冒険者の朝
「あー良く寝た」
日暮れ直前に翠稜皇国の帝都紅明に着いた俺たちは巡回中の衛兵に紹介してもらった宿で一泊した、のだが。
「あれっ、みんなは?」
部屋を見渡しても誰もいない。俺の荷物があるからまた泥棒などではないだろう。
というより何度もあんなことが起こってはたまった物ではない。
とりあえず仕度をして部屋を出る。
夕べは眠かったので気が付かなかったがこの宿は1階が酒場兼食堂になっていてみんなはそこで朝食をとっていた。
「ダイチ遅いぞ」
「みんな先に食べちゃったわよ」
朝の挨拶をしての返答がこれである。
「いや、それなら起こしてくれよ」
「すみません、お疲れの御様子だったので寝かせておこうとサラさまが……」
「あーもういいからさっさと何か注文しなさいよ」
俺の文句にフォローしたフォルテの言葉を遮ってサラが朝食を急かしてくる。
一応気を使って休ませてくれたみたいなので軽く礼をいい席につく。
「で、今日はどうするんだ?」
朝食を食べながらみんな、というかサラに一応聞いてみる。
「アンタが食べ終わったら勿論仕事探すわよ。ここ冒険者の店だからそのまま依頼を受けられるしね」
眠かったのでよく覚えていないがそういうことらしい。
朝食を食べ終えたので早速依頼を探すことにする。
店主であるガタイのいい親父さんに何か仕事がないか聞いてみることにした。
「お前らに紹介できるのはこんなとこだな」
新参の俺たちに紹介できる仕事ではあまりパッとしたものはなく、どうしようかと相談していると親父さんが声を掛けてきた。
「お前ら、急ぎで金が要るのか?」
「もちろん!」「いえ別に」
サラと俺の声が被る。
「急ぐわよ!」「いえ特には」
再び被る。
生活費は俺が全員分支払っておりその所持金はかなり余裕があるどころか裕福なためよほど大きな買い物でもしない限り即座に困りはしない。
親父さんがそう言ったのは俺たちとフォルテの装備に隔たりがあるため急いで装備を整えたいと思ってると判断したのだろう。
実のところ急いで金が欲しいのは俺に金を返したいサラ1人である。
「……まあいい。急ぎでないのならゴブリン退治を引き受けてくれないか?」
ゴブリンはコボルトより気持ち強い程度でこれを討伐するのが冒険者としての第一歩といわれるぐらいの定番モンスターだ。
いくら金に困ってないとはいえ報酬が安すぎるし俺らが行くにはオーバーキルもいいとこだ。
「実は一度ウチから冒険者を派遣したんだが一週間経っても帰ってこない。これが終わればもう少し良い仕事をまわすし既に達成してても依頼料も全額出すから見てきてくれないか?」
単純に金の話をするなら別の店に行ってもいいし、適当に街の外でモンスターを狩ってもいい。儲からないようなら他所の国へ行ったってかまわないのだ。
いや行くけどね。
知らない人とはいえなんか気になるしゴブリン退治が失敗したなら困っている人もいるだろう。
仲間の顔を見るとサラが少々憮然としているが異論はないようだ。
よし!翠稜皇国での初仕事だ!
早速俺たちは準備に取り掛かった。




