【side 自称大天使ミカエラ】
大天使ミカエラは今日もまた新たな生贄を探していた。
選び放題だ。
神々の最近のお気に入りは日本人だ。
基礎能力が高いのに意識レベルは低い。
そしてなにより。異界の神の教えなどに染まっていない。
神の存在をなんとなく信じつつも、特定の神を信仰していないとか最高の素材なのだ。
善良で騙されやすく。情が深い。
信者にするには最適とミカエラが仕える神々が日本人を愛でている。
神々が苦労して切り開いた異界へと通じる流れは、当初は大変不便で人間一人さらってくるのには膨大な魔力を必要としたが。
ここしばらくは異界の人間たちが発明した電子機器を介してのアクセスが出来るようになったために。昔と比べると格段に楽になった。
今日もミカエラは日本中に放ってある見張り小僧を介して、新たな信者ともいう生贄を選定していた。
「うーん。女子が少ないから、出来るだけ元がカワイイ感じのメンヘラちゃんが良いかな……」
独り言ちてミカエラは今日の転生者候補の詳細を確認する。
見張り小僧の送ってくる視覚情報や文字情報が統合されたデータとしてミカエラの意識に流れ込んでくる。
「えーと、福岡県在住の 班目 綺羅星さんか……これでマダラメ キララって読むんだ。ふーん。日本語って難しいなぁ」
ミカエラはフランシアの中央大陸の草原に簡易な結界神殿を構築している。
しばらくはここを拠点にして人間をフランシアに誘拐しようと考えていた。
今日は一日中つごうのよい日本人を探していたので、気がつけば夜になっていた。
ターゲットは、高校卒業後に社会に出て会社勤めに適応できずに早期退職。
ブラック企業に植え付けられた働くことへの恐怖感で社会復帰できず、引きこもって女性向けのソーシャルゲームに一日の大半を使うちょっと腐り要素もある女性だ。
年齢は23歳。恋人がいたことは無い。
「……部活の経験なし。働いた経験も無く学校出てからすぐに就職して挫折の子か……もう、社会から消えたいとか考えちゃうよね!」
そういう。心の傷や隙間のある人物を狙って天使や神々はフランシアに招待する。
かつては。異界を渡り切ることが出来る人物は限られていた。
強靭な心身を持ち。神の声を受けて異界に旅立っていくことが出来た者は選ばれた存在のみ。
しかし、今は事情が違う。
「よし! この娘に決めた!」
今日の誘拐手順は、夢の中でお気に入りの男性ゲームキャラクターがミカエラを紹介するシチェーションだ。
たぶんターゲットは夢だと思ってホイホイ異界にいく事を承諾するだろう。
残った身体の処理はいつも通り意識不明のまま死なない程度に放置して、異界の医療機関などに収容されたらそのままお任せする……の流れだ。
順調に作業は進んでいる。
しかし、ミカエラの天使としての予知能力が。
今夜に望まない来訪者が現れるサインを出してくる。
「え? なーに? 大天使に喧嘩売るとかどっかの馬鹿魔神かな?」
具体的な相手のデータはミカエラの予知能力では知ることが出来なかったが。ミカエラの経験上、上級魔神に昇格したばかりの魔神が力試しに天使を襲う事は良くある事だった。
無論ミカエラは敗北したことなどない。
相手の実力を慎重に読み取るなどを行わない、自分より弱い相手としか戦ったことが無いタイプの魔神が上級魔神に昇格すると一気に強くなった気がするのだろう。
クラスアップしての能力の向上が大きいので、強化された知覚で感知できるようになった天使などの存在に戦いを挑む。
フランシアでは良くある話だ。
「……やれやれ。こっちは忙しいのに」
ミカエラはため息をつくと。迎撃の準備を優先するか、このまま召喚を続行するかを考えはじめた。
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