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大切  作者: 佐藤 千明
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〜忘れたくない君〜

─私の事無理して理解しなくていいんだよ─


頭痛いなぁ。なんかこの言葉を思い出すと目頭の所がキーンとしてくる。

「どうしたの?怖い顔して。」

嫁が話しかける。

「ん?ちょっとアッキの考えててな。」

「アッキ?あぁ!あなたが最近ダイビングで担当したコね。不思議なコんでしょ?」

「あぁかなり不思議だよ。」

不思議っというよりもあいつはバカだ。本当にバカだし、バカみたいに明るいし、バカみたいに素直だし…。でもあいつはオレには到底理解出来ない暗闇で生きている。でも理解はしたい。あいつを救ってやりたい。俺の手で…。

「ねぇ今晩なにしようか?」

「ん〜じゃカレー。」

「カレー?」

嫁は嫌そうな顔をした。

「カレーいっぱい作りすぎちゃうからなぁ〜。」

「いいじゃん。美味いし!」

嫁は考えてひらめいたみたいで笑顔で

「アッキも呼ぼうよ。私逢いたいし、それならカレー作るよ」

「アッキに逢いたいのか?」

嫁は笑顔で頷いた。

まぁいいかぁもしかしたらアッキを少しでも理解出来るかもしれないし…。

「分かったアッキを呼ぼうか。」


アッキをメシに誘ったら嬉しそうな声で

「行く!」っと即答した。アッキらしいなぁ。

「ねぇもうそろそろ着くんじゃない?アッキ。」

「そうだな。じゃ迎えに行ってくるよ。アッキバカだから道に迷うし。」

「あまりバカって言わないの。いってらっしゃい」

本当に迷ってたら受けるけどな。ちょっと期待してしまう。

「あっお兄ちゃん!」

アッキが近づいてきた。

「お兄ちゃん迎えに来てくれたの?」

「あぁお前バカだから迷うと思ってな」

「迷うわけないでしょ!駅から一本道なんだから」

アッキは怒っていたけど楽しそうにしていた。

「お兄ちゃん今日はなんで呼んでくれたの?」

「嫁がお前に逢いたがっていたからな」

「ふーん。お兄ちゃんのお嫁さんに私も逢いたい!美人さんなんでしよー」

「多分、美人かな」

「多分ってなんだよ!」

「美人だよ」

「ふーん」

実年齢よりも幼く見える笑顔でオレを見つめる。この笑顔の裏に闇が有るとは思えない…。


─父親の顔は覚えてない。私には母親しかいないのに、いつも殴られて、蹴られて…。「あんたなんてどっか行ってしまえ!」これが母親の口癖だった。もう家に居場所が無かった。だから学校に居場所求めたのに同級生にはずっと無視されつづけて、そんな中でも先生は私を助けてくれなくて…。私はずっとこのまま独りでいるんだって思ってた。─

「お兄ちゃん!私この前講習じゃない海に行ったでしょ?その時すごいキレイな青色の魚見なんだ!」

「空色スズメダイだな」

「それ!」

楽しそうなアッキの顔ずっと見ていたいよ。家に戻ると嫁が晩御飯の用意をしていた。

「お帰りなさいもうすぐで食べれるからね。」

「はーい。今日は呼んでくれてありがとうございます!」

「いいのよアッキちゃんに逢いたかったし。」

アッキは嫁の顔をずっと見ていた。

「どうした?」

「ん?お兄ちゃんにはもったいないくらい美人さんだぁって思って」

「お前一言多いわ!」

「本当の事だし!もったいない」

この会話を聞いて妻が笑う。

「本当に兄弟みたいね。なんかほのぼのするわ」

兄弟…。本当に兄弟だったらもっとこいつを早くたすけてやれたのに…。あいつよりも

─どこにも居場所が無いからずっと独りでいた。でもそんな時に、声を掛けてくれたのがヒデ兄だったんだ。ヒデ兄は居場所の無い私に居場所を作ってくれた。そしてヒデ兄もずっと一緒にいてくれた。そしてヒデ兄にタバコもお酒も教わった。すごい楽しかった。そしていつの間にかヒデ兄のこと好きになってた。そしてヒデ兄もそれに答えてくれた。凄い幸せだった。そんな中で私ヒデ兄の子供を妊娠した。もうその時はうれしかった。普通の家族が出来るんだって…。でもヒデ兄は嬉しそうな顔をしてなかった。ヒデ兄は

「下ろしてくれ…」って呟いた。私頭が真っ白になっちゃった。

「俺は中学生を妊娠させたっという世間の目にはたいきれない…。」だって。もう誰に信じられなくなっちゃった。─

誰も信じられなくなっちゃったかぁ。オレのことも信じてないんかな?

