撃っちゃうぞ!
「さぁ。ヨシダが的になってくれる。サジマよ、遠慮なく撃ち込んでくれ!」
魔王さんが元気な声でムチャを言う。
「いや、ちょっと。それは、いくらなんでも」
「大丈夫だサジマよ。ヨシダは死なない。私が保証する」
いくらなんでも銃で吉田さんを撃つなんて……まぁ、出来るけれど。
「……うーん。では、大丈夫ということで……やってみるっス」
イイのかな?
「皆はヨシダから離れろ! 危険だぞ。発射に反動とかはたぶん無いだろうか、サジマの後ろ側にいた方が良いかもしれないぞ!」
てきぱきと魔王さんは周りに指示をして吉田さんの銃殺準備を整え始める。
「え? え? えっ?」
吉田さんはいまいち状況が読み込めていないのは。たぶん魔王さんと俺の会話を聞いていなかったのかもしれない。それか完全に理解しつつも対応不能なのか。
魔王さんの指示で、森山さんも。魔王さんが連れてきた騎士たちも吉田さんから離れていく。
「佐嶋君! 良く狙って!」
「え? え? え?」
なんだか怖い声援を送りながら吉田さんから離れる森山さん。そして離れていくみんなに吉田さんは近づこうと動くが。
魔王さんが
「動くなヨシダ」と指示をすると。
吉田さんは棒立ちになった。
俺はそのあいだに魔銃を軽く立射姿勢で構えてみる。
もちろんまだ吉田さんは狙わない。
立ったままで銃を構えるのだから、普通は伏せて射撃する伏射姿勢より安定性は悪くなる。安定性の良しあしは、そのまま射撃の精度に直接かかわるので。姿勢の選択は大切だ。
中学一年の時に初めてビームライフルに触れてから何千、何万回と繰り返し構えては射撃してきたので姿勢にも俺の『いつもの』が存在していて異世界でもその感覚はまだ生きてた。
銃も身体も変化したのでまだ違和感があるはずなのだけれど、学校の射撃場で構えるのとはまた違うので変な感覚はない。
違和感があったとしても。まぁ、そのうち何とかなるだろう。
魔銃の銃床の感じや肩当が方に当たる感覚も今の俺にぴったりだ。自然に軽く足をひらき俺は射撃姿勢を安定さえた。
この銃にはスコープが装着されていないので、銃身に用意されている簡単な照準器をつかって自然に射撃姿勢が整い、引金を引く準備が整う。
さぁ! 吉田さん。行きますよ!
「サジマよ! 準備は良いか?」
「はい。俺はいつでも」
「ちょちょちょちょと。まだオレってば、セクシーヨガ教室とか未体験なんだだからまって!」
……吉田さんはまだ心の準備が出来ていないらしい。
まぁ、普通出来ないと思うが。わけわからんこと叫びつつも逃げ出さないだけ偉いな。
「まぁ、いい。とりあえずヨシダを撃ってみろ」
「らじゃ!」
「え!? え!? 佐嶋氏 なんで!? まだ俺っ…… 」
俺は銃口をゆっくりと吉田さんに向ける。
「エロラノベで大成功! グラドルとデキ婚の夢とかまだだから死ぬの無理っ!」
……サヨウナラ吉田さん。
と、言うのは嘘で。
俺はもちろん吉田さんを撃つつもりはない。
魔王さんには悪いが、出来る事と出来ない事がある。
ゴブリンとは言え、吉田さんは俺たちのリーダー……っぽい存在だ。
もちろん撃てないよ!
俺は吉田さんの遥か頭上を適当に照準してトリガーを軽く引いた。
これなら銃からなにか飛び出しても吉田さんにはかすりもしない。
……はずだった。




