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女神の使いは使命が不明 作者:ひろたひかる
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プロローグ

 ひらり、ひらりと目の前を花びらが舞う。
 大きな梅の古木から薄紅色の花弁が細かく震えながら散っていく。

 通い慣れた高校までの道のりをこうやって歩くのもあと1ケ月になった。あんまり特徴のない紺のブレザーに紅いリボンの制服もそれなりにいとおしい。
 夕べはなんとなく眠れなかった。幼い頃からお世話になった児童施設から独り立ちしなければならない日が近づいてきたからだ。
 身寄りのない私は高校卒業と同時にアパートで一人暮らしをすることになる。これは施設の決まりだから昔からわかっていたし覚悟もしてきたつもりだ。
 けれど、人の入れ替わりはあってもずっと大勢の人と一緒に生活していた私にはひどく不安なことに思えるのだ。

 夕べはそれを考え込んで不安で眠れなくなってしまったのだ。

「ふあぁ……眠い」

 別に施設育ちだからとクラスで邪険にされているわけじゃない。田舎の高校で、わりとみんなのんびりしているクラスなのでクラスの仲はいい方だと思う。それなりに仲のいいクラスメイトもいる。
 そうやって周囲の人には恵まれてきた私が春からは仕事について一人で生活していくことができるんだろうか。考えれば考えるほど不安になってくる。
 私より前に施設から卒業していった年上の子たちは「なんとかなるよ」と笑ってくれる。「相談に乗るからいつでもおいで」と。でも彼らには彼らの生活がある。頼るわけにはいかないだろう。

 歩きながらぼーっと散りゆく花を見ていた。

 ああ、このまま桜花びらに隠れてどこかへ行ってしまいたい。
 なんの特技もない私でも役に立てる、そんな優しい場所はないんだろうか。
 こんな甘ったれたことを考えてる段階でだめなんだろうな。ふと苦笑が漏れた。

 花びらが舞う。
 ひときわ強い風が吹いて、散り際の梅が一斉に世界を淡いピンクに染め上げる。
 本当に花に隠されてしまいそうだ。

 そして私は、本当に隠されてしまったのだ。
 ここから、別の世界へと。
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