プレパレーション
戦車から降りると笑みを浮かべた魔王マリスカレンは俺たちに前までゆっくりと歩いてきた。
「どうした? 私の戦士たちよ。歩くのが嫌だと駄々をこねているようだが」
苦笑交じりのマリスカレンの声に。珍しく森山さんが反応した。
「社長! 私たちに300キロの移動は精神的に無理なので送っていってください! それか転移門くださいっ!」
「まぁ、おちつけデスナイト。興がのったので、これからお前たちに天使狩りに参加してもらうことにした。転移門はそのあとで出してやる」
「ほわっ?」
思わず俺の口から奇声が出してしまう。
なんだ? 天使狩りに参加って!?
さっきの魔王さんの発言から気になっていた天使とかの話が、やっぱり俺たちの身に降りかかってくる。この世界に来てからなんだかいつもそんな感じだが。
どういう訳か我々は、異議も拒否もせずにただ言われるがままの状態だ。
まぁ、ナイスバディ魔王さんのお願い事を聞けないとか俺の中ではナシなんだから良いけどね!
それにしても。森山さんは魔王を社長として認識したらしい。これで俺たち『魔物になろうズ』はなんとなく魔王マリスカレンの配下……という事を全員が認めた感じなのだろうか。
「魔王様、それはゴブリン退治の前に軽く天使を狩れ! という差し込みの追加ミッションでございますね!?」
「そうそう! 吉田は賢いな!」
「あ、ありがたき幸せっ! このゴブリン吉田は魔王様の為ならば粉骨砕身〇×◇……っ!」
なんかまくし立てて魔王さんにアピールなさっている吉田さんの発言は途中で俺の耳に入らず。俺は天使狩りって今までにない危険があるのでは? とか、なんでゴブリンの前に天使と戦うとか順番おかしくないか? とか考えてしまう。
森山さんは、言いたいことは言ったらしいので。いつもの腕組み直立不動のポーズになっている。
「サジマよ! 天使を狩りに行くぞ! 魔銃を取れ!」
「あ!?」
魔王さんの声にようやく思い出したが。俺は魔王さんから下賜された魔法の銃。ファインベルクをもらっていたのだ。銃をもらってから森山さんとの関係に色々あってすっかり忘れていたのだ。
ライフルマンが新銃を手に入れたのに忘れるとか、部活やってた頃には考えられないが。これが恋の魔力なのか?
魔銃は森山さんの鎧の中に置きっぱなしなので俺は、森山さんに取り出してもらった。その様子を見て魔王さんが……
「サジマよ。卒業おめでとう!」
……などと謎なことを言ってくるが。
「ああ、ハイどうも……」
と、俺は適当に誤魔化した。
魔銃を手に取ると、相変わらずその蒼く輝く銃身は冷たく美しい。
銃口を天に向けるように捧げ銃するとなんだか懐かしい。標的射撃の射手として感覚がちょっと戻ってきた感じがする。
「そうだ! サジマよ、その魔銃が今回の狩りで大活躍かもしれん! 期待しているぞ!」
魔王さんは俺に何をさせるつもりなのか。
とても嬉しそうに微笑んでいる。……カワイイ。
魔王さんは森山さんとは違った美しさがある。森山さんがクールビューティなら、魔王さんはエロカワイイ感じというか。うーん。
など考えていると。森山さんがなぜかジッとこちらを見ている。
うおお! 気を付けないと。大剣で真っ二つとかカンベンだ。
俺は努めて冷静に魔王さんに確認する。
「天使には魔銃が有効なんでしょうか?」
「だとおもうぞ! 不安かサジマ?」
「はぁ、実は俺はまだ戦った事ないので……」
「レオナに噛みついていただろう? あの思い切りがあれば大丈夫だ!」
魔王さんの中では、不意打ちで女性のバストに噛みつくことも戦闘経験に入るらしい。
……そういえば。獅子姫レオナさんはどうなったのだろう?
「しかし、サジマの不安もわかるぞ! 魔銃の試射もしていないだろう?」
「まだ頂いてから試射もしていません。すいません」
俺の脱線しかけた思考を引き戻すように魔王さんはとんでもないことを言ってきた。
「どうだ? 試しにヨシダを撃ってみろ。 魔銃の感覚をつかめ」




