洞窟
「皆さん、こちらへ来てください!」
モンスターの死骸を片付けていたところでフォルテが何か見つけたようだ。
「どうした!?」
「これを見てください」
彼女が指差したのは俺が倒したウルフの死骸だ。
フォルテは集まったみんなに説明を続ける。
「よく見てください。これはウルフではなく人族です。それもビーストマンよりコモンに近い……」
「なんだって!」
そう言われ、あまり気分のいいものではないが死体を確認することにした。
体には直接毛皮や爪が接合されており、関節はウルフのように変形しているが確かにこれはコモンのようだ。
専門家と言うわけではないがビーストマンは顔つきがその動物に近い。ある意味ミゥが近い気もするがこちらは手足が完全に獣でこの死体のように人の腕に獣の手足を接合したわけではない。
よく見ればこの手はウルフではなく熊のように見える。
「これって……」
「誰かが造ったって事だろうな。もう1匹も確認しよう、巨人もおそらくコモンの改造だ」
残る2匹の死体を確認してみると同じようにコモンに何らかの改造を加えてモンスターのようになっていたことがわかる。
「しかしこいつ等何食ってたのかしら?」
「そりゃ野生動物かなにかじゃないのか? どうかしたか?」
「首がこんなで物、飲み込める?」
ウルフは首の角度を変えているため喉が潰れている。
「なにも食べれなきゃ死んじゃうぞ」
「何も食べていないにしては動きが良すぎます」
「なるほど。ま、誰か餌をやってた奴がいるんだろうね、こっちのほうに」
一行は俺が差した川向こうの林へ行ってみることにした。
怪物どもは待っていても来なかったのが俺らが水汲みを始めてからやってきた。とすれば川を越えてくる者の進入を阻めとかそう言う指令を受けていたのではないか、それなら何か見られてはいけない物が奥にはあると思う。
乱暴な推理だが「モンスターを倒したと思って帰ったけどあとで村は再び襲われて全滅しました」とか聞かされるよりは徒労に終わっても発生原因は突き止めたほうがいい。
すこし行くといかにもな洞窟があった。
「あまりこのパーティ、洞窟向きじゃないんだよなあ」
洞窟に入った俺はまんま懐中電灯のような形の魔力灯で前を照らしながら愚痴をこぼす。
まず俺のメイン武器が槍で狭いところには向かない。
ミゥの素早さも洞窟内では生かせない、サラの魔法やフォルテの弓も射線が通らないときている。
幸いこの洞窟は人が立って入れる程度の広さがあるため魔力灯と手斧を持った俺を先頭に残りのメンバーの中では比較的重装備なサラ、フォルテの順に並びミゥは後方を見てもらうため殿とした。
「こいつは凄いな……」
洞窟は一本道で襲われることもなく進んで行くと広い場所に出たのだがそこで見たものは一言でいうなら秘密基地とでも言うべきか。
棺桶のような箱が幾つも並び床には人やモンスターの『部品』が散乱している。
箱は先程のモンスターが入っていたのだろう。
開いたものが3つにまだ閉じているものが5つある。
「ミゥ、前に!」
俺は槍に持ち替え仲間に戦闘準備を促す。
「いきなり何!」
「こう言うのは大抵、油断して近づいたら一斉に襲ってくるって相場が決まってるもんだ」
そんな俺の声に応えるように箱からモンスターが飛び出す。
出てきたのは4体、金属でできたゴーレムと人間の腕が2本余分についたコボルト、手足に刃が取り付けられた人間、人の頭がついたキリングローカストだ。趣味悪ぃなホントに。
「エ、【エネルギー・ボルト】! なんなのよ一体!」
「さっきのお仲間だろ、完全に潰れるまで動くから気を付けろ!」
気を付けろとは言ったが戦いは俺たちの圧勝だった。
サラの氷の魔法で串刺しになり動きを封じられた怪物はバラバラになるまで俺たちの攻撃を一方的に受けた。
「案外楽勝だったわね」
「楽に越したことはないな。よしこれでここを調べられるな」
俺の言葉に反応するように洞窟が揺れはじめた。おいおいこれってまさか……
「逃げるぞ! 崩れる!」
「もう何なのよ!」
どういう仕掛けかは解からないが証拠隠滅のための自爆装置のようなものが動いたのだろう洞窟が崩れ始めると同時に辺りから火が吹き出した。
どうにか脱出には成功したが洞窟全体が潰れている。掘り起こしても情報は得られないだろう。
一体誰が何のためにこんな施設と怪物を作ったかわからないまま俺たちは依頼を終えた。




