面倒事
襲われていた冒険者はイナゴ討伐の帰りに出会った駆け出し3人だった。
正直、一度会っただけなのでこんな顔だったかどうか自信はないが俺以外はみんな覚えているので間違いないのだろう。
宿で落ち着いてからもう一度話を聞いてみたのだが彼らには本当に何の心当たりもないらしい。
その日は襲撃に備え交代で睡眠をとることにし、俺は近くの酒場で飲んでいた盗賊ギルドの連絡員を捕まえこの件の調査を依頼した。
金にはならないがこのまま放って置く事も出来ない。
夜が明けあくる日、いつくるかわからない襲撃に怯えるよりはと近場でモンスター狩りの依頼を受け駆け出したちの経験値稼ぎを行うことにした。
彼らの名前はそれぞれアキラ、ジョウ、ポールといい、アキラをリーダーとして2ヶ月前から組んでいるパーティで全員ファイターのレベルは7。
……レベルだけ聞くと昨日の連中から逃げられるようには思えないんだけどなぁ。
そう思いながら彼らを見ているとあることに気付いた。
ジョウはまあレベル相当だがポールはまるでモンスターの動きと仲間の反応速度が読めるかのような的確な指示を出している。なにかそういう才だろうか。
アキラにいたっては相対しているモンスターに応じて自身の強さも上昇しているようだ。これなら確かに昨日の襲撃から逃れられたのも頷けるし連中に渡り合えたのだろうとも思う。もしかしたらそれが襲われた原因か?
さらに俺を驚かせたのは宿に戻った後、精霊を呼び出してレベルアップを行ったことだ。
まあ街中のレベル屋ではよく見るんだが冒険者が呼び出すのは初めて見た。
チェルとは別の女性型精霊でやや彼女より大人びた印象を受ける。
俺達にもレベルアップを勧めてくれたが俺のレベルを教えて無用な混乱を与えるのはよくない。
断るのも不自然なため仕方なく彼らの前で俺もチェルを呼び出す。
「レベルアップ、俺はパスな」
「え~レベルアップしましょうよ~」
一瞬機嫌が悪くなりそうだったが同族と話すことがあまりないらしく別の精霊を見つけた途端機嫌が良くなった。
精霊2体はなにやら精霊トークを続けていて一向に帰る気配はない。
そんな精霊ズを部屋に置いて宿の外に出ると男、ジョーンズが声を掛けてきた。
「どうも」
「随分足が軽いようだけどギルドは暇なのか?」
「いえ、今回は出来るだけ間に人を挟みたくないものでして……」
あまりいい話ではないらしい。
「何も言わずに今回の件から手を引いてはもらえないですかね?」
「あいつらを見捨てろと?」
出会って数日だがそれでも彼らを放って置くのは寝覚めが悪い。
「やっぱアレ、あんたらの?」
「そういうことです」
あの黒ずくめはやはりというか盗賊ギルドの暗殺部隊だったようだ。
「とはいえちょっと見捨てらんないかな」
「この街にいる間は狙われますよ。それでも?」
「最悪、国から出てけば追いかけては来ないだろ?」
「……皇子です」
「は?」
「彼らのひとりアキラはこの国の皇の血をひいてるんですよ、妾腹ですが」
ジョーンズから聞いた情報はまあよくある継承問題。
翠稜皇国の皇位継承候補は現在2人いるのだが一方は政治の能力こそ十分だが体が弱く子は成せないだろうといわれている。
またもう一方は健康そのものであるが人格に問題がありやはり国を治めるにはふさわしくはない、そこで思い出されたのが十数年前に追い出した侍女。
彼女は皇の子を孕んでいたのだがこのことを秘密とし帝都を離れひっそりと生きていくことを条件に放逐されたはずなのだがその子を探してみると帝都で冒険者をやっていた。
しかも彼の仲間であるポールは大臣のひとりが数年前に勘当した息子ときている。事実偶然なのだが大臣が何か企んでると勘繰られてもしょうがない。
コイツを皇につけて上手く動かせれば国を自分の思うままに出来ると考える者が出てくるのも自然なながれなのだろう。。
家臣から別の候補を立てようという動きがあり、皇子2人からしてみれば自分の立場を脅かす存在でしかない。
そこで現皇子派がとった手段が暗殺というわけだ。
一度は退けたが彼らが諦めるわけもない。
ギルドとしても一度仕事を受けた以上、遂行しなければ面目が立たないがそのために俺達がいると余計な損害が出るため手を引くよう説得にきたというわけだ。
「とまあ、彼らには何の落ち度もないんですが我々も仕事でして、国から出ても追わなければなりません」
「つまりあいつらが死ぬか継承問題をなんとかしないとずっと続くってことか」
「ええ、今は我々ですが失敗が続けば軍があなたたちを討伐に動くでしょう」
「随分とサービスがいいな」
「あなたとやりあうと損害が馬鹿になりませんし彼が皇にでもなれば恩が売れます。それに私、あの皇子嫌いなんですよ」
だから俺達には期待してると言い残しいつものように掻き消えた。
あの皇子とは性格の悪いほうなのだろう。
それにしても皇子とはね、また面倒な。
はてさてどう話を伝えようかと考えながら俺は部屋へ戻った。




