報酬が出るみたい!
「なんだよう! 放置かよ俺は! 俺はリーダーだぞ! リーダー!!」
初ミッションをコンプリートした俺たちだったが、ターゲットのゴブリン砦を偵察した後に、身の安全を確保するために自主避難してもらっていたゴブリンの吉田さん。
うっかりミスで放置され、ご機嫌ななめである。
「まぁまぁ」「まぁまぁ」
あれこれ面倒だったので、俺も森山さんも適当になだめている。
「ゴメンなさい。私は、吉田さんのこと普通に忘れてた。けど、文句ある?」
「吉田さんに同族殺しの汚名を着せないために、森山さんは、存在自体を忘れていたんですよ!」
「ホントか? 佐嶋氏」
「……たぶん。俺は脳みそシェイクされて意識不明でした。置き去りはしてないのでセフセフっす」
「……ひでぇよ。お前ら、人間かよ! それでも」
「……」「……」
まったくどうしようもないベタな返しをしてくるので、デスナイトもヴァンパイアも沈黙せざるを得ない。
しつこく涙目で、何かを叫ぶゴブリン吉田さんを俺と森山さんは落ち着かせたので。
魔王マリスカレンとの謁見の準備が終わった……。
なんでも俺たちに褒美が出るらしい!
「ゴブリン退治とか振っといて、実力不明の格闘家とか戦う羽目になったしボーナスは当然よねー」
とか、森山さんも受け取る気満々だ。
……しかし、これを受け取ってしまうと本格的に魔王の手下って事になってしまう気がしたのだが。
俺は黙っていた。魔王様もなかなかイイ! 感じの見た目なので、俺的には良いかな~と思っている。
そして、吉田さんは初見で忠誠誓っているみたいなのでマネはしないけれど、ご褒美くらいはもらっておこう。
「……そろそろ、よろしいでしょうか?」
謁見の準備(吉田さんを、落ち着かせる)が終わるまで。この上品な眼鏡美女メイドさんは俺たちのゴタゴタを待ってくれている。
吉田さんを回収したあと。
この魔王の配下のメイドさんが帰還した俺たちを、いま居る待合室に案内してくれていた。
「はい。大丈夫ですお願いします!」
まだちょっとグズっている吉田さんの代わりに俺がメイドに頼むと。
メイドが魔法のゲートを開いてくれる。
保安上、扉も窓もない空間がけっこう魔王の城にはあるらしい。
そう言った空間へのアクセスはメイドが開くゲートを使うしかないのだ。
そして俺たちがゲートをくぐり、魔王の居室に招かれた。
当然のようにゴブリンの吉田さんが、魔王に跪いて礼をとる。
そして、俺たちにちょっと振り返ると。
「おい。お前ら。魔王マリスカレン様に、跪け! 頭を垂れろ!」
とムチャを言ってくる。
えーー?
まだ、俺は魔王の配下になったつもりはない。
……のだが。
「え? なんで? 私たち入社してないし……」
と、森山さんも素で不思議そうに言う。
「俺たちは。ただ、なんとなく魔界11連ガチャから出てきただけじゃないですか」
俺も言う。
「だからこそだ!」
「は?」
ちょっと、吉田さん意味がわからない。
「じゃ、佐嶋氏はガチャから出てきたキャラがいきなり逆らって来たら。どう思うよ? あげく勝手はじめたらどう思う?」
「え? そりゃー嫌ですよ。ありえないっス!」
「だろ?」
「自分がされて嫌なことはしない!」
「……」
なんだか、正しいのか正しくないのかわからん理屈で。
とりあえずなんとなく俺もマリスカレンに跪いた。
俺が魔王に礼を取ったので、付き合ってくれる気になったのか。森山さんも俺に倣う。
「ご主人様! 配下の者どもの教育に手間取りまして、誠に申し訳ございません!」
吉田さんが魔王に申告した。
なんか本格的に、吉田さんは魔王にやられている。
ここで正社員になるつもりなのだろうか……。
「良い。特に許す。ヴァンパイア・サジマとデスナイトは楽にせよ。立ち上がり、我にその美しき姿をみせよ」
と、魔王が俺と森山さんに声を掛けてくれる。
森山さんはさっさと立ち上がり。
俺も礼を言って、普通に立たせてもらう。
数秒だったけれど、跪くとか普通しないから。ちょっと気疲れしたよ。
「……」
跪く吉田さんを、そのままに魔王は話し始めた。
……吉田さんは、楽にしちゃダメなの?
「まず皆の活躍を嬉しく思う」
嬉しいとか言う割に。
魔王は、あまり気乗りしなさそうな顔で淡々と語る。
魔王の目線は、なんとなく俺に来たり床を見たりと落ち着かない。
「……そして、実は伝えなければならいこともある」
ん?
ご褒美って、なんかあれ?
魔王の愛人にしてあげるとか? そんないきなりな展開?
そして魔王の告白がはじまる……。とか?




