ゴブリンの皇帝ブルギバ
……ほんとうにどうでも良いのだが。
ゴブリンの勇者となった吉田さんから、ゴブリンたちの危機についての説明があった。
この集落にいる間は、俺も森山さんも吉田さんの下僕という配役なのでおとなしく吉田さんの説明を聞いている。
「みんな聞いてくれ。この世界のゴブリンは大きく分けて二つの種類がいる」
「……」「……」
ゴブリンたちは、俺たちのために大き目の革のテントを用意してくれたので。
俺たちはそこで作戦会議(?)をしている。
真昼だが、俺は直射日光でなければ火傷はしないらしい。明るいテントの中で普通に立っていられる。
森山さんは俺のそばにいて腕組みをして仁王立ちのいつものポーズだった。
正直、吉田さんの話を聞いているのかどうかは怪しい。
「まず。俺のような緑の肌のゴブリン。そして、この前のミッションで見た茶色い赤ゴブリンだ」
「……ほう」
ゴブリンとか本当に、どうでも良いので適当に相槌を打つのがやっとだが。
たぶん人類の白人種や黄色人種とか黒人種とかの違いのようなものか?
「そしてこの二種類が、世界でばらばらの縄張りをもって統一無く生きている」
「……」
「いや、生きていた! これまだは、だ!」
「……」
その後の話が長くなり、どうせ聞いていないであろう森山さんにあとで説明する可能性もあるので。
念のため、俺の中で吉田さんの話を整理すると。
なんでも、それまでこの二種類のゴブリンは世界中にまばらに点在する部族ごとの集落で暮らし。同種ごとの連携もなく生きていたのだが。
赤ゴブリンが突如、団結というかまとまり始めて。組織化すると緑の肌のゴブリン達に襲い掛かり、服従を求めるようになったそうだ。
そして、赤ゴブリンのリーダーであるブルギバはゴブリン帝国の皇帝を名乗り。
これまでは、なんとなくゴブリンたちの脳内で妄想されていた存在であるゴブリン帝国を実在の国として打ち建てたらしい
……ほんとに、どうでも良い。ゴブリンの建国とか種族間抗争の話なのだが。
この緑ゴブリンの集落でいつのまにかゴブリン英雄になったという吉田さんには重大事らしい。
そして、どういう理由か知らないが。
魔王マリスカレンにとってもゴブリン帝国は実在せずにゴブリンの脳内で終わって欲しいという希望があるのだろうか?
それで俺たちがエージェントとして派遣されたのか……。
魔王の意図はよくわからないが。これは俺たちと緑のゴブリンたちでゴブリン帝国を倒そう! ってミッションなのかこれは……。
果てしなくダルい……。
「で、吉田さん。その皇帝ブルギバってのは?」
興味は無かったが念のため俺は聞いてみた。
ひょっとしたら短時間で解決する 糸口があるかもしれない。
「なんでもゴブリンでありながら魔神を配下にし、ゴブリン以外の魔物たちも手なずけているらしい。赤ゴブリンの英雄ってところだな」
「……吉田さんも見習ってみたら?」
と沈黙していた森山さんが、チャチャを入れる。そういう所だけ反応する。
それにしても。聞いていたんだ、森山さん……。
「おおかた、その魔神が黒幕か真の支配者とかなのでしょう? 魔神を倒して、あとは帝国崩壊でミッション終了~ってヤツじゃない?」
「うーん。そうかも」
俺たちは気乗りしないものの、赤ゴブリンの帝国をどうするか考えはじめた。




