焦がしてます
輝く神殿に俺たちが近づくにつれて戦闘の様子がはっきりとしてきた。
たぶん神殿は本来は白い石造りの建物なのだと思うけれど、どういうシステムなのか?
神殿を形作る石材自体が淡い光を放っている。
その神殿の前で四枚の翼を煌めかせて戦う美女が恐らく今回の天使狩りの獲物の天使さんなのだろう。
魔王さんと俺たちは戦車をほど近く離れた場所で停止させる。
魔王さんは戦況を確認しているのだろうか。しばらく配下の黒衣の騎士たちの動きを眺めている。
俺も魔王さんからの攻撃の指示が無いのでしばらく魔王さんにしがみ付きながら観戦することにした。
うーん。戦闘とかマジで出来るんだろうか俺は……。
天使さんと戦っている騎士の皆さんは戦車から降りて戦い。それ以外の騎士さんたちは、天使を神殿事囲むような形で戦車を浮遊させている。
いわゆる袋叩き状態なのだろうか……。
それにしては騎士さんにも天使さんにも目立った被害や傷などは見当たらなかった。
複数の騎士さんに囲まれている天使さんは。薄い水色基調のゆったりした衣服を身につけた天使さんは武器も持たずに戦っている。
魔法使いなのかなぁ?
などぼんやり俺が見ていると――
――ドクンっ――
俺の中で、一瞬。
なにか赤い光のイメージが見えた。
「え!?」
「どうした? サジマよ。なにか感じたか?」
面白そうに魔王さんが俺に振り向く。
「そろそろ私から離れても良いぞサジマ。デスナイトの目が怖いぞ」
「わわわ!?」
俺は慌てて魔王さんに密着させていた身体をはがして、俺は魔王さんに一瞬見えた赤い光を説明した。
「サジマよ、それが属性の予測だ。そろそろ天使が火属性の技や魔法を使う……という予測だ」
「ほう?」
「相手が次に何をしてくるのか、その情報がわかれば対策も取りやすいだろう?」
「たしかに。では、騎士さんにも教えてあげ――」
俺が言い終わる前に。
――天使の技が発動した。
『炎よ! 炎よ! 炎よっ! 我が声に集えっ! ――焦焔烈火』
天使さんが四枚の翼を広げ、両手を天に掲げる!
天使さんを中心に赤い光が輝きはじめるが。騎士さんたちも黙って見てはいない。
ガラ空きになった天使の胴体へ思い切り槍を繰り出し――
一瞬で焔が爆ぜた
炎の爆風に吹き飛ばされた騎士たちの槍先は赤熱して溶けかかっている
騎士たちの鎧もところどころ赤熱して溶けていた。
凄まじい熱量が一瞬で放射されたはずなのに。俺たちにはまったく影響はない。
「我が騎士たちが天使の結界の上からかぶせるように、我の加護を受けた結界を張り巡らしている。天使どもの力が及ぶのは、己の結界の中だけだ」
魔王さんが教えてくれるが。では、天使を倒すにはその天使が存分に力を振るえる場所に殴りこんで倒さないとダメなのか?
「さてサジマよ。我がここで見守ってやるからお前は、ちょっと行って天使を倒してこい」
……それが答えなのか?
「え? あ。ハイっ。 えーと、ここからファインベルクで射撃してはダメでしょうか?」
「いや。それでも我はかまわないが。それだと戦っている我が騎士たちも天使と一緒に消滅してしまうな。大切な部下を無駄に失いたくないので、できれば天使に近づいてから射撃してもらうと嬉しいかな?」
「うっ。では、とにかく行ってきます……」
「安心しろ。サジマよ。私が見守っているのだ、死にはしない」
魔王さんは笑顔で俺を励ましてくれるが。その『死にはしない』で、吉田さんがどうなったのかを忘れてしまっているのだろうか……。
ともかく俺は天使とのバトルの為に戦車を降りると。魔王の戦車の少し後ろで控えていた森山さんと吉田さんを振り返る。
そう! 俺には仲間がいる!
いまこそ三人で力を合わせて天使を……
「……」 「……」
俺が振り向くと、森山さんも吉田さんもバイバイ~って感じで手を振っていた。
「……助けてよ」
「サジマよ、今回はお前ひとりで天使を狩るのだ。訓練だと思って楽に挑め!」
魔王さんのお言葉で、俺は天使さんとタイマンってことになった……。
俺って、喧嘩したのって小学生以来なんですけれど……。




