事が営業的に望ましいって……それで今はこの姿ですけれど?」
「……」
……正直、彼女……いや。ヤツの言っている意味はよくわからない。
しかし。
本性はオッサンであることは認めた……それは理解した。
――ドクンっ――
俺の中に一瞬でドス黒い炎が吹き荒れる。
……もうお前と話すことも伝える事もない。
白い肌、溶かし込んだ純金のような髪。サファイアのような瞳……。
全部、嘘。
くびれた腰とか、水色の衣服からもあらわな胸のふくらみ……。
元はオッサン……。
「ふ、フフフっ……髭……か」
「え!? め、冥王様!?」
――消滅するがいい!
俺は無言で魔銃を構えると迷わず大天使ミカエラという元オッサンに銃口を向けた。
「ひゃっ!? ヒィィイイ!? 冥王様!?」
「無駄にカワイイ声とか出してんじゃねーーーっよ!!」
大天使……いや、俺はコイツを天使だとは認めない。
元オッサンは俺の怒りの理由も。なぜ攻撃されるかもわからないようだった。
まぁ、性転換して天使ゴッコしているオッサンにはわかんねーだろーな……。
おっと。
そう言えば。俺もわからなかったことが、さっきわかったんだ。
吉田さんを間違って消滅させてしまった後に気がついたんだ。
ファインベルクにはスコープなんていらないんだ。
目標を感じるだけでいい————
俺は引金ひいた。
ファインベルクの銃口からは、黒い閃光が放たれる。
まるで俺の黒い怒りの炎が噴き出したようだった。
「めいぉおおおおさまーーーぁああああ~っ」
本当に……本当にかわいい声を残して、大天使は消えた。
「素晴らしいぞ! サジマよ。一皮むけたな!」
大天使の消滅を確認すると。魔王さんが俺を微笑みながら祝福してくれる。
……いや。
俺はまだむけてねえっス。




