新種
大イナゴの討伐で戦闘集団として名を上げたらしい俺たちに大口の依頼が舞い込んできた。
なんでも昇黄より少し西の集落で強力なモンスターが発生して多大な被害が出ているのでこれを退治して欲しいとのこと。
そのモンスターも俺たちで対処できそうなレベルであり、報酬も想定外の相手であることを加味しても十分な額だったので2つ返事でOKした。
「……ちゅうわけなんじゃ。頼んだよ」
「はい。じゃあみんな行くぞ」
村長に依頼内容の確認と情報を聞き出してモンスターがよく現われるという川辺へとやってきた。元々この川の上流から水路を作っていたのだがこの間の大討伐で水路が埋まったため、復旧するまでここまで農業用の水を汲みに来なければならないそうだ。
情報によると推定オーガと思しき巨人が1体とウルフらしき獣が2匹。たしかに並程度の実力では相手にならないだろう。
しばらく待つが何も出ない。もしモンスターが出なかった場合は水を汲んできて欲しいと大桶を持たされたのだが実はこれが本命じゃないかと思いながら水を汲み始めると辺りの気配が変わった。
「みんな!」
ミゥが俺たちに警戒を促すと全員に緊張が走り辺りを伺う。俺も桶を静かに下に置き槍を取る。
「どうやら水汲みで終わり、って訳にはいかないわね」
「流石にそれでお金を頂くのは難しいのでは? それに命を掛けるからこそ報酬は尊いのです」
サラの軽口にフォルテが応える。気負いもなく油断している訳でもない、うんいつも通りだ。
「早いのが2匹先に、遅いのも1匹来てる」
「情報どおりだ、俺とミゥでウルフを、2人は巨人優先で援護を頼む」
「いつも通りね」
「うんわかった」
「了解しました」
俺の方針に簡潔に答え、俺たちは行動を開始する。
丈の長い草の中を駆けて来る影に向かい槍を振るうが当たりが浅かったようで吹き飛ばされた後、何もなかったように俺の横に回りこみ飛び掛ってきた。
「【烈波】!」
俺は槍先に闘気を纏わせ一回り大きな穂先としてウルフに切りつけこれを両断した。
この技は最近やっと使えるようになった斬りの技だ。確認するまでもなく2枚に下ろされたウルフは絶命したため俺は近づいてきた巨人へと向かう。
「これがオーガ……?」
確かに巨人ではあるが大きさは俺の5割増しといったところで顔つきも凶暴で理性は感じられないがモンスターと言うよりは人間のようである。
そんなことを考える間に巨人は手に持った棍棒を振り上げると一気に叩きつけてきた。
俺はそれを避けると同時に腕を切りつけて距離を取る。
そこへ間髪入れずにサラの魔法とフォルテの矢が数発叩き込まれ、これで終わったと思われたが巨人は意に介することなく俺のほうへ向かってくる。
「嘘だろ……」
俺は驚きを隠せなかった。いくらタフだといってもサラの魔法は巨人の全身を焼きつかせ一部炭化している。それにフォルテの矢が頭や心臓を貫いているのだ。
動く屍という言葉が脳裏を掠めたが考察は後だ。気を取り直し槍を振るう。
合流したミゥが首をもぎ、胴体を3分割したところでやっと巨人の動きは止まった。
「こんな化物がいるのかよ、この世界は」
同じ想いだったのか誰もその呟きに応えるものはいなかった。




