大討伐
夕方に昇黄へ到着したのだが町は冒険者でごった返していた。
酒場は賑わい宿屋は呼び込みの声が途切れない。
「こりゃちょっとしたお祭りね」
モンスターの襲撃を受ける町の対応としてはどうなのかと疑問は残るが俺たちはこの町の中では高級そうな宿に部屋をとることにした。
俺たちも半ば観光気分になってたのも確かだし初見の町で安宿を選ぶと安全に気を使いすぎて気疲れしてしまうからだ。
「よく集まったな冒険者ども!」
翌朝集まった冒険者の前で豪奢な鎧に身を纏った人物が演説を始めた。
長くもなかったが要約するとモンスターは3方向に分かれたのでこちらもそれに合わせて分かれて迎え撃つ。
まず冒険者が前面に出て数を減らし、攻撃を抜けてきた残りを後ろへ回りこんだ兵隊とで挟撃して殲滅するということだ。
報酬素材の回収をさせると言う面もあるが軍の被害を抑えることを優先した作戦だ。
しかし毎度のことなのか報酬に納得しているのか特に不満を表に出すものはいない。
俺たちはこの町から真っ直ぐ進軍する部隊に振り分けられ、もう直ぐ接敵するところだ。
土煙を上げこちらに向かってくるモンスターに対し100人ほどの冒険者たちは横一列に展開する。
「私たちはどうしましょう?」
「まあ周りに合わせて遠距離攻撃かな? そのあとはほかの連中の攻撃に巻き込まれないように気をつけて適当にってところか。じゃあみんな頼むぞ」
簡単な指針を告げてから俺はメモを見て集中する。接敵まで時間があるので魔法を使うことにした。
なにか「まだやるんだ……」とか聞こえたが俺は気にせず集中を続ける。
「ダイチ、来たぞ!」
「合わせなさい、いくわよ! 3、2、1」
サラに合わせて俺は準備していた魔法を遠くに見えるモンスターへ向けて放つ。
「【ファイアーボール】」
冒険者たちの第一射と同時に放たれた火球は遠く群れの中心へ着弾し派手な火柱を上げる。
俺のほぼ全魔力をつぎ込んだのだから当然ともいえるが最初級の魔法でもこれだけのことができるのだ。やっぱ魔法使いたいな。
この第一射によりかなりのモンスターは消し炭になったがそれでも倒せたのは全体の1~2割といったところでモンスターの進軍は止まらない。
「見たか!」
「はいはい凄い凄い、まだまだ来てるんだから前衛お願いね。【エネルギー・ボルト】」
土煙の中にモンスターの影が見えると冒険者たちは攻撃を再開する。
まずは遠距離からの魔法攻撃を放ちそれを超えてきたモンスターが近づいてくると接近戦主体の冒険者たちが突撃していくので俺もそれに倣った。
槍のひと振るいで4匹のモンスターが倒れるが敵は多い。
俺やミゥのように1撃で屠れる者は問題ないが攻撃力の弱いもの素早さに翻弄された者は四方からくる攻撃に耐えられず、倒れる者も出てきた。
「ムグッ」
「せい! ミゥ、サラたちの護衛に行ってくれ、もう直ぐ後衛に接敵する!」
「わかった、ダイチも気をつけて!」
喰いつかれた冒険者を助けると同時にミゥに指示を出す。
俺たちが戦う間もモンスターは進撃を続け魔法や弓で援護している冒険者たちに近づいている。
あまりぐずぐずしていては被害が広がる一方だ。
「チマチマやってらんないか、【穿空】!」
俺は味方の居ない敵の密集地帯を縦横無尽に暴れまわり少しでも多くの敵を屠るべく一心不乱に槍を振るう。
途中流れ矢や魔法が当たっていたが気にしてはいられない。
一刻も早くこいつらを倒さないと被害が大きくなる。
空が紅くなってきた頃にようやく戦闘は終わった。
冒険者は勿論、皇国兵もボロボロになっての勝利だ。
「……やっと終わった」
「終わったんなら魔石の回収してなさい! こっちはまだ手が離せないのよ!」
「わかった! あとで俺も頼む!」
怪我人の治療でサラとフォルテはまだ忙しいようだ。モンスターの体液で毛皮が斑模様になったミゥも怪我人を運んだりと手伝っているようだ。
戦闘中は足元でなんか光ってる程度にしか思わなかったが魔石だったのか。こいつが報酬ってわけね。
じゃあひと稼ぎしますかと俺は体力回復のポーションを一飲みしたあと、ほかの冒険者に倣い魔石を拾い始める。
うっ、激しく暴れた後にこの姿勢をとると腰にくるなぁ……