「あぁお腹いっぱい!もう食べれないよ」

「お前食い過ぎだろ?もす少し遠慮しろよ。」

「やだ。美味しいんだからいっぱい食べたいでしょ?」

「ありがとう。」

「美味しかったです!あのトイレ借りていいですか?」

「いいよ。そこ出て右に曲がって突き当たりね」

「はーい。」

数秒の沈黙のあと妻が呟いた。

「あの子楽しそうにしてるけど、どこか寂しそう…。」

「寂しそう?」

「うん。すごい明るくてニコニコしてるけどそれが誰かに寂しいよって言ってるみたいに感じる」

嫁の感は誰よりも優れてる。アッキの心も分かるのかもしれないな。

「オレもその才能欲しいよ…。」

「ん?なにか言った?」

「いや別に…」

つい口に出てしまった。でも本当に妻の才能が少しでもあればアッキの苦しみ分かるのに。

「お兄ちゃん!私もうそろそろ帰らなきゃ!」

時計は21時を指していた。

「まだ早いだろう?」

「明日バイト早いし、それに長くいたら夫婦の邪魔しちゃうし」

「お前が気を使うなんて珍しい」

「珍しくないよ!当たり前、当たり前」

「そうか…。」

「あなた駅まで送って行ったら!ついでにビデオ返してきて」

「ああ分かった」オレの後ろをまるでひよこの後ろように付いてくるアッキはまるで本当の妹みたいだ。

「今日はありがとー!すごく楽しかった。お兄ちゃんのお嫁さんにも逢えたしね。今日は文句ない1日だった」

「そうかお前の笑顔を見るとオレも笑顔になるよ」

アッキはニッと笑った。

笑顔の中に寂しさがあるか…。あるんだったらオレにもその寂しさ分けてくれよ…。

「お、お兄ちゃん?苦しいよ…。」

気が付いたらアッキを抱きしめていた。

アッキを抱きしめた日からオレの心臓が早く動く。まるで初めて女の子を抱き締めた中学生みたいな感覚だ。オレはもう三十路になるっていうのに。それにオレには嫁がいる。アッキには恋愛感情ってものは無い…。アッキは妹みたいな感じなだけでそれは特別では無いよ。

「セブンスター?あなたタバコ変えたの?」

嫁が不思議そうな顔をする。

「あぁアッキが吸ってて貰ったらこれが病み付きになってな」

「ふーん…」

嫁は改まった顔で話し始めた。

「あなた最近アッキの事ばかりね?いつも聞けばアッキの名前出して…。そんなにアッキのこと心配?」

「なんだよ?急に?」

「私はただあなたの心がいつもアッキに向いてるから言ってるだけ…」

嫁は今まで見たことが無い位な真剣な顔をしていた。

「…アッキにはオレしか頼る奴居ないんだよ。オレはアッキの為なら何でもするよ。」

嫁の目には涙が溢れていた。そんな嫁にオレは何も言えないくらいアッキのに対する気持ちが溢れ出す。オレは嫁を置いて飛び出した。そのままアッキのもとへと向かった。

─こんな人生本当にあるんかよ?って思うでしょ?私もなんか物語を話してるみたい。他人ごとみたいなんだぁ。でも今でも昔の事で苦しめられる。凄い苦しいよ…。こんな私の事誰かに分かってもらいたいよ。でも無理して分かってもらわなくていいよ。だってみんな他人だもん。…─

「どうしたの?急に呼び出して!」あっきと逢った瞬間アッキを抱き締めた

「アッキ…オレ、お前の事もっと分かりたいよ…オレお前と一緒にいたいよ」

「…ありがとう。でもお兄ちゃんが一緒にいなきゃいけないのは私じゃないよ」

アッキはオレの胸から離れた…。

「お兄ちゃんはいつも私を気にしてくれて、いつも心配してくれる。そんなお兄ちゃんが私大好きだよ。でも、私はお兄ちゃんに心配されるとすごく不安になっちゃうよ…このままだとお兄ちゃんを信用してしまう…。でも信用した瞬間にお兄ちゃんがいなくなったらどうしようって…」

「オレはアッキの前から絶対消えないよ。アッキの為ならなんでもする…」

アッキは冷たい目をして話し始めた

「じゃなんで私に逢いに来たの?私は悲しい思いをしてる人を見たくないんだよ!」

「悲しい思いをしてる人は…」

「いるでしょ?奥さんは?お兄ちゃんがここで私と逢う事すごい悲しんでるよ」

「なにお前いい子ちゃんしてるんだよ…。」

「…いい子ちゃん?」

いきなりアッキは冷たい口調になった。

「いきなりいい子ちゃんなんて言うなよ…今までだってずっとお前の前でもいい子ちゃんしてだんだからさぁ〜」

今までのアッキの口調とは全く違う

「純粋で素直で子供みたいな笑顔をするってけっこうだるいんだよ…」

「アッキ…。」

「悪いけど私用事あるからもう行くよ」

アッキはオレの前から消えた。

あれから幾度の季節が流れただろう。オレは嫁との間に子供が出来た。産まれたのが秋だから亜紀奈っと付けた。だけどこれは建て前にすきなかった。本当は佐藤亜紀奈の名前をそのまま付けた。そうアッキの本名を…。

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