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速さが俺の生き甲斐~光を目指して~  作者: どらべん
第一章
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第四話

新キャラ登場。

 やってきました学園。とはいっても、入学式は明日からなので今日一日はほぼ丸々暇である。この学院街、想像以上に立派だ、大きさで言えば王都に負けていないのではないかという程だ。というのも原因はこの土地に湧いた温泉が理由だった。周辺の土地を開拓し、スパリゾート施設としても運営している為、貴族から平民まで数多くの利用客にて溢れているのだ。


 加えて、貴族の人専用のスパも用意されているので、割高にはなるがなるべく一般の人と触れ合わずに少人数が良い、という人はそちらを利用するそうだ。そういった点から土地の開拓が何度も起こり、そして現状の大きさに収まったようだ。という訳で、せっかくだから俺もこのスパリゾートを堪能する事にしよう。本来は通常利用で青銅貨八枚、だがこの街の学院の人間であれば無料で利用が可能なのだ、使える時は必ず毎日利用してやるぞ。


「うーむ、やはりでかいな」


 受付の人から手渡された水着に着替えていざ入ってみたが、非常に広い。何百人もの人が入ってもまだ余裕がありそうな巨大な浴槽から、川の様に流れる浴槽、何と言うか、とにかく広い。あのジャングルに流れる川の様な風呂とかやり過ぎでは、と思う。


 とは言えそれだけではなく、こじんまりとした浴槽から激しく水泡が浮かぶジャグジーバスなど色々だ。此処は手堅くジャグジーバスから利用させて貰おう。


「あぁ~」


 思わず声が漏れる。色々な角度から噴き出す水流が程よく体を叩いて気持ちが良い。ふと、横を見ると笑われてしまった。


「失礼、随分と気持ちよさそうにしていたから」

「あぁいえ、ごめんなさい。初めて此処を利用したんですけど、凄い広さですね」

「元々はそれほど大きくない施設だったけれど、これを利用した商売で儲けられると国が商人と合同で介入した結果がこうなっているそうだよ」


 流石商人、逞しい。実際、この規模なら相当な儲けが出ているのは確実な筈だ。土地を持っていた人間はウハウハだろう。


「へぇ、詳しいんですね」

「まぁ、一応はね。……所で、随分と若い見た目だけれども一人で?」

「えぇ、まぁ」

「……という事は、学園に入学するのかな?」

「よくわかりましたね」

「君くらいの年齢の人ならばほぼ間違いなく家族連れだろうからね、一人でこの場所を利用するのは旅行に来た貴族か学園の人間くらいさ」


 むむ、鋭い。それにこの口調から、何となくだがこの人から貴族の雰囲気が漂っている。薄らと濡れるふわふわとした薄いオレンジの髪に太陽の様に輝く赤が混じったオレンジの瞳、鍛え上げているのか良く引き締まった体。見た目が若いからこそそれが不相応に感じられる具合がまさに貴族っぽい。そして何より、同じハンターとしての気配。ギルドの酒場で感じた物とほぼ同じ。


「自己紹介としよう。俺の名前はガウェイン・グワルフ、グワルフ家の長男だがハンターに憧れてね、弟に家督を譲ってハンターになる為に王都に来た。宜しく頼む」

「俺はアーサー、残念ながら貴族じゃなく農村出身ですけど、仲良くしてくれると助かります」

「あぁ、勿論だとも。むしろ俺としては家のしがらみが無い方が気が楽で助かるんだ。どうせなら、この後も一緒に施設を回らないか? 一人だと寂しくてね」

「良いんですか?」

「風呂で意気投合した者は皆友の様な物さ。だから、そこまで畏まった言葉遣いも必要ないよ」

「……なら、遠慮なく。宜しくなガウェイン」

「あぁ! それじゃあ向こうのジャングル風呂なんだが……」


 ガウェインに連れられるがまま、此処の施設を手あたり次第に回っていく。個人的には流れる温泉が気に入った、軽く泳げるのも好感度が高い。と、その時だ。


「おや、ガウェイン様。お久しぶりにございます」

「あぁ、ルドルフ卿。お久しぶりです」


 髪がやや薄い少々小太りの男が近づいてきた。話しぶりからも貴族で、ガウェインとは見識があるのだろう。


「明日から学院に通われるという事をお聞きしました。その点、是非宜しければ我が家の息子をよろしくお願いいたします」

「あぁ、うん。同じパーティになったらよろしくさせて貰うよ」

「それは非常に心強い! ガウェイン卿と共になれば我が息子も良い経験を積めるでしょう。では、是非ともよろしくお願いします」


 なんだか、嫌な感じだ。ガウェインの表情は先ほどとは違って仮面をかぶっている様な、余所行きの様に感じられた。無理やり張り付けたような笑みだし、何より言葉に感情が込められていない。


