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吉田さんがいっぱい

「……」

 メイドさんが開いたゲートに、森山さんが無言で入っていく。



「え? ちょっと森山さん」

 慌てて俺もゲートに飛び込み、吉田さんも続く。


 いつもながら俺たちは作戦はおろか、相談も準備も無しに状況に飛び込んでいく。


 ……いや。モンスターは案外それがスタンダードな行動なのかも知れないが。

 


 事前準備とか計画的行動という言葉が好きな人が見ていたら、発狂しかねない無謀行為だろう。

 幸運にも、吉田さんも成り行き任せでも平気らしい。

 さすがゴブリン。

 


 俺は、ちょっとは考えて行動したいタイプなのでちょっと困るかもしれぬ。


 つーか、またゲートの向こうが昼間とかだったなら。

 俺は、また大火傷だろ!


 しかし、もうゲートはくぐってしまったのだ。

 俺は、ファインベルクをしっかりと保持してゲート抜けた。


 そして。



 転移ゲートを抜けるとゴブリンだった




「うぉおお?」


 もー、わけわからん。


 吉田さんがいっぱいる。

 

 そして見渡す限りのゴブリンたちが、口々になにか叫んで取っ組み合いや馬乗りになっての、つかみ合いをしているように見える。


 幸い、時間は夕刻らしい。

 俺の皮膚は、ちょっと痒いかな? 程度で火傷などはしなかった。

 良かった……。


 ……しかし。


 なんだ? 祭りか? 戦争か?



 ゲートを抜け出た場所は、どこかの森の中にある開けた広場らしく。

 サッカーグラウンドくらいの広さはあると思う。

 そういう広場に、良く言えば家のような建物がいくつか点在していた。

 


 つまり。これは、いわゆるゴブリンの集落らしい。

 前のミッションで出くわした茶色いゴブリンではなく。

 今度のゴブリンは緑色で、冗談抜きで吉田さんと見分けがつかない。


 

 魔王マリスカレンから頂いた首輪が無ければ、マジで大ピンチレベルかもしれない。

  



「……これは。吉田さん、俺から離れないでください。場合によっては飛んで移動して落ち着いた場所で様子を見ましょう!」


「グギャ?」


 ……吉田さんじゃなーい。



 俺が吉田さんだと思って声を掛けたゴブリンは、首輪としていない別なゴブリンだった。



「おーい! こっちだよ~。佐嶋氏~ィ!!」



 なんだか嬉しそうな吉田さんの声が、俺の後ろから聞こえる。

 振り向きたくないが、見てしまった。



「……なんかモテモテっすね」



 吉田さんは、ご自身にクリソツな三匹のゴブリンの囲まれ。

 ご満悦だった。


 まったく羨ましくなかったが。たぶんメスゴブリンなのかも知れない。



 リアルで、ゴブリンの女性はカワイイ……みたいな設定のゲームはあった。

 しかし。ここは、そんな生易しい場所ではなかったようだ。


 ……ぶっちゃけここのゴブリンは、オスとメスって見分けがつかない。




「吉田さん……ゴブリンの性別ってどうやって判別するんですか?」


 お取込み中の吉田さんには悪いが、思わず聞いてしまった。


「おう! 佐嶋氏、それはな。オスとメスは腰巻の中身が違うんだよ!」



 ……聞いた俺が馬鹿だった。


 

 吉田さんがハーレム願望を十分に満たしている間に。おれは森山さんを探した。



 森山さんはいつも仁王立ちで、腕組みをしているイメージだったので。

 ゴブリン集落のちょっと小高い場所で、しゃがんでいる森山さんを見つけた時はちょっと意外な気持ちだった。

 


「森山さん、どうしたんですか? なんか元気ないですね?」


「……佐嶋君。ちょっと聞いていい?」

 

 心なし、聞こえてくる森山さんの声も元気がないように思える。

 俺は、彼女を元気づけるためにも。


「どうぞ」

 と、笑顔で森山さんに伝えた。


「ちょっと、中で話そう……」


 そう言うと森山さんは胸当ブレストプレートを開放した。

 そこに俺がおじゃまする。


 が、しかし。

 デスナイトの鎧の中に入ると。以前の視界共有の感じにはならず。

 俺は、真っ暗闇に放り込まれたような状態になってしまう。


「あのー……。森山さん?」


「……」


 いきなり、俺の顔のそばに。

 デスナイトの森山さんが機嫌が良いときに、たまーにヘルムの中で見えるときがある森山さんの青白い顔が浮かび上がった。


「佐嶋君って彼女いる?」

「……えっ」 

 



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