カサカサ
硝子越しに忍び寄る
秋の陽の寂しさに
弱々しく怯え
きつく閉じられた拳を
そっと緩める
手のひらの
赤い爪跡
自分を守ることばかり
考えてきた
だから気付けなかったのだ
厚く重ねられた銀色の鱗は
痛みだけでなく
君の温もりまでも
はじいていたのだと
もはやこぼれてしまった時間に
裏切られ続けた僕は
今にも消えてしまいそうで
穏やかな影に促されるがまま
ぎゅっと目を閉じる
泣くときは
いつだってひとりだ
降りそそぐ柔らかな光に顔を向け
高い空を仰ぐ
失われたものたちに
ぽっかりと捕らわれながら
カサカサと
枯れ葉のような唇を
何度も噛みしめる