ゴブリンの帝国?
俺が魔銃ファインベルクを受領したあと。
吉田さんんも、森山さんも魔王からそれぞれご褒美をもらった。
デスナイト森山さんは『拡張スロット』とか言うアイテムをもらい。これは、スロットにスキルカードとかを差し込むとカードの性質に応じて、追加の技能が使えるようになるらしい。
今回はお試しのカードがスロットに差し込まれているみたいだった。
俺は森山さんがどんなスキルを受け取ったのか、ちょっと気になったが、当の森山さんがまったく興味を示さず。魔王もお試しカードの説明は特にしなかった。
まぁ、あとで森山さんに聞いてみよう……。
ゴブリンの吉田さんは、ピカピカの棍棒……ではなく。
銀のネームプレートが付いた黒く輝く『首輪』をもらった……。
本人の希望で、ネームプレートには『吉田』と刻まれている。
「お前は、ちょっと危なっかしいからな。これで、なかなか死ねなくなるぞ」
どういうわけか意地悪そうに微笑む魔王さんであったが。
「ありがたき幸せ! 幸せっ!」
と……本人は感涙しながら喜んでいた。
その後、俺たちは魔王マリスカレンの居室を退出すると。
眼鏡メイドさんに案内された一室でくつろぎながら、ダベリつつ次のミッションの相談をしている。
眼鏡メイドさんは俺たちからの質問に答えるために、室内で待機してくれていた。
ちなみに今おれたちが居る部屋は。
今後は自室として使用して構わないとのことだ。
魔王から与えられた一室。
俺たちの人数分の椅子と大き目の円卓が置かれただけの殺風景な大部屋。
プライバシーとか当然ない。
さすが魔物扱いである。
部屋の広さは、軽く戦闘が出来るくらいのサイズで天井も高い.
しかも、なぜか扉が三か所あり開いてみるとダンジョンの通路のようにどこかに続いている。
「迷子になるので、扉の外には出ないでくださいね~♪ あともし侵入者とかいた場合は倒していただいて構いませんので~。 ヨロシクお願いしまーす」
とメイドさんは言っていた。
……ミッションが無いときは、俺たちはどうやら魔王の城を守備するらしい。
吉田さんはこの部屋を、モンスターハウスと呼ぶことに決めたとか言っていた。
うーん。まぁ、いいか。
「ともかく。そのゴブリン帝国ってなんですか?」
俺は新ミッション『ゴブリン帝国を救え!』について、眼鏡の美女メイドさんに質問してみた。
「そう! それ俺も知りたい!」
「ゴブリン帝国を救えとかのミッションですが。それは、どこにあるんですか?」
「そうそうゴブリン帝国って! どこ? 我が故郷とかの設定!?」
吉田さんが、ゴブリン帝国に強く反応する。
「ゴブリンの王とかになれんのか!? おお?」
この人の、好きな単語に喰らいつく勢いがすごい。
まぁ、吉田さんはゴブリンだから気になるのかな……。
俺はエルフの村とか人魚の村とかに行きたいかなー。
ま、俺の願望は置いといて……。
ゴブリン帝国……とは?
メイドさんは語り始めた。
「まず。ゴブリン帝国という国は、実は存在していません」
「?」「!?」
え? どうして?
「……」
森山さんはどうでも良いみたいだ。さっきから腕組みをして沈黙している。
「一部のゴブリンたちは、帝国があると信じているのです」
「はあ?」
「あえて言えば。ゴブリン帝国は、それを信じるゴブリンたちの脳内に存在するといえるでしょうか……。」
……救いようがない。
ゴブリンの脳内の帝国を救えとか、どういうミッションなのであろうか。
つか脳内の帝国とか痛すぎる
重症だなゴブリンどもは。
「おれはゴブリン王になる!!!」
魔王から新ミッションを言い渡されて、ゴブリン帝国に夢みちゃってた吉田さんが叫んでたが。
夢で終わるパターンらしい。
「じゃ、俺たちどーすんのよ?」
もっともな疑問を吉田さんが口にした。
「とりあえず、そのような感じですので。では、わたしは別な仕事がありますのでこれで……」
「は?」
俺たちを置き去りに、メイドさんはダンジョンの通路への扉に向かって歩きはじめた。
「ええ、ちょっと! スイマセーン。俺たちは、何をどうすれば……?」
「それを考えて行動していただくのがミッションです」
しれっとメイドさんは言う。
「マリスカレンさまが問題を感じているゴブリン帝国へのゲートは開いておきますので。皆様のご武運をお祈りいたしますわ」
「えええ? ちょっと!」
そんな説明で、ミッションとか挑めるか!
メイドさんが、ささっと虚空に指先でサインをすると。シュピーンっ! と。転移ゲートが現れる。
「ではごきげんよう」
俺たちの声は無視され。メイドさんは去っていった……。
メイドさんが歩くたびに、くびれた下半身がクネクネ動くのがスカート越しでもわかる。
あ、意外にお尻が大きいな、このメイドさん。次に会ったら名前聞こうかな。
「……佐嶋氏。ああいう女は意外に激しいんだよなー。参考にしてくれ」
遠ざかるメイドさんの後姿を見送りながら吉田さんがつぶやいた。
こういうエロいこと考えてしまうから、一部の男は肝心な事が疎かになってしまうのかもしれない。
「……次のミッションは難関かもな! 魔物になろうズの腕の見せどころか?」
「吉田さん、物事に気にしないタイプっすね」
メイドさんが部屋に開いてくれた転移ゲートが目の前にある。
「ああ。俺の人生は考えても無駄なことが多かったからな。流れよ! 大切なのは流れよっ!」
「……」
ところで。
俺はふと、思う所があった。
「吉田さん。魔物になろうズって結局なんすか?」
俺は、ゴブリン吉田さんに聞いてみた。
本気で俺たちのパーティ名称だとしたならば、ダサすぎる。
というか、意味不明だ。
ゴブリン デスナイト ヴァンパイア
全員すでに魔物以外の何物でもないのに。魔物になろうって。
「ん? 佐嶋氏、魔物になろうズ は、俺たちのパーティ名だ。把握してくれ」
当然のように吉田さんが言った。
「……えー、森山さんは、なんか意見ないんですか?」
「ん? 私は、どーでも良いかな。いま考え事中だからゴメン」
くだらない話を振ってくるな、という意味らしい。
「佐嶋氏。魔物になろうズは、歴史ある名称でなー。俺がまだ20歳くらいのころ、初めてゲームで結成したパーティなんだぜ」
懐かしむような表情で、32歳の吉田さんが語る。
「はぁ、そうっすか……」
「寝る前に、詳しく話してやるぜ!」
「……いあ、イイっす」
もう気にしないことにした。




