盗賊退治
毎度おなじみ南西の森、今日は性質の悪い盗賊がいるらしく俺たちはその討伐にやってきた。
ここの街道を通る商人の一団が連続で襲われており犠牲者も出ている。
一度はミゥが疑われたが手口が異なることと被害者の証言であっさり容疑は晴れた。
連中は最初に弓で馬や御者を射抜き、慌てて出てきた商人やその護衛が出てきたところを更に弓で追い討ちを掛けるそうだ。
容疑が晴れたとはいえ疑われたままでは気分が悪いので自らの手で解決するべくこの依頼を受けることにした。
「しかし、ここ呪われてんじゃないのか?」
ここへ来るたび大捕り物になっている気がする。
「ん?悪い空気感じない、ミゥはここ気持ちがいいぞ」
「あーそうじゃなくて……まあいいや、そろそろ問題の場所に差し掛かるから気を引き締めて下さい」
「よ、宜しくお願いします」
俺は今回の協力者である商人のウエインさんに声を掛ける。
サラとミゥはいつでも飛び出せる準備が出来ている。
俺たちは今回、犯人を捕まえるため南西の森を通って商談に出かけるウエインさんの馬車に同乗させてもらうことにした。
馬車には俺たちとウエインさんのほかに本来の護衛である戦士が2人乗っているのでかなり窮屈だ。
「本当に俺らはそのまま行っていいんだな?」
「勿論、あたしたちは盗賊退治に来たの。逃げられるようならさっさと行ってくれたほうが面倒がなくていいわ。それよりいつ矢が打ち込まれるか判らないから姿勢を低くしときなさいよ」
今回の作戦、というほどたいしたものではないが俺が御者をして賊の襲撃を待つ。
最悪俺は弓で射られても一撃で死ぬことはまずないし、傍らにはミゥも控えて矢の警戒をしている。
襲撃があればそのまま俺たちは馬車を降り盗賊退治、商人たちは隙を見て脱出という手はずになっている。
「ッ、ミゥ!」
突然左右から1本づつ矢が飛んでくる。
1本は俺の顔面にもう1本は馬の頭を狙っている。
俺は敵が来たことを知らせると手斧で矢を弾き、荷物と武器を掴んで馬車を飛び降りる。
もう一本の矢もミゥが落としたようだ。
馬車は何事もなく走っていくのを確認して俺は襲撃者目掛けて手斧を投げる。
手応えアリ!
短い悲鳴を上げ襲撃者は倒れ落ちる。
人を殺すのには未だ慣れないが自分の命と仲間の命、それらを脅かす敵の命ではやはり重さが違うと割り切っているつもりだ。
だから同様に仲間が人を殺すことにもさほど嫌悪は感じない、ミゥも襲撃者を仕留めたようだ。
「【スラッシュ】! まだ居るわよ気を抜かないで!」
「悪い!」
別方向から俺を狙った矢をサラが打ち落とす。ぼうっとしていたようだ、他の襲撃者の気配に気付かなかった。
「ダイチ!」
「ミゥとサラは今のを! こっちは俺が!」
落ち着くと襲撃者の気配というか草木の動く音が遠ざかっていくのが聞こえる。
矢を射たほうは2人に任せて、俺はもう一方を追う。
盗賊を追って随分と森の奥まで進んでしまったな。
この南西の森は地図を見る限り王都の数倍の広さがあり、奥には強力なモンスターが生息しているためあまり人の手は入っていない。
盗賊が潜むには丁度いいのかもしれない。
目的地なのか唯の休憩なのか盗賊の動きが止まる。
相手は二人で、弓を射てきた奴にもう一人が合流してきた。
俺はほかに仲間がいるかの確認するためこちらに気付かれない距離から様子を伺っている。
(距離を空け過ぎたか、どんなやつか判らないな)
しばらく待っても動きがないため少し近づこうとするした所でミゥに乗ったサラが追いついてきたので小声で話しかける。
「お疲れさん、そっちはどうだった?」
「あの場に居たのは1人だけ。ミゥルが仕留めたわよ」
残るは向こうにいる2人だけか、合流する様子もないし楽勝だな。
そう考えていのだたがサラが続ける言葉でそんな楽な話ではないことを思い知る。
「それより凄いわよ、あいつら全員エルフだったの」
この世界にダイチが来て約1年、敵対するものなら人を討つのに彼はもう躊躊躇はしません。