皇子
部屋に戻った俺はあくまで盗賊ギルドが調べた結果であることと念を押した上で仲間達に先程聞いた情報を私見を交えずに伝えた。
「僕が皇子……ですか…………?」
一寸の沈黙を置いて応えたのはアキラ。
当然だろう、いきなりキミのお父さんはこの国の皇だったんだよと告げられても信じられないだろうし戸惑わないほうがおかしい。
「でもそんなこといわれても母さんからは何も……」
「そのギルドの人はどうやって特定したんです?」
「えっ?」
確かに当時あった噂から母親を辿ったというだけでは弱い。
彼には悪いが皇以外にも男がいたかもしれないしそう言われれば終わりだ。
何も考えずに私が皇の隠し子ですなどと言った日には上層部全員で否定され皇族詐称で極刑だろう。
言葉に窮していると意外なところから答えが返ってきた。
「この国の皇族直系の背中には十字のアザがあるのよ、もちろんキミにもね。ちょっと脱いで見なさい」
「えっ」
この場には還っていった精霊2人を除いた7人だけだと思っていたのだが俺が外に出ている間に増えていたらしい。
「カーヤ!?」
彼女を除いた全員の声が重なる。
って誰も気付いてなかったのか?
「何で驚いてるの!? さっきからいたよね、私!」
どうやら俺がジョーンズと話してた間に部屋に上がってたようだが影が薄いのか気が付かなかった。
他のみんなも俺の話に集中して忘れてたようである。
アキラたちも彼女を良く知っており、というより今回の一件より前からよく彼らと一緒に冒険に出ていたらしい。妙な縁があるものだ。
「ヒドくない? 大体あんたら私を軽く見すぎなのよ」
彼女の抗議を遮り俺は続きを促す。
「まあそれは置いといてさっきの話は一体?」
「調査報告の詳細。ウチの上司に頼まれたのよ。いや~こういう重要な仕事を頼まれちゃうなんてやっぱ私が有能だからよね」
単に俺ら全員の知り合いだからだろ、とは口には出さなかった。
それよりも彼女が部屋に来たのは俺がジョーンズと話をしていた頃だ。つまり俺がどう動くかは完全に読まれていたということになる。
「あ、そうそう話の続きね。とにかくアキラ、上脱いじゃって」
カーヤに従いアキラが上半身裸になると、その背中には確かに十字のアザがあった。
「だがこれだけで皇族の証になるのか?」
「もちろんこれだけならタダのアザ。特殊な魔法で判別すれば一発で判るそうよ」
「一応の証拠にはなる、か。あとはそれを認めてくれる人がいるかどうかだな。話ではアキラを皇に就けようと動いている一派があるって話だったがそいつは?」
「キラーヤ・カルマ軍大将、その人が皇子を探そうって言い出した人」
余計な事を、と思ったが今更である。
まずはそいつに会って話をつければいいのか。
俺達の勧めでアキラは盗賊ギルドの仲介で翠稜皇国の軍大将キラーヤ氏に会うことにした。
いつ来るかわからない襲撃に怯えて時間を潰すよりはとっとと動くに越したことはない。
その夜のうちにアキラはキラーヤの自宅へと赴き彼から国の内情を聞いた結果、皇子として父皇に会う決心を固めた。
ギルドの仕込みなのか話はこちらが拍子抜けするほどあっさり進み、3日後にはアキラは正式に皇子として発表するということになった。
この手際の良さは彼を暗殺しようとした組織と同じとは思えないくらい協力的だったがこれはジョーンズの指示なのだろう。
そして当日、俺達もアキラのパーティとともに城へと招かれることとなる。




