暗殺者
ギルドに調べて貰った報告書を読む限り俺たちが戦った『バラバラにするまで戦いを止めないモンスター』はこの国では確認されていないようだ。
ただ俺たちがこの国に来る少し前から普通ではない改造モンスターのようなものが出ていたとの噂はあったらしい。
これが無関係ということはまずない。おそらく段階的に何かの実験をしていてその成果を各地に放っているのだろう。
俺は犠牲者を減らすため、そして改造を行った何者かへの牽制のためギルドに改造モンスターのことを噂話として流してもらうことにした。
サラなんかは「そんなことにお金を使うなんて勿体無い」とか言っていたが事実を知るものが多くなればその分俺達の危険も減るはずだ。
少なくとも黒幕が秘密を知る者をすべて抹殺しようとするのを躊躇う程度には情報を拡散できたはずだ。
ともあれ当面は大丈夫かなと思っていたのだがその日の夜、宿で休憩を取っていた俺達は爆発音を聞いた。
「何!」
「敵か!?」
驚く俺達だが直ぐに戦闘準備を整え宿の外へ出るとそこで見たのは黒々と立ち上る黒煙。
少し考えたが気になるので一応現場へ行ってみることにした。
この時点ではまだ野次馬気分だったのだが、その途中で黒ずくめの暗殺者スタイルと冒険者風の男達が闘っているのを見つけた。
このときサラが呟いた「ああ、またか」は面倒ごとになりそうだという全員の気持ちの代弁だろう。
「ダイチさん!」
冒険者の一人が俺の名前を呼ぶ。
どうやら闘っている一方は俺達の知り合いのようだが思い出せない。
「【スラッシュ】」
俺が考えているとサラたちが行動を開始する。どうやら知り合いで間違いなさそうだ。
遅れて俺も彼らを助けるために争いに割り込む。
「一体何が!?」
劣勢の冒険者と黒ずくめとの間に割り込みながら状況を尋ねる。
「宿で休んでいたら襲われて宿もこいつらが火をつけて……」
さっきの爆発音は彼らの宿だったらしいが随分と荒っぽい手を使う。
しかしなぜ彼らが狙われるのか?
「心当たりは?」
「分かりません!」
「そうか、ならこいつらを捕まえたほうが早いな」
そう言い、改めて黒ずくめに向き直ると連中は不利を悟ったか撤退を始めた。
あっという間とはこのことだろう。ミゥが叩きのめした1人を除いて黒ずくめはいなくなった。
とりあえずこの残った黒ずくめから事情を聞きだそうとしたのだが……
「何よこれ!」
魔法薬かなにかだろうか黒ずくめは顔色も不自然に黒くなったと思ったらそのまま泡になって溶けてしまった。
後に残ったのは溶けそこなった衣服の残骸とどこにでも売っていそうなショートソードのみ。
「徹底してるな」
感心すると同時にそれほどのことが出来る集団なのかと戦慄を禁じえない。
「と、とにかく事情を聞きたい。俺らの宿まで来てもらっていいか?」
彼らは他に行く場所もないのかあっさり俺らの提案に従いついてきた。
面倒がなくていいがもう少し疑ったほうがいいぞ、と道すがら注意したのだが彼らも疲弊しているのか弱々しく「すみません」と返すのが精一杯だった。