「今のは?」

「あぁ、遠縁の者さ。彼の息子も入学するそうでね、彼だけじゃなく、他の家からも息子や弟をよろしく頼むとしつこいんだ。断れれば良いのだが、ああも頼られては拒否するのも気が引けてしまう。私は本気でハンターを目指している、騎士としての称号と役割では国を守る事が出来ない事は、ウーサー王が討ち果たした十五の厄災の一つであるヴォーティガーンの話を聞いて嫌でも痛感した。直接、国を守る為に働きたいのだ。しかし、貴族の中には道楽でハンターを目指す者もいる。実際、適正があるのだからそれが可能なのだろう。声が掛けられているのはそういう者達ばかりだ。だが、これはお遊びじゃないんだ……私は本気で、命を懸けてこの仕事を真っ当したい、だが、断りづらいのも事実だ。アーサー、私はどうしたら良いと思う?」


 そう言って、俯くガウェインの表情はとても重い物だった。本気なのだろう。だというのに、別の人間の命の面倒も見ろだなどと余りにも無茶が過ぎる。それはガウェインの夢を遠ざけ足を引っ張る要因にもなってしまうだろう。こうまで言われるのだ、彼は相当に素晴らしいステータスとスキルを持っているんだろう。


 馬鹿正直だと言われそうだ、だが俺は嫌いじゃない。だからこそ、俺は決めた。


「じゃあ、断るといい」

「……なんだって?」

「断れば良いさ、そしてガウェイン、提案がある。俺とパーティを組まないか?」

「君と、私がか?」

「そうさ。直接本人が頼みに来ないパーティ希望なんて無視しちまえ! 俺は少なくとも道楽でハンターを続けるつもりはない、目標を持って全力で取り組む! だからガウェインと組めるのならこの先心強い。何より、こっちに来て初めて出来た友達だしな!」


そう、友達が困っているのなら見捨てておけない。何より、彼が他のパーティメンバーの犠牲になってしまうという未来は見たくない。


「他の貴族からの誘いを蹴ってでも、君と組むべきだと?」

「ああそうさ! というかそうしろ! 直接ハンターとして声を掛けたのは俺だ! だったら俺が先にガウェインとパーティになれる権利がある! 選ぶのはお前だ! というかそもそも本人が声を掛けてこないんだ、そんなもん無効だ無効!」


 ガウェインは静かに何かを考えている。真っ直ぐと見据えられるが視線は逸らさない。やがて、少し経った後だろうか。


「くっ、ハハハハハハ! そうか、そうか! 確かにそうだ、直接声を掛けて来たのは君が初めてだとも! なら私、いや、俺とパーティを組んでくれるかい? アーサー!」

「おうよ! こっちから頼んだんだ、学園でも宜しく頼む!」


 そして、力強くガウェインと握手を交わした。先ほどまで張り付いていた貴族としての雰囲気は消えて、対等な友として並んでいる気がした。そう、これがいい。この施設を回って感じたが、ガウェインは酷く自分を押し込めていた様な気がした。先ほどの身代わりの速さがその証拠だ、全ての感情を押し殺した彼を見るのは、何故かとても辛かった。だからこそ、初めてで来た友達を助けたいと思った。


 これから先、彼と一緒ならどんな困難だって越えていけそうだ。そんな予感がある。


「まぁ、一緒のクラスになれるかどうかは問題だけどね」

「えっ」

「冗談だよ。学院では入学式が終わった後に交流会がある、そこで知り合った者同士がパーティを組み、やてそれぞれクラスに分かれていくのさ。パーティとして結成すればクラスも離れる事は無い」

「なんだ、それならよかった……」


 これで離れてしまうってどんなオチだ。それは非常に宜しくない。だが、これでパーティメンバーはゲットだ。……いや待て、そういえばハンターのパーティって何人までなんだ? 流石に十人とかではないだろうけれど。


「そういえば、一つ疑問がある。パーティの最大人数は何人までなんだ?」

「最大で五人だよ。アーサーと俺で二人だが……実は、もう一人に心当たりがある。その辺は明日の交流会で紹介させて貰うよ」


 彼が心当たりがあるという人物、彼が紹介するからにはきっと良い人なんだろう。先ほどとは違って、ガウェインの表情はとても晴々としていた。


「よし、それじゃあ今日はこのリゾートを満喫するとしよう!」


これから登場していく仲間は、出来るだけ主人公の引き立て役だけではなく、しっかりとした個性を持って表現していきたいです。

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