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蜘蛛の仔

 依頼を受けた翌朝、魯の村までやって来た俺たちはゴブリン退治を完了させた駆け出し冒険者たちがこの村を4日前に発ったことを確認した。

 途中立ち寄った緋の村で彼らは6日前に発ちその後は訪れていないことも確認している。

「なんか気が変わって遠回りをした。なんてことは」

「ないでしょうね。駆け出しが依頼料も貰わずにぶらついていたら赤字もいいとこよ」

 俺自身思ってもいない楽観論をサラが即座に否定する。

 紅明からこの魯の村まで来るには途中緋の村で一泊するルートが一番近く安全でありこれを変えるメリットが彼らにあったとは思えない。

「やはり途中にあった森で何かあったと考えるべきでしょう」

 フォルテが言う通り魯の村と緋の村の道の側にあった森に入ったのだろうという結論になった。


 俺たちも子供の使いではないので「ゴブリンは退治されていましたよ」と報告して終わるわけにはいかない。

 最低限可能性があるところは探す必要がある。

「みんな、こっち!」

 森に入って少しするとミゥが刃物に切り裂かれたモンスターの死骸を見つけた。

 彼女によるとまだそれほど時間は経っていないとのこと。

 ならばこの近くにいるはずと皆で探すため森に入った。ただし何かあった場合のため全員で固まって行動する。


「止まって、静かに。声を上げずに上を見る」

 ミウが指したほうを見ると巨大な蜘蛛が巣を張り大きな繭が数個吊るされている。

 俺は悲鳴を上げそうになったサラの口を塞ぎよく観察する。

「蜘蛛の数は3、地上には死骸と同種が数匹いるだけ。あってるか?」

「ミゥも同じ、あってると思う」

 こういう時に森に慣れているミゥの気配察知能力は頼りになる。

「よし。じゃあサラ、フォルテあの蜘蛛を3匹同時に落とせるか?」

「距離が遠いわ。あたしの魔法じゃ当たるかどうか半々ってとこね」

「申し訳ありません、私の弓では一匹ずつなら確実にできますが連射は難しいです」

 過剰申告はなし。十分落ち着いているな。

「ふむ。まずサラは3匹同時に打ち落しにいってくれ。そのあとフォルテと一緒に打ち漏らしがあればそいつを、なければ援護を頼む」

「わかったわ」

「了解致しました」

「落ちてきた蜘蛛は俺とミゥで止めを刺す」

「わかったぞ、蜘蛛が落ちたら飛び込む。だな」

 簡単な作戦を伝えて行動に移す。


「【エネルギー・ボルト】!」

 サラが3本の熱線を放ち2匹には当たり地面に落ちたが残る1匹に避けられてしまう。

 俺とミゥは作戦通り落ちた2匹に攻撃を仕掛ける。

「【着火】!」

 巨大蜘蛛の頭をミゥが潰し、俺が胴を焼く。

 同じ手順ですべての蜘蛛を倒した後、念のため死骸を魔法で燃やして貰った。


 蜘蛛を倒した後、蜘蛛の巣を払い繭を地面に下ろす。

 人間が入っているのは6つ、行方不明の冒険者の人数と一致する。

 うち4つがミイラ化していたが残る2つはまだ息がある。

 早く出してやろうと手斧に手を掛けるとフォルテがそれを静止する。

「お待ちください、こちらの娘は仔を植えつけられています!」

「なっ」

「どうすんのよ!」

 サラの叫びにフォルテは一拍置いて答えた。

「焼くしかありません。もういつ胎を食い破って出てきてもおかしくありません」

「助ける方法は?」

「浄化系の魔法があればあるいは、ですがここまで育っていてはもう……」

 無理ということか。街まで運ぶ時間もなくここで治療できない以上、彼女を助ける手段はない。


「……分かった。俺がやろう」

「ではせめて……。【強制睡眠】」

 彼女にフォルテが眠りの魔法を掛けた後、俺は荷物から油を出し繭にかける。

「離れていろ」

 仲間たちが離れたのを確認した後、槍を彼女の心臓に突き立てる。

「【着火】」

 槍から火が噴き出し繭を炎が包み込む。

 炎が上がると繭から蜘蛛の子が這い出ようとしたが炎の勢いに負けすべて灰と化した。

 俺たちは生き残った男を繭から救出した後に死者の遺品となりそうな物以外は同様に燃やし、帰りにこの男が暴れぬよう眠らせたまま俺たちは紅明へと戻った。


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