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包囲網

 エルフ、ファンタジー小説やゲームが好きな者なら最も有名な亜人ではないだろうか。

 森の妖精といわれることもあり容姿は端麗、金髪に特徴的な尖り耳、菜食主義のため身体の線が細いが身のこなしも軽く弓を得意とするものが多い。

 あとはメディアにもよるが森の奥で隠遁し、他種族の生活圏にはあまり関わらないといったところだろうか。

 この世界のエルフもその例に漏れないがこの世界ではほかに集団で生活し魔法に長け、聴覚が人間の数十倍あるという特徴がある。

 俺は追っていた盗賊がただの人間だと思っていた。

 だからこそ俺の視界ギリギリ、連中の話など一切聞こえない距離で監視していたのだ。

 だが聴覚が人間の数十倍持つエルフだと言うなら話は別だ。

 俺の動きはとっくに知っているはずだ、それなのに動かないということは……


「逃げ、いやシールドを張れ! 全体に! 早く!」

「えっ、あ、シ、【シールド】!?」

 俺が叫び、サラが慌てて魔法で防護壁を張った数瞬後、魔法の壁に幾つもの衝撃が走る。

 矢だ。

 こちらが気付いたことに反応してか先程と同じくエルフの矢が飛んできたのだ、ただし今度は十数本同時に。

「ダイチ!」

「なによ、これ!」

「判ってる。悪い、囲まれた」


 見えないが前方だけでなくサラたちが来た方向を含め何者かの気配がある。包囲は完了してしまったようだ。

「判るだけで20以上、50はいない。……と思いたいな」

「そんな、どうするのよ!」

 先程の集中攻撃がすべて【シールド】に弾かれそれ以降射ってこないことからこれ以上強い攻撃手段はないのだろう。

 おそらくはサラでも1人で3人くらいは相手にできるはずだ。

 だが敵は多い、全員で強行突破を図れば俺1人なら逃げられるかもしれないがサラは弓より早く走れないし防ぐことも難しいし、ミゥとて手足に1本でも矢を受ければ動きが鈍りたちまちやられてしまうだろう。

 闘う場合も同様だ。先の理由より2人に戦闘させるのは難しいし俺だって全身鎧を着ているわけじゃないから矢を受け続ければいずれ倒れてしまうだろう。

 もちろんこのまま【シールド】に篭っていてはいずれサラの魔力が尽きた時に終わってしまう。

 つまり俺だけなら逃げられる。運がよければミゥも逃げられるわけだがサラを置いていく事になる。

「はあ……」

 今更2人を見捨てることが出来ない以上、逃げるわけにはいかない。

「サラ、【シールド】はどの位持つ?」

「これ以外しないなら夕暮れまで、移動しながらじゃ街道までもたないわ」

 俺に置いていかれるとでも思ったのかこちらの顔色を伺うように答える。

 それを聞き俺はサラが回収してくれた手斧と荷物からありったけの武器を用意しながら努めて落ち着いた声で2人に声を掛ける。


「とりあえずなんとかやってみる。お前は俺が合図したら一瞬魔法を解除して再度展開しろ。ミゥもこのままな」

「ダイチ……」

 サラは安心したようだがもう1人は納得がいかないようだ。

「ミゥも闘う!」

「だめだ」

「でも!「ミゥにやってもらいたいことがある」」

 ミゥの抗議を遮り話を続ける。

「ミゥはここで俺が向かっていった奴以外、隠れている奴や後ろから仕掛けてくる奴の動きを教えてくれ。これはミゥにしか頼めない」

「うぅ、分かった。でもダイチ、無理なら逃げろ、ミゥたちは気にするな」

「安心しろ上手く行くさ、奥の手がある」

 そう言ってミゥの頭を撫でてやる。

 そう、俺には奥の手がある。


「行くぞ!」

 俺の掛け声に合わせてサラが魔法の壁を解除する。

 その瞬間俺は飛び出し、敵のいるほうへ駆けながら別の敵に向かって手斧を投げる。

 飛んでくる矢を弾きながら目標へ近づいていき切り伏せる。

 途中ほかの敵の姿が見えれば少しでも数が減るよう武器を投擲する。

 実際、連中ひとりひとりは大したことがなく槍の一振り、ナイフ1本で倒れていく。

 だが敵の数は多く15人ほど屠ったあたりで投げる武器は尽きた。

 ミゥの指示で不意打ちは避けているがそれでも多勢に無勢、避けきれない攻撃も多くコートは魔法でボロボロになり防具としての用は足さくなったため鎧のないむき出しになった俺の手足には矢が何本も刺さっていた。

 当然動きも鈍り俺は物陰に隠れるのが精一杯。

 そんな俺にトドメを刺そうと何人か近づいてくる。


(これでジ・エンド、ってところだよなあ普通は)

 このままいけばあと数秒で俺は殺されてしまうだろう。

 勿論それを受け入れてしまうわけにはいかないのでそろそろ切り札を使わせてもらうとしよう。


「レベルアップ、脚力に全振り」

 そう呟いた瞬間、目の前に半透明の少女が現われ、いつも通りの口上を述べる。

「命在る者よ生の歴史を糧にその器を高めよ!レベルアップ!!」

 こちらのことを見ていたのか余計なおしゃべりもなしだ。いつもこうなら楽なんだけどな。

 彼女が叫んだ瞬間、俺に力が漲り傷が治っていき身体に刺さった矢も弾け飛んでいく。

「も~ダイくん、随分久しぶりだけど元気だった~? レベル上げサボっちゃだめだよ~」

 いや、チェルはいつもどうりか。

「何度か呼ぶから、話は後で!」

 チェルの文句は無視して俺は近づいてきた敵に向かう。

 向こうも俺がいきなり回復して突っ込んでくるとは思わなかったんだろう、唖然と足を止めていた。

 これをチャンスと俺は続けて3人を斬り次の敵へと向かう。

 あとは限界まで敵を倒し危険になったらレベルアップを行い回復を繰り返す、これが俺の奥の手だ。

 以前から大怪我をするたびにレベルアップをしていたのだが今回のように緊急時に使えるように経験値を貯めていたのだ。

 特にサラと行動するようになってからは一度もチェルを呼び出していないので相当回レベルアップできるはずだ。


 敵を50人ほど倒したあたりで残った連中は一部が逃げ出し始めた。

「いまさら逃がすか!」

 ここで逃がして更に増援がいたら面倒だ。

 俺は逃げたほうを追いかけようとするのだが残った敵も執拗に攻撃を仕掛けるためなかなか追いつかない。

 焦る俺の後ろから援護の声が追いかけてくる。

「【エネルギー・ボルト】!」

「お前ら!」

「もうこいつらだけ、ミゥたちに任せろ」

「よし、頼むぞ!」

 彼女達の判断を信じ、残った敵は2人に任せ俺は敵を追う。


「何だ!?」

 先を進むと急激に辺りの霧が濃くなっていくが一箇所だけ霧が晴れている場所がある。

 連中はその中に飛び込んで行くが最後の1人が入ると急にその空間も霧でぼやけてきた。

「まずい、【穿空】!」

 何らかの結界と判断した俺は慌てて敵を逃がすまいと霧のない空間へと突撃する。


主人公無双。とはいえエルフ達のレベルもそれなりに高いため余裕綽々とはいきませんでした。

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