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魔王さんを後ろから……

「さぁ、手順はいつも通りだ! お前たち! 先行して相手の結界の上からさらに結界を張りかぶせろ!」


「「「オオッ!!」」」



 魔王マリスカレン指示に、戦車チャリオットに搭乗した騎士たちがそれぞれの剣や槍などの武器を掲げて応える。


 すごい迫力だ。



「かぶせた結界を破られるなよ! 結界支点には今回は三騎つけろ!」



「「「オオッ!!」」」


 騎士たちを乗せた戦車チャリオットは滑るように夜空に舞い上がり魔王さんが指し示す方向に進んでみるみるその姿が小さくなっていく。


 やがて彼らは夜空に吸い込まれるように消えていった。

 残るのは魔王さんの戦車チャリオットと森山さんと吉田さんを乗せた戦車だけだった。

 森山さんと吉田さんを乗せた戦車には、それぞれ魔王の配下の騎士さんもいるので。二人とも相乗りの形だが。吉田さんはともかく。森山さんの乗った戦車は一目で定員オーバー気味の状態だった。


 

「……森山さん、窮屈じゃない?」


 見かねて俺が声をかけると。


「大丈夫 私は見た目より軽いから!」


 なんだかご機嫌よろしくない様子。やっぱ俺が魔王さんと一緒で距離が近いからかな……。

 森山さんを乗せた戦車の騎士も、森山さんの不機嫌な空気にあてられてなのだろうか。

 なんだか居心地悪そうに見える……。



「魔王様! 我々は出撃しないのでしょうか!」

 

 吉田さんが元気よく声を出す。数分前は世界から消滅していたとか嘘みたいだ。

 ホントよかった。


「ヨシダよ焦るな。いま私が大天使に近づけば相手は即座に逃走するだろう。私の騎士たちで逃げ道を塞いでから絶望を味わってもらうのが私の趣向だ」



「なるほど!」



 吉田さんは納得したようだ。それにしても、魔王さんの実力はやっぱり大天使とかなんだか強そうな存在より上なんだな。

 これは思ったより楽勝かもしれない。よかった。


「さて、頃合いかな。さぁ、我々も行くぞ! サジマよ私によくつかまれ」


「え?」


 スルスルと魔王さんと俺を乗せた戦車チャリオットが動き出す。

 少し遅れて、森山さんとゴブリン吉田さんを乗せた戦車も続いてくる。



 ……いや。魔王さんの戦車に乗せてもらってはいるけれど。

 俺は、飛べるし。転落しても問題ない気が……。



 など思っていると。魔王さんが小声で俺にささやいた。


「サジマよ。私に後ろから触れてみろ。どこをさわってもいいぞ……」



 青黒く輝く馬たちを御しつつ魔王さんがいらずらっぽく微笑み振り返る。


 

「遠慮するな、魔王に触れるとか滅多にない機会だぞ」


 うう。


 そ、そう! 魔王さんの命令だから。

 しかたないよね!


 という事にした。


 ……では、遠慮なく。


 ちょっと前から気がついたのだが。魔王さんは意外に高身長だ。

 175センチくらいはあるよね。

 

 俺と、そう背丈が変らない魔王さんの腰に手を回して後ろから抱きつくと。

 なんとなく右手は魔王さんの胸をつかむようになった。


 しかし魔王さんはいつものビキニアーマーではなく。金属のような胸当ブレストプレートてを身につけているので柔らかい感覚は味わえなかった。


 うう。ちょっと残念


 しかし。


 なんだか、なんだか。痴漢みたいだな俺……。



「……サジマよ。お前は勇気がある。それとも単に身の程知らずの色好みか?」

 

 うう。よく意味がわからないけれど。たぶん後者の方です。



「まぁいい。だが魔王にここまで遠慮なく触れたのだ。後で責任は取ってもらうぞ!」


 

 触れとか命じておいて、それはないだろう。

 とか思いつつ。


 俺は魔王さんの名状しがたい素晴らしい香りを楽しみながら夜空の騎行を楽しんでいた。

 

  


「ほら。サジマよ見よ。天使があがいているぞ!」


 

 魔王さんの肩越しから見える俺たちの行く先に、時々光を放つ神殿のような物が見える。

 どうやら神殿からたまに見える閃光は、天使が魔王の騎士たちと争っている光らしい。


 魔王の騎士さんたちも強そうだったけれど。大丈夫なのだろうか。

 ちょっと俺は心配になった。



「あそこに今夜我々に狩られる天使がいる。サジマよ一気にレベルアップの機会だぞ!」


「レベルアップ?」


 俺はバカみたいにオウム返しをしてしまった。


 ……レベルアップとかあるんだ。



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